情報
白芷 VA
中国語: CV:Chen TingTing
日本語: CV:瀬戸麻沙美
韓国語: CV:Sung Ye Won
英語: CV:Samantha Dakin
白芷 のフォルテ調査報告
共鳴力
優曇回生
共鳴評価報告
測定材料:【周波数スペクトル報告RA2190-G】
共鳴歴4年。異能力に目覚めた1年前は強烈な反響エナジーを観測し、当該エナジーを確保した。共鳴当時、仲間を復活させたいという強い意思を抱いた事により、反響エナジーが反響生物へと変化した。その後、当該反響生物は被験者に随伴するようになる。
音痕は右太股前方にある。共鳴後、身体における物理的な変化はないが、共鳴能力の発動と連動し、当該反響生物は必ず姿を現すようになった。花にも似た不定形の当該反響生物は言語能力を持たないが、「精神力による意思疎通が可能」と被験者は主張する。
低温環境を作り出すと同時に、反響生物との連携で傷を治し、生命力を回復させる異能力を持つ。
類似する共鳴周波数スペクトルの記録はないが、上述の反響エナジーと同じ波形を示した。
そして「優曇」という反響生物とも強い共振反応を観測。過去に一切の前例がない事象であるため、共鳴源の特定には至っていない。
ラベル曲線に収束がなく、初段の穏やかな上昇と中段の急上昇を示したため、潜伏期間のある突然変異型共鳴者と認定する。
オーバークロック診断報告
波形は楕円形、時間領域表示は安定。異常波形なし。
診断結果:オーバークロック域が広く安定性は高い、オーバークロックリスクなし。
オーバークロック歴なし。
メンタルケアの必要なし。被験者の異能力と反響生物の関係を鑑みて、反響生物の状態を定期検査する必要あり。
白芷 の大切なアイテム&好物
素朴な指輪
白芷が華胥研究院に入ってからずっと大事に保管している2つの指輪。形は完全に一致しており、1つは僅かに古びている。本人によれば、これは昔所属していた研究チームで開発した特殊デバイスらしい。反響テクノロジーの結晶で優曇の召喚に役立ち、繋がりを深めることができるとか。
未だに何故か素朴な指輪が白芷に好かれる理由を知られてはいないし、白芷本人もそれを解釈しようとしていなかったが、白芷の中では、これは氷原で亡くなった先輩と同僚たちの事を結び付けるあの日々の証明である。彼らの教えと未完の願いを引き継ぎ、反響学の研究を進める。手向けの術は他にない。
シミュレーションモデル
白芷は何度も優曇を観察した。行動パターンの分析、データの記録を含めて何度も。それでも、優曇に関する謎が多い。優曇は何に構成されたのか、どう生まれたか、他に類似する反響生物はあるのか……研究院の同僚にインスパイアされ、白芷は模型を作って優曇の構造を再現しようとしていた。
完成された模型は合計205個のパーツがあり、白芷は模型の作りを丸ごと暗記しており、目を閉じてもパーツの順番問わずに再度作成できるという。この模型は本物の優曇とは比べ物にならないが、少なくとも反響生物の構造を解明するアプローチであり、情報である周波数を実物で再現する試みでもある。
栄誉勲章
瑝瓏が氷原探索に参加した観測隊隊員全員に授与した勲章。反響学における卓越した貢献への感謝と、困難を恐れない科学への探求心に対する褒賞という二重の意味が込められている。唯一の生存者である白芷が代表者としてこの勲章を受け取り、大切に保管している。
彼女にとって、これは偲びであり、誉れでもある。
科学における未踏の地へ赴くこと、それが科学者の使命である。科学者の問いに、いつか答えは返ってくる、それこそが「反響」学だ。
白芷 のストーリー
簡単が一番
「白芷か。」華胥の研究員たちは口を揃った。「彼女は冷たいよね。」
同じ研究室に配属されたけど、彼女から話を持ち掛けた事は珍しい。それどころか、皆が解析の失敗に慰め合う時も、楽しい見聞を交流する時も、彼女は全く混じってこない。まるで運転中のコンピューター、ただ平然とデータを次々と処理していく。
