情報
ガルブレーナ
ガルブレーナ VA
中国語: Zhang Wenjie
日本語: 庄司宇芽香
韓国語: Lee Da Seul
英語: Devora Wilde
ガルブレーナ のフォルテ調査報告
共鳴力
煉獄
共鳴評価報告
「特殊収容リスク評価記録-X666」
「……対象の共鳴力は、かつて黒潮 に汚染された影響により、スペクトル特徴が明瞭ではなく、『ラベル方法』で検査することは不可能。だが当人の陳述や関係者の証言から、先天型共鳴者 であるとが判断できる」
「……対象の体内より怒涛級残像反応を検知……ただ今よりテティス システムに検査を移管する。関係者以外は速やかに安全エリアへ移動してください!」
「……サンプルライブラリのデータと接続完了、比較を開始」
「……対象の体内にある周波数を確認。検知できる残像 は以下の通り:キメラ 、ガルブレーナ、ハルピュイア、デュラハン、バロール、ネームレスシャドウ……その他残像も確認待ち……」
「……対象者自身が周波数で制圧しているため、検知された残像はいずれも攻撃性を示さず、大人しいままでいる……最終評価:収容する必要なし。定期検査を推奨」
対象の共鳴源は断定不能。先天的な炎が黒潮に汚染され、衰えや変化こそ生じたものの、消えることはなかった。後に、体内の周波数が黒潮の造物である「キメラ」と融合し、炎の性質が再び変化した結果、他の周波数を「丸呑み」できる力を得た。
対象はこの力により、残像を狩っては吸収し、その力を己のものにしてきた。現在は体内に秘められた複数の残像の力を駆使して戦闘を行っている。
あの炎に呑み込まれた「悪魔たち」に与えられる選択肢は二つしかない。一つは浄化され、彼女の力の一部になること。もう一つは……灰になり、完全に消滅すること。
「まるで『歩く残像の博物館』みたいだ……これは本当に人間が持てる力なのか?何よりも恐ろしいのが、あの『成長性』……」
「いや……あれは内なる帝国だ……私は見た、帝国が、彼女の体内で築かれていくのを……」
オーバークロック診断報告
オーバークロック歴あり、最高レベル:低。
『ブラックショア花持ちの研究報告』
そうです、「ガルブレーナ」さんがオーバークロック すると、自身の姿形を変えるほどの極めて強い力を発揮するようになりますが、それでも彼女のオーバークロックの最高レベルをあえて軽度と定義しました。
皆さんに忘れないでいただきたいのは、彼女の共鳴力はかつて黒潮 に汚染され、自身の共鳴力のほぼすべてを失っていたことです。そんな共鳴者がオーバークロックに至り、「マイナスからプラスへ、無から有へ」へと突破できたこと自体、すでに奇跡と呼ぶに相応しいのです。
かつて我々は、オーバークロックを精神や力を消耗する状態であると定義していました。つまりそれは、共鳴者の体内で起こる滅ぶ勢いが、新生の勢いを上回っていることを意味すると考えていたのです……しかし彼女の存在は、我々に新たな可能性をもたらしたばかりでなく、「オーバークロック」という概念そのものを、もう一度定義しなおす必要があることを示しました。彼女の体内では、オーバークロックは「滅び」から「新生」へ歩む兆しであり、始まりを意味しているのです。もしかすると、オーバークロックの効果は共鳴者の意志と緊密な関係があるのかもしれません。使い方次第では、オーバークロックは共鳴者にプラスの影響をもたらし、さらには自由自在に力をコントロールできるようになるかもしれませなん。
もう一度強調しますが、研究班のメンバーはいかなる形でも、自分の身に「ガルブレーナ」さんのオーバークロックを再現しようとする行為は固く禁じられています。発見次第、直ちに収容されますのでご注意ください。
ガルブレーナ の大切なアイテム&好物
ポータブル周波数レコーダー・プロトタイプ
ガルブレーナがラハイロイで買ってきたテープレコーダー。技術の発展により、その地では既に製作が終了しており、なかなか買えないレアものとなっている。古びたレコーダーではあるが、所有者の「本質的な周波数」を記録する機能が備わっており、体内にある残像の周波数から侵蝕されないための手助けにもなっている。また、狩猟で各地を転々と回る彼女にとっては、わずかな慰めでもある。