彼女が作った静寂の輪は、外の喧騒を隔絶したんだ。
そして研究で見せた理性もまた、彼女らしい。
月曜と水曜は人工音場の観測、金曜は反響周波帯の解析。残りの時間は野外調査、反響生物観測と案件管理に回す。いつ、どこで、何をするかについて、白芷には独自のスケジュールを持っている。それでいて、決してスケジュールに縛られない。大事なのは、進む事だ。
締め切りを過ぎた仕事でも、ちゃんとやっていけばいい。今は手こずっている仕事でも、充分な情報を入手すれば大丈夫。
この余裕のおかげで、ますます彼女に話を掛けづらくなった。その何食わぬ顔も、無感情な口調も、いつ怒ってもおかしくないという圧を周りに掛けている。
「先週の報告。遅くなったわね。」
「はいぃ……それは、最初の音骸サンプルが汚染され……」
「うぐっ!ごめんなさ、いやも、申し訳ございませんっ!で、できる限り……」
段々近づいた白芷に、研究員は緊張で裾を捻ってやった。無意識に視線を避け垂れた頭の、視線を遮ったのは処理されたサンプル。
「壊れかけ岩塊のもので代用していいよ。」
「それは、あなたの……」
「静置プロセスが始まる前に補充すればいい。意外の可能性もあり、時間を多めに用意した。」
「こういった状況は事前に教えてください。エアコン、少し上げる方がいい?あなた……震えがひどいね。」
空色の瞳に浮かぶのは、純粋な困惑。
一瞬、返事に困る研究員はこの瞬間、同僚たちの補足を思い出した。「でも、実は見た目だけ。」
同じ研究室に配属されたけど、彼女から話を持ち掛けた事は珍しい。それどころか、皆が解析の失敗に慰め合う時も、楽しい見聞を交流する時も、彼女は全く混じってこない。まるで運転中のコンピューター、ただ平然とデータを次々と処理していく。
彼女が作った静寂の輪は、外の喧騒を隔絶したんだ。
そして研究で見せた理性もまた、彼女らしい。
月曜と水曜は人工音場の観測、金曜は反響周波帯の解析。残りの時間は野外調査、反響生物観測と案件管理に回す。いつ、どこで、何をするかについて、白芷には独自のスケジュールを持っている。それでいて、決してスケジュールに縛られない。大事なのは、進む事だ。
締め切りを過ぎた仕事でも、ちゃんとやっていけばいい。今は手こずっている仕事でも、充分な情報を入手すれば大丈夫。
この余裕のおかげで、ますます彼女に話を掛けづらくなった。その何食わぬ顔も、無感情な口調も、いつ怒ってもおかしくないという圧を周りに掛けている。
「先週の報告。遅くなったわね。」
「はいぃ……それは、最初の音骸サンプルが汚染され……」
「うぐっ!ごめんなさ、いやも、申し訳ございませんっ!で、できる限り……」
段々近づいた白芷に、研究員は緊張で裾を捻ってやった。無意識に視線を避け垂れた頭の、視線を遮ったのは処理されたサンプル。
「壊れかけ岩塊のもので代用していいよ。」
「それは、あなたの……」
「静置プロセスが始まる前に補充すればいい。意外の可能性もあり、時間を多めに用意した。」
「こういった状況は事前に教えてください。エアコン、少し上げる方がいい?あなた……震えがひどいね。」
空色の瞳に浮かぶのは、純粋な困惑。
一瞬、返事に困る研究員はこの瞬間、同僚たちの補足を思い出した。「でも、実は見た目だけ。」
球と装置
転がる球は、曲がりに落ちた。すると梃子の一端が上がって、運動が続く。
11歳の白芷はもう一度終点についた球を見て、結論を浮かべる。どんな複雑に組み込まれた構造でも、乗せられた球は既定の軌跡を沿って例外なく終点に向っていく。
前の本で読んだ仮説と同じだ、と彼女は思う。どんな時代でも、人類の築いた文明は制度の限界を超える事なく、ゆくゆくは衰退を辿る。
決められた結果に、どんな作業も過程の再現と証明に過ぎない。そこに、意味などあるのか?
幼い白芷は球の問題に悩んだ。しかし、その両親はまた、白芷の現状に悩んでいた。
知識に熱心なのはいいことだけど、あくまでは生活に支障を来さない程度の話。今は白芷はただ書斎に引き籠って、両親にも中々読めない難しい本を読んではサンプルで情報の周波帯の再現を試みて、生きる「友達」もないまま毎日を過ごしてた。
それはある午後の話。誘いを受け華胥の科学研究行動拠点に足を運んだ白芷は、複雑で膨大な装置を目にした——
様々な変数を象徴したパーツは組められ、遠回りでも正確に作動し、有機的組織を真似て動いていた。
しかし、装置の欠陥は何より明白。不確定要素が多く、結果を導き出す段取りも全然足りない。現状、球を乗せるようなものではない。
既有の部分でどう作動しているのか、と白芷は考え始めた。
「気に入った?これから皆で完成するつもりよ」
リーダー風の若い女性が近づき、彼女にとびっきりの笑顔を見せた。
「ここは……こうよ。余剰エネルギーでは、情報の伝導に不十分のはず」
「いきなり問題を見つけたのね。院長の言う通り、あなた、才能あるよ!どう、一緒に働いてみない?」
「転んだ球なら、いずれ終着点につく。しかし、この設計の終着点は見えない」
「ふむ……今は知らなくても、いずれ辿り着ける場所?終着点はもちろんある。しかし、設計者として、どんな方法で、どんな方向に向かわせるのかは、皆で一緒に話し合おう!」
話が終わるや否や、ドアが急に開く。後ろに隠れていた数人が倒れ込んだ姿で初対面を果たした。だが、その視線は期待に満ちていた。
コロコロ。その瞬間、白芷は何故か球を装置に放り込んだ音を聞いた。
11歳の白芷はもう一度終点についた球を見て、結論を浮かべる。どんな複雑に組み込まれた構造でも、乗せられた球は既定の軌跡を沿って例外なく終点に向っていく。
前の本で読んだ仮説と同じだ、と彼女は思う。どんな時代でも、人類の築いた文明は制度の限界を超える事なく、ゆくゆくは衰退を辿る。
決められた結果に、どんな作業も過程の再現と証明に過ぎない。そこに、意味などあるのか?
幼い白芷は球の問題に悩んだ。しかし、その両親はまた、白芷の現状に悩んでいた。
知識に熱心なのはいいことだけど、あくまでは生活に支障を来さない程度の話。今は白芷はただ書斎に引き籠って、両親にも中々読めない難しい本を読んではサンプルで情報の周波帯の再現を試みて、生きる「友達」もないまま毎日を過ごしてた。
それはある午後の話。誘いを受け華胥の科学研究行動拠点に足を運んだ白芷は、複雑で膨大な装置を目にした——
様々な変数を象徴したパーツは組められ、遠回りでも正確に作動し、有機的組織を真似て動いていた。
しかし、装置の欠陥は何より明白。不確定要素が多く、結果を導き出す段取りも全然足りない。現状、球を乗せるようなものではない。
既有の部分でどう作動しているのか、と白芷は考え始めた。
「気に入った?これから皆で完成するつもりよ」
リーダー風の若い女性が近づき、彼女にとびっきりの笑顔を見せた。
「ここは……こうよ。余剰エネルギーでは、情報の伝導に不十分のはず」
「いきなり問題を見つけたのね。院長の言う通り、あなた、才能あるよ!どう、一緒に働いてみない?」
「転んだ球なら、いずれ終着点につく。しかし、この設計の終着点は見えない」
「ふむ……今は知らなくても、いずれ辿り着ける場所?終着点はもちろんある。しかし、設計者として、どんな方法で、どんな方向に向かわせるのかは、皆で一緒に話し合おう!」
話が終わるや否や、ドアが急に開く。後ろに隠れていた数人が倒れ込んだ姿で初対面を果たした。だが、その視線は期待に満ちていた。
コロコロ。その瞬間、白芷は何故か球を装置に放り込んだ音を聞いた。
未知との遭遇
その反響との初対面は、科学考察チームに入る丁度四年目の出来事。
あの時の白芷は、研究への情熱だけが誰にも負けない。しかし、それはもう書斎で実験する程度ではなく、仲間のチームメンバーと一緒に、探究の旅に出るくらいだ。