ガルブレーナはこのレコーダーに、自分の好きな音楽をたくさんダビングしている。もしあなたがそれを通じて彼女のことを知ろうとすれば、彼女も喜んで「自分の歌」をあなたに共有してくれるだろう。
「安らな夢を」
ガルブレーナが作った工芸品。自分の羽とよくある素材で編んでできたもの。素材一つひとつに彼女の思いが込められており、素晴らしい願いが宿っている。
ガルブレーナにとって、安らかに眠れる夜は得難い貴重な時間だ。彼女は常に体内の残像に苦しめられ、何重にも重なり合う夢の中で、残像たちとの殺し合いを繰り返してきた……この悩みを解決しようと、この工芸品の力を借りて自らの安らぎを守ろうとした……しかし、その結果も虚しく終わる。
だが、これを他の子どもたちに渡すと、なぜか本来の願いの力が発揮される。子どもたちの夢の中では、「ナイトメア」が襲い掛かってくるたびに、真っ白な女性が現れ、化け物を退治し、子どもたちを深き谷から導き、夜明けが来るまで守ってくれるのだ。
この現象について、キメラはこう説明している。あの羽はガルブレーナの周波数をまとっているため、「ナイトメア残像」の襲撃を防ぐことができる。しかし、もともとガルブレーナの体内にいる残像には、その力は役に立たないという。
それを聞いたガルブレーナは少し落ち込むも、わずかに慰められたと感じた。少なくとも、自分が他人にもたらしたものは、恐怖だけではないことを知ったからだ。
「最初の血の誓い」
ガルブレーナが血を凝縮させて作り上げた「一つ目の弾丸」。贈り物として、あなたがガルブレーナから受け取ったもの。
かつて彼女がネオユニオンの「バッドランド」を旅していた時、とある秘密結社から、「血の誓い」と呼ばれる「残酷な技」を習得した。これを学ぶ者は、行き詰まった亡命者か、彼女と同じよう闇に染まっている者ばかりだ。皆各々の目的や事情があって、この「狩人の道」を選んでおり、邪悪な仇敵と戦う時は、予想外の一撃で相手を葬り去ることだけを追い求めている。中でもガルブレーナはその業をいち早く習得した、最も優れた使い手であった。彼女の血は今や烈火と化し、その道もとうに歩き慣れている。
血の誓いを習得した狩人たちは、皆このような弾丸を持っており、それは「最初の血の誓い」と呼ばれている。ただ彼らの間では、「弾丸に刻まれし自身の名」という呼び名も浸透しており、死してもなお獲物を狩る決意を象徴している。かの「バッドランド」では、かつての盟友が仇敵に変わるのもありふれた話だった。しかし、世間離れした者たちにとって、同じ道を歩む仲間は大切な存在。それゆえ、彼らは「誓いの儀」を考案した……ガルブレーナは誰とも盟約を結ばなかったが、その儀式の持つ意味を今もはっきり覚えている。
狩人が「最初の血の誓い」を他人に贈る時、受け取る側の人の名前を刻む――それは最も簡単でありながら、永遠に消えることのない古き盟約。彼女はあなたの弾丸となり、裏切ることなく、逃げることもない。それは最後の血が涸れ、その烈火が燃え尽きるまで。
ガルブレーナ のストーリー
狩人の一日
「悪魔は既に死に、子どもたちは思う存分歌を歌えるようになった」
デビルハンターは燃えさかる翼をゆっくり収め、空から人々のもとへと降り立つ。腰にかけている猟銃に残った熱が、狩りを終えたばかりであることを示していた。
残像とは、人間に残存する混乱した周波数とエナジーによって生まれた超自然的な存在であり、この世の悪意と壊滅が具現化したもの。科学的な分類はされているものの、一部のエリアでは、「悪魔」や「邪霊」などと呼ばれ、様々な怪談からインスピレーションを得て、特別な名前をつけられることもあった。また、それぞれの目的から強大な残像 を狩る者も存在する。それは賞金のためか、研究のためか、或いは単に強敵を求めているだけなのか。彼らはその恐ろしい存在に「敬意」や「決心」を表するため、いにしえより伝わりし名をそのまま用い始めるようになった――「デビルハンター」という名を。
デビルハンターたちの多くは、デバイスで周波数を回収するか、音核を持ち帰ることで自身の成果を証明してきた。だが彼女はいつも「手ぶらで帰ってくる」。既に目標は倒したと、いつもそう言いながら獲物の弱点や戦い方を包み隠さず皆に共有していた。はったりだと言う者もいるが、そんな時に彼女は決まって自分の右手を伸ばし、軽く呼びかける……そうして「数多の声の歌い手」の姿が彼女の体内から現れると、もはや誰一人として疑わなかった……代わりに、恐怖がその場の空気を包みこんでいく。