本で読んだ寒さは、「零下25°」としか書いてなかった。こんな、見渡す限りの銀世界、防護装備をつけても耐え難い震え、観測機械を低温で起動させるための加熱は、決してなかった。
理論はあくまで基本。そこに実践と認知を加えたこそ、価値が出る。
科学考察チームの目標は、普通の遺跡ではない。求めるのは、反響エナジーにより構築された超現実空間——音場。
反響は純粋で完全な情報実体と皆は言うが、形のない相手に、サンプル抽出や解析はおろか、確保できるかどうかすら怪しい。
変化は、九個目の音場で起きた。
そこは浸食された異常世界も、過去の投影空間でもない。
建材が確認できない建築の破損から、奇妙な光が差し込んで……まるで流動している煌めきを映し出された。
科学考察チームの到来は何らかのスイッチを入れたのか?元々空に浮かんだ建築は急に変形し始め、いくつか見たことのない符号やアイコンを見せた。
白芷には、全てが理解できない。この音場の伝いたい情報は、目の前にある景色のように不可知に満ちていた。それでも、驚嘆する時間も惜しい。研究員の本能に駆られ、全員は全力で感じ取った全てを記録し始めた。そこに、新しい可能性が秘められていたら……
測定装置の数値に気づいた白芷はすぐ雑念を清め、この変化している羅列の識別に全身全霊を注いだ。今までの知識と経験を全て活かした。
この二つの変化に線を引くと、間違いなく……
白芷は見えない中心部に抽出装置を掲げた。
すると、見えないはずの「光」のスベクトルを測定できた。
次の瞬間、特定された周波帯が形を取り、純白の光玉となった。
さすがの白芷でも、この存在はいずれ別の形で自分と共にし、そして生涯の課題となる事を、知るはずはなかった。
あの時の白芷は、研究への情熱だけが誰にも負けない。しかし、それはもう書斎で実験する程度ではなく、仲間のチームメンバーと一緒に、探究の旅に出るくらいだ。
本で読んだ寒さは、「零下25°」としか書いてなかった。こんな、見渡す限りの銀世界、防護装備をつけても耐え難い震え、観測機械を低温で起動させるための加熱は、決してなかった。
理論はあくまで基本。そこに実践と認知を加えたこそ、価値が出る。
科学考察チームの目標は、普通の遺跡ではない。求めるのは、反響エナジーにより構築された超現実空間——音場。
反響は純粋で完全な情報実体と皆は言うが、形のない相手に、サンプル抽出や解析はおろか、確保できるかどうかすら怪しい。
変化は、九個目の音場で起きた。
そこは浸食された異常世界も、過去の投影空間でもない。
建材が確認できない建築の破損から、奇妙な光が差し込んで……まるで流動している煌めきを映し出された。
科学考察チームの到来は何らかのスイッチを入れたのか?元々空に浮かんだ建築は急に変形し始め、いくつか見たことのない符号やアイコンを見せた。
白芷には、全てが理解できない。この音場の伝いたい情報は、目の前にある景色のように不可知に満ちていた。それでも、驚嘆する時間も惜しい。研究員の本能に駆られ、全員は全力で感じ取った全てを記録し始めた。そこに、新しい可能性が秘められていたら……
測定装置の数値に気づいた白芷はすぐ雑念を清め、この変化している羅列の識別に全身全霊を注いだ。今までの知識と経験を全て活かした。
この二つの変化に線を引くと、間違いなく……
白芷は見えない中心部に抽出装置を掲げた。
すると、見えないはずの「光」のスベクトルを測定できた。
次の瞬間、特定された周波帯が形を取り、純白の光玉となった。
さすがの白芷でも、この存在はいずれ別の形で自分と共にし、そして生涯の課題となる事を、知るはずはなかった。
限りなく0に近い
白芷には「願い」の意味がわからなかった。
「願うだけでは叶わないと知っても、願う理由はどこにある?そもそも行為自体は明確ではない。対象は?プロセスは?」こんな本気の質問に、答えられる仲間は一人もいなかった。数年間の付き合いで、彼女のロジックを基づいた思考も、普段の難解で複雑な言い方も、彼女なりの誤差を避け、事実だけ追求するやり方とわかっていても……
だから、白芷は願わない。それでも、仲間たちは焚き火や流星、様々なものに願う時、彼女はただ何も言わず見守っている。
完全の理解に至らなくても。互いを信じ、手を伸ばそうとしているのだ。
「反響の真相を……今度こそ解明できるように!」
「できるわよ。ただ、私たちにできる確率が低いだけ」
「くぁ~!そいつは本当だとしてもね!気が滅入るよ!そんな、三段論法みたいに説明しなくても、願うと事実は別々だっつぅ……とにかくっ!あんたもいずれわかるさ。願うの意味をな」
それは、寒い氷原の平凡な一日のはずだった。
彼女は何の前触れもなく、世界が一瞬に崩れ去る事だってあると知る。皆が残像に殺された。明日を夢見て輝かせた目も二度と開くことはなかった。
鼓動がこれ以上ない程激しい。思考が制御不能になるのを感じる。どうして。どうしてこうなる。せっかく同じ音場を見つけたのに……皆のいない明日は、想像以上に怖い。
「皆が帰ってくるように」
初めての願いだった。しかし、誰に願えば叶うのかはわからない。
音場が歪んで崩壊し始め、更なる残像が迫ってきた。恨み、悲しみ、怒り……乱雑に散らばった感情の裏に、激しい渇望が湧き出る。皆が帰って来れば……昔のように、目を覚まして帰って来れば……
急に音痕が光り始める。そして、花に見える何かが、その願いを答えて舞い降りた。
白芷には「願い」の意味がわからない。
願うだけでは叶わないのなら、自分のやれる事に全力を尽くす。
そのたった一つの願いは、心に秘めたほうがいいだろう。
「願うだけでは叶わないと知っても、願う理由はどこにある?そもそも行為自体は明確ではない。対象は?プロセスは?」こんな本気の質問に、答えられる仲間は一人もいなかった。数年間の付き合いで、彼女のロジックを基づいた思考も、普段の難解で複雑な言い方も、彼女なりの誤差を避け、事実だけ追求するやり方とわかっていても……
だから、白芷は願わない。それでも、仲間たちは焚き火や流星、様々なものに願う時、彼女はただ何も言わず見守っている。
完全の理解に至らなくても。互いを信じ、手を伸ばそうとしているのだ。
「反響の真相を……今度こそ解明できるように!」
「できるわよ。ただ、私たちにできる確率が低いだけ」
「くぁ~!そいつは本当だとしてもね!気が滅入るよ!そんな、三段論法みたいに説明しなくても、願うと事実は別々だっつぅ……とにかくっ!あんたもいずれわかるさ。願うの意味をな」
それは、寒い氷原の平凡な一日のはずだった。
彼女は何の前触れもなく、世界が一瞬に崩れ去る事だってあると知る。皆が残像に殺された。明日を夢見て輝かせた目も二度と開くことはなかった。
鼓動がこれ以上ない程激しい。思考が制御不能になるのを感じる。どうして。どうしてこうなる。せっかく同じ音場を見つけたのに……皆のいない明日は、想像以上に怖い。
「皆が帰ってくるように」
初めての願いだった。しかし、誰に願えば叶うのかはわからない。
音場が歪んで崩壊し始め、更なる残像が迫ってきた。恨み、悲しみ、怒り……乱雑に散らばった感情の裏に、激しい渇望が湧き出る。皆が帰って来れば……昔のように、目を覚まして帰って来れば……
急に音痕が光り始める。そして、花に見える何かが、その願いを答えて舞い降りた。
白芷には「願い」の意味がわからない。
願うだけでは叶わないのなら、自分のやれる事に全力を尽くす。
そのたった一つの願いは、心に秘めたほうがいいだろう。
いずれ辿り着ける
氷原での一連は、もう過去のことだ。
唯一の生存者である白芷自身も、一切口にしない。
かつて好事家がその秘密を探ろうとしたが、無駄な事だった。隠された事実など何も無い。当事者全員がベストを尽くした。運という不確定な要素以外に、咎められるものは何もなかった。探索の途中で命を失うのは、出発の時点で誰もが覚悟していた末路。誰も見たことのない真実のために、自身を差し出すのも厭わない人たちだから。
「口にしない」よりも、「言う意味がない」と白芷は思う。
揺るぎない事実を粉飾するより、もっと重要な事に時間を使いたい……それは、一人残されたから、やらなくてはいけない事だ。