このような場面はどうしても避けられない。彼女は人々の自分に対する疑いや誤解、敵意に満ちた囁きをただひたすら聞いているだけで言い返そうとはしない。彼女を人と残像が融合した実験品だとし、殺戮こそが使命だという声もあれば、ある種の残像の周波数が変異した造物であり、生まれた時から罪を背負っているという声もあった。彼女が「悪魔」と契約を結んだため感情がないと言い出す人まで出てきたものの、彼女はいつも否定しなかった。トラブルを解決する際の理由として使いやすいからだそうだ。
いつもなら、彼女はすぐにその場を去るが、たまには自分を労いたいと思うこともある。人々の異様な目に包まれながら、ある露天の店に腰を下ろし、ブルーベリーのアイスクリームケーキをいくつか注文して楽しむのだ。だが、先ほどまで彼女と共に狩りをしていた狩人であれば知っている。その冷酷な外見の下に、どれほど熱い殺気が隠されているのかを。そして戦う時、敵をどれほど残酷に殺すのかを。
数多の声の歌い手は、林や山あいに棲息している獣型の残像で、人の嫉妬心から生まれた存在である。人の声を真似ることで子どもをおびき寄せ、その声を奪うことを楽しみとしている。同行する狩人たちに、奴等の縄張りの中で戦わないほうがいいと念を押したにもかかわらず、若い彼女の言葉を信用する者はいなかった……結局、彼らは罠に嵌ってしまい、耳をつんざくような音波が谷に木霊し増幅され、小隊はあっという間に壊滅してしまった。若いデビルハンターはその時、自ら鼓膜を突き破っていた。耳からは血が滴り落ちるも、次の瞬間、燃え盛る烈火が敵の目の前へと駆けつけ、銃口をその胸に突きつけた。銃声が轟いた後、彼女の冷たい囁きだけが林の中で響いていた——「罪滅ぼしの時間だ」。
そして人々は見届けた。その化け物が、自らの悪しき行いに対して、いかなる対価を払ったのかを。彼女は右手でその喉を締め、業火が大蛇のごとく腕を伝い、化け物の全身を包んだ。「歌い手」は惨めに歪んだ泣き声しか発せられず、やがて残響となって彼女に吸収された――これこそが、彼女が狩りで得た報酬だった。そして血を浴び、血を燃やす彼女の体は、恐ろしいほどの再生能力で癒えていく。いったいどちらが本物の「悪魔」であるのか、一時は区別がつかなくなるほどであった。
だが、その場にいる誰もが知っていた。彼女なら、逃げようと思えばとっくに逃げ切れた。しかし彼女はそうしなかった――でなければ、ここにいる人々は全滅していた。
狩りが終わった後、彼女は肩に落ちた埃を軽く払い、どこからともなくアイスを取り出し、何事もなかったかのような顔で今も怯えている狩人たちに聞いた——「一本いるか?」と。
この危険極まりない狩猟も、彼女にとってはありふれた日常に過ぎないのだろう。そんな余裕ぶりであった。
冷たい甘さが殺戮の熱を完全に冷ました後、彼女は再び翼を広げ、謎に満ちた後ろ姿を皆に残したままその場を去った。
どこから来たのかも、どこへ向かうのかも、誰も知らない。あどけない子どもたちは、アイスクリームを三カップたいらげた後、彼女を「アイスの悪魔」と呼んだ。博識ある人は、悪意の周波数を放つその炎から、伝説の「炎魔」のことを思い起こす……もし彼女が落とした羽根を拾えば、それは残像を切り裂くほど鋭いものとなり、同時に、わずかな柔らかさや……辛酸をなめてきた苦渋をも感じられるだろう。そして人々は思った。彼女の自由気ままなところも、帰る場所がないゆえのものかもしれないと。
彼女は自分の過去について滅多に語ろうとはしない。たとえ聞かれても、いつもごまかしていただけだった。
彼女の物語は、大昔から語らねばならない。あの時の彼女は、淡い金色の短髪と、金色に輝く瞳を持っていた……そして、まだ人々からは……「ガルブレーナ」と呼ばれてはいなかった。
デビルハンターは燃えさかる翼をゆっくり収め、空から人々のもとへと降り立つ。腰にかけている猟銃に残った熱が、狩りを終えたばかりであることを示していた。