とある華胥の新入研究員が反響声態の研究に全力を注ぎ、反響周波帯解析・音骸使用・音場模擬などの分野に貢献したと注目され始めた。
反響生物は「殻」から生み出されたエネルギー体。それらは人類と共感覚を持ち、周波帯以外の形を取り身を現す事もできる。その原理を掴めば、人造音場、もしくは人造反響生物を生む事も可能だと彼女は説明した。学界を震撼させた仮説だが、彼女に付きまとう反響生物は何よりの証明。
その反響生物にも名前はある。一夜だけ白い花を咲かせる、優曇華から取った「優曇」。
真理は、一瞬で消えるもの。全ての研究者が生涯求めたのもまた、その一瞬に過ぎなかった。
記念とも、決意とも受け取れるこの名前。歩け、もっと前へ。まだ見つけなければならない答えがある。
終点に確信を持つ白芷は、特に急がない。
球が落ちる前に、一歩一歩しっかり歩いて行けば大丈夫。何より、この道に歩いているのは自分だけではない。
瑝瓏野外、あの来歴不明の客人が「残響」を体に納めた瞬間……過程を目撃した白芷の耳に、懐かしい音が聞こえた。
コロコロ。球が装置に落ちる音……
やはり。今は知らなくても、いずれ辿り着ける場所は、あるんだ。
唯一の生存者である白芷自身も、一切口にしない。
かつて好事家がその秘密を探ろうとしたが、無駄な事だった。隠された事実など何も無い。当事者全員がベストを尽くした。運という不確定な要素以外に、咎められるものは何もなかった。探索の途中で命を失うのは、出発の時点で誰もが覚悟していた末路。誰も見たことのない真実のために、自身を差し出すのも厭わない人たちだから。
「口にしない」よりも、「言う意味がない」と白芷は思う。
揺るぎない事実を粉飾するより、もっと重要な事に時間を使いたい……それは、一人残されたから、やらなくてはいけない事だ。
とある華胥の新入研究員が反響声態の研究に全力を注ぎ、反響周波帯解析・音骸使用・音場模擬などの分野に貢献したと注目され始めた。
反響生物は「殻」から生み出されたエネルギー体。それらは人類と共感覚を持ち、周波帯以外の形を取り身を現す事もできる。その原理を掴めば、人造音場、もしくは人造反響生物を生む事も可能だと彼女は説明した。学界を震撼させた仮説だが、彼女に付きまとう反響生物は何よりの証明。
その反響生物にも名前はある。一夜だけ白い花を咲かせる、優曇華から取った「優曇」。
真理は、一瞬で消えるもの。全ての研究者が生涯求めたのもまた、その一瞬に過ぎなかった。
記念とも、決意とも受け取れるこの名前。歩け、もっと前へ。まだ見つけなければならない答えがある。
終点に確信を持つ白芷は、特に急がない。
球が落ちる前に、一歩一歩しっかり歩いて行けば大丈夫。何より、この道に歩いているのは自分だけではない。
瑝瓏野外、あの来歴不明の客人が「残響」を体に納めた瞬間……過程を目撃した白芷の耳に、懐かしい音が聞こえた。
コロコロ。球が装置に落ちる音……
やはり。今は知らなくても、いずれ辿り着ける場所は、あるんだ。
白芷 のボイスライン
心の声・その一
あなたは「音」に関する特性をいくつか持っている。だから、あなたとの接触が研究の糸口になるかもしれない。でも、もし私と接触することに不快を覚えるのなら、包み隠さず教えて。私はそういうった気遣いに不向きだから。できればあなたの機嫌を損なうことなく、自分の探求心を満たしたいの。
心の声・その二
反響生物を「魂」の具現だと考える人もいる。確かに反響生物が持つ周波数帯は純粋無垢であり、人々の魂に対する想像に当てはまる。けれど……優曇は私の願いに応えるべく姿を現した。では、いつもあなたに惹かれ、あなたの足跡を追って羽ばたく走声蝶は、あなたの何を背負っているの?この質問に対する答えはあなたの記憶が回復するまで、きっとわからないのでしょう。
心の声・その三
声態の研究を始めたのは、それを信じていたからではなく、疑っていたから。反響の具現が不可能という既存の結論に疑問を抱いて研究を続けた末に、優曇が氷原の中で私に答えを与えてくれたの。結局、その疑問は新しい疑問で上書きされてしまったけれど、“存在しない”と証明されていない限り、“存在する”可能性は否めない。その疑問は……私がもう一度答えを見つけるまで存在し続ける。