残像とは、人間に残存する混乱した周波数とエナジーによって生まれた超自然的な存在であり、この世の悪意と壊滅が具現化したもの。科学的な分類はされているものの、一部のエリアでは、「悪魔」や「邪霊」などと呼ばれ、様々な怪談からインスピレーションを得て、特別な名前をつけられることもあった。また、それぞれの目的から強大な
デビルハンターたちの多くは、デバイスで周波数を回収するか、音核を持ち帰ることで自身の成果を証明してきた。だが彼女はいつも「手ぶらで帰ってくる」。既に目標は倒したと、いつもそう言いながら獲物の弱点や戦い方を包み隠さず皆に共有していた。はったりだと言う者もいるが、そんな時に彼女は決まって自分の右手を伸ばし、軽く呼びかける……そうして「数多の声の歌い手」の姿が彼女の体内から現れると、もはや誰一人として疑わなかった……代わりに、恐怖がその場の空気を包みこんでいく。
このような場面はどうしても避けられない。彼女は人々の自分に対する疑いや誤解、敵意に満ちた囁きをただひたすら聞いているだけで言い返そうとはしない。彼女を人と残像が融合した実験品だとし、殺戮こそが使命だという声もあれば、ある種の残像の周波数が変異した造物であり、生まれた時から罪を背負っているという声もあった。彼女が「悪魔」と契約を結んだため感情がないと言い出す人まで出てきたものの、彼女はいつも否定しなかった。トラブルを解決する際の理由として使いやすいからだそうだ。
いつもなら、彼女はすぐにその場を去るが、たまには自分を労いたいと思うこともある。人々の異様な目に包まれながら、ある露天の店に腰を下ろし、ブルーベリーのアイスクリームケーキをいくつか注文して楽しむのだ。だが、先ほどまで彼女と共に狩りをしていた狩人であれば知っている。その冷酷な外見の下に、どれほど熱い殺気が隠されているのかを。そして戦う時、敵をどれほど残酷に殺すのかを。
数多の声の歌い手は、林や山あいに棲息している獣型の残像で、人の嫉妬心から生まれた存在である。人の声を真似ることで子どもをおびき寄せ、その声を奪うことを楽しみとしている。同行する狩人たちに、奴等の縄張りの中で戦わないほうがいいと念を押したにもかかわらず、若い彼女の言葉を信用する者はいなかった……結局、彼らは罠に嵌ってしまい、耳をつんざくような音波が谷に木霊し増幅され、小隊はあっという間に壊滅してしまった。若いデビルハンターはその時、自ら鼓膜を突き破っていた。耳からは血が滴り落ちるも、次の瞬間、燃え盛る烈火が敵の目の前へと駆けつけ、銃口をその胸に突きつけた。銃声が轟いた後、彼女の冷たい囁きだけが林の中で響いていた——「罪滅ぼしの時間だ」。
そして人々は見届けた。その化け物が、自らの悪しき行いに対して、いかなる対価を払ったのかを。彼女は右手でその喉を締め、業火が大蛇のごとく腕を伝い、化け物の全身を包んだ。「歌い手」は惨めに歪んだ泣き声しか発せられず、やがて残響となって彼女に吸収された――これこそが、彼女が狩りで得た報酬だった。そして血を浴び、血を燃やす彼女の体は、恐ろしいほどの再生能力で癒えていく。いったいどちらが本物の「悪魔」であるのか、一時は区別がつかなくなるほどであった。
だが、その場にいる誰もが知っていた。彼女なら、逃げようと思えばとっくに逃げ切れた。しかし彼女はそうしなかった――でなければ、ここにいる人々は全滅していた。
狩りが終わった後、彼女は肩に落ちた埃を軽く払い、どこからともなくアイスを取り出し、何事もなかったかのような顔で今も怯えている狩人たちに聞いた——「一本いるか?」と。
この危険極まりない狩猟も、彼女にとってはありふれた日常に過ぎないのだろう。そんな余裕ぶりであった。
冷たい甘さが殺戮の熱を完全に冷ました後、彼女は再び翼を広げ、謎に満ちた後ろ姿を皆に残したままその場を去った。
どこから来たのかも、どこへ向かうのかも、誰も知らない。あどけない子どもたちは、アイスクリームを三カップたいらげた後、彼女を「アイスの悪魔」と呼んだ。博識ある人は、悪意の周波数を放つその炎から、伝説の「炎魔」のことを思い起こす……もし彼女が落とした羽根を拾えば、それは残像を切り裂くほど鋭いものとなり、同時に、わずかな柔らかさや……辛酸をなめてきた苦渋をも感じられるだろう。そして人々は思った。彼女の自由気ままなところも、帰る場所がないゆえのものかもしれないと。
彼女は自分の過去について滅多に語ろうとはしない。たとえ聞かれても、いつもごまかしていただけだった。
彼女の物語は、大昔から語らねばならない。あの時の彼女は、淡い金色の短髪と、金色に輝く瞳を持っていた……そして、まだ人々からは……「ガルブレーナ」と呼ばれてはいなかった。
遠ざかる幼かりし時
エンジェルは「光と炎に抱かれながら」生まれたと言われている。彼女は金色の夜明けに誕生し、生まれつき明るい炎を纏っていた。
エンジェルの両親の共鳴能力はさほどずば抜けてはいなかった。もし彼女がラグーナ で誕生していたなら、それは「神の御業」だと見なされていただろう。だがセブン・ヒルズに「神」はいない。ここは力による征服だけを栄光と見なしている。
子どもにとって、あまりにも早い段階で強い共鳴力を持つことは、必ずしも幸運であるとは限らない。それは往々にして、力を制御できないリスクを伴うからだ。幼い頃のエンジェルは、両親の教えに従い、躍動する火花で人を傷つけぬよう、常に自身の感情を抑えていた。最もはしゃいでいい年頃になっても、彼女だけは他の子どもたちと違っていた。それゆえ、子どもたちから「冷たい女の子」と呼ばれ、誰とも親しくしようとしない様を、傲慢だと受け取られる事もあった。肝の小さい子どもは次第に彼女を避けるようになり、勇ましい子どもは彼女を挑発し、倒すべきライバルだと見なした。もちろん、悪意に駆られてそうしたわけではない。ただ、子どもたちにとって彼女は——性格も才能も身分も——何もかもがあまりに異なりすぎていたのだ。まるで異物のように。
かつての彼女の両親は、ラグーナからの流れ者で、各地を転々としていた。やがてたどり着いたある地で、化け物が害をなしていると聞いた父親は、その駆除に貢献した。そして母親もまた、道端で乞食に出会えば、たとえ自分がどれだけ貧しくても、食べ物を分け与えていた。二つの町の間に偏見がまだ根強く残る時代においても、二人のそのような振る舞いが評価され、町に受け入れられ、やがてそこに住み着くこととなった。
母親はよく聖典の箴言を引用し、彼女に人を愛し、慈しみ、寛容であるよう教えていた。そしてエンジェルもまた、母の言葉をしっかりと心に留めていた。だがセブン・ヒルズでは、耐えてばかりいても尊重は得られない。二つの文化の間で育ったエンジェルは、自らの信条を掲げていた。人と仲良く接し、厄介事は起こさない……しかし、誰かが自分に拳を向けるのなら、彼女は迷わず倍にして返す、と。
幸いにも、セブン・ヒルズでは、子どもに何かしらの「傷跡」があることは珍しくなかった。むしろない方がおかしいくらいだ。ただ、エンジェルは両親を心配させまいと、次第に一人でいることが多くなっていた。人混みの中で「静けさ」を求め、よく父の親友であるフェロおじさんの鍛冶屋を訪れていた。滅多に子どもが来ないこと、そして生まれながら炎に親しいこともあって、彼女は燃え盛る窯炉や飛び散る火花、さらにはハンマーで鉄を打つカーンという音が好きだった。ほどなくして、そこで赤髪の女の子と知り合う。まっすぐな性格のその子のおかげで、友達も徐々に増え、笑うことも多くなってきたエンジェル。幼少期の彼女は、もはや一人ぼっちではなくなっていた。二人は窯炉のそばでお喋りをし、互いの迷いを語り合った。そのオーガスタという名の女の子は、武器の一本一本に秘められた物語に関心を寄せ、エンジェルは「焼き入れ」という神秘的な儀式に好奇心を抱いていた。フェロおじさんはいつもこう説明していた。「刀の材料がどれだけ良くても、焼きを入れなければ、いい武器にはならない」と。
エンジェルには、まだまだ知らないことがたくさんあった。なぜセブン・ヒルズの風は、いつも鉄錆の匂いを帯びているのかも、そのうちの一つだった。あの時はただ、窯炉とふいごの吐息のせいだと思っていた。しかし、時間が経つにつれ、彼女は次第に理解していく――その風は、狩猟台地より吹いてくるものだと。地に落ちた矛先から、折れた剣から……そして戦士たちの熱い血から、吹いてきたのだと理解した。
16年前、台地に高潮 がやってきた。ファビアヌム の人々は日夜狩りに追われ、両親の疲れた姿