心の声・その四
世界は瞬きする間もなく発展していくけれど、決してそれは規律のない渾沌ではない。ゴールドバーグ・マシンのように不規則で複雑であっても手順通りに行えば、筋道の通った結果を導き出せる。だから、玉の動きが予想を超えないよう、手順ごとの不確実性を最低限まで抑える必要があるの。精確さのためなら、私は紆余曲折を厭わない。あなたはどう?事実と感情、どちらが大事?
心の声・その五
ずっと不思議に思っていることが一つある。私はあなたを知ろうとしていただけなのに、気づけばあなたに心を開き、感情と思考を共有していた。これは私が設計した軌道から逸脱する事だけれど……何故か不快には感じない。これ以上あなたと接していたら……きっと私らしからぬ言動がさらに増えて、今まで想像もしなかった体験をしていくのでしょうね。
好きなこと
研究以外だと、瑝瓏のあらゆる場所を観光するのが好き。ご当地グルメを堪能して、地元の人々の営みを観察して…研究だけで賄えない部分は、そんな風に実体験で補う必要があるの。理論のみで構成された結果は不完全なものだから。
悩み
通常であれば何の反応も引き起こさないある発音が特定の場面に置かれると、なぜか特別な意味が連想され、笑いに繋がることがある。ネタ、というのかしら、このような正確な区分と厳密な定義に欠ける概念は…度し難い。
好きな食べ物
旬の野菜を氷で冷やすと、その中にある水分を保つことができて、より甘みを味わえるようになる。もしあなたも野菜が好きなのであれば、香蘇をそのやり方で調理してみたら?良い結果が見込めるわ。
嫌いな食べ物
揚げ物……香りはいいけれど、健康への悪影響を考慮すると……やはりできるだけ摂取しない方がいい。
夢
海蝕現象は人類の世界観を覆したのではなく、人類の視野を広めたのだと、私は思う。だから私たちは、世界に対する認知を一から再構築し始めた。まだ今の進歩は限られているけれど、この道を歩み続ければ、いつかきっと新たな答えに出会えるはず。
伝えたいこと・その一
手に指輪を2個つけているでしょう。一つは忘れられない過去を、もう一つは未だ見ぬ世界への憧れを心に刻むためのもの。命は短すぎる。だから、私は彼らの分まで、止まることなく前へ進むしかない。
伝えたいこと・その二
とてつもなく強烈な渇求を感じて、優曇は姿を現し、私のもとへ来た……とはいえ、今でも私にとって、優曇と他の反響生物は本当に謎に満ちた存在。今まで人類が出会ってきた他の命とは全く異なる存在と言ってもいい。けれど私が、人類がそれらにまつわる謎を解く機会を得ることができたとも言える——それこそ優曇が私の願望に応えて、私のそばにいてくれる理由なのかもしれない。
秧秧について
人から話を聞くのが得意な人もいれば、人の心を開かせるのが上手い人もいる。 秧秧はその両方が上手。彼女と一緒にいると堅苦しくならずに、ありのままでいられる。
熾霞について
出会った頃は、彼女との付き合い方がわからなかった。いつもテンションが高くて、物事に対する理解の仕方も全然違くて……でも、徐々にお互いの思考回路が理解できるようになり、一緒に行動する時には言葉にせずとも連携を取れるようになった。違いがあるからこそ、私たちは互いを補うことができる。
モルトフィーについて
関わりは少ないけれど、彼との共同作業は毎回スムーズに進行できている。でも彼、心肝火旺の症状があるせいか、少し短気ね。彼に用がある時は、前もって金鈴子茶を用意しておくのが身のためよ。彼が飲んでいた量から判断すると、一杯で一日くらいは持つはずだから。
相里要について
彼の天才ぶりと同じくらい印象的な点は、そのお人好し具合。記憶では彼が怒ったことは一度もなく、どれほど常識外れな要望でも、彼なら満足いく形で応えてくれる。
淵武について
配合比と素材は同じなのに、淵武が淹れたお茶は店のものより甘みが強い。本人曰く、熱意を十分込めたから、とのことだけれど……まさか、本当にその行為には甘みを引き出す効果があるというの……?
誕生日祝い
産声をあげた日だというのなら、今日だけは特別にお祝いしてあげる。ん……もっと……近づいていいわよ……優曇の抱擁は疲労緩和の効果があるけれど、私以外でそれを体験したのはあなたが初めて。お誕生日おめでとう、漂泊者。これは優曇と私からの、心ばかりの贈り物。
余暇・その一
そう……可能性は、一つではない。
余暇・その二
心の声が届いたのなら、その反響は必ず返ってくる。
余暇・その三
台詞なし
自己紹介
こちら白芷、華胥研究院の所属よ。反響声態が専攻だから、その分野のことなら遠慮なく聞いて。……他の分野も別に構わないけれど、私の得意分野ではない。答えられないこともたくさんあると思う。そういう場合は一定の準備が必要だから、事前に連絡して。
最初の音
華胥研究院所属、白芷よ。この出会いの意味を見せてもらいましょう。
チームに編入・その一
これ以上の言葉は不要。実践で結果を示す。
チームに編入・その二
答えに近づくために。
チームに編入・その三
私と憂曇の力で、皆を守る。
突破・その一
塞がれた思考回路が突然明るくなった。それに優曇との共鳴もより強く感じる……私に新たな風を吹かせたのは、あなた?
突破・その二
この世に不可知などない。あるのは未知のみ。求める真理へと、更に一歩、近づいた気がする。
突破・その三
優曇と一緒にできることが、以前よりも多くなった。それに、まだまだ未知の可能性があるようにも感じる……この感覚、嫌いじゃない。
突破・その四
私の認知を上回る力がみなぎってくる。あなたは未知を与えてくれた。だから私は、余すことなくその未知を解き明かしてみせる。
突破・その五
今回もまた、理を覆す「秘法」を見ることができた。でも、今は理論より……あなたの方が余程面白い。これからどんな奇想天外を成し遂げるのかしら?やはり世間の全てと一線を画すあなたは……特別な存在ね。
共鳴スキル・1
癒合。
共鳴スキル・2
伝音。
共鳴スキル・3
復元。
共鳴解放・1
響き渡れ。
共鳴解放・2
春よ、雪を融かせ。
共鳴解放・3
真理へと至る道。
パリィ
弱点ね。
優曇を呼び出す
灯れ。
優曇を呼び戻す
静かに。
ダメージ・1
うっ、何か見落としている……?
ダメージ・2
くっ、理論に誤りが……?
ダメージ・3
油断は禁物。
重傷・1
許容範囲内。
重傷・2
想定通りよ……
重傷・3
戦略の修正が必要よ……
戦闘不能・1
検証失敗。
戦闘不能・2
結論に至らなかった…
戦闘不能・3
朝聞夕死。
音骸スキル・召喚
残響再現。
音骸スキル・変身
万象はこの身に。
変奏スキル
私に任せて。
敵に遭遇
準備完了。
滑空
風のまにまに。
鉤縄
上昇。
スキャン
新たな発見。
ダッシュ
台詞なし
壁走り
台詞なし
補給獲得・1
文明からの贈り物、ありがたくいただこう。
補給獲得・2
悪くはない。ここへ来た甲斐があった。
補給獲得・3
見つけたのはあなた。私はとやかく言わないわ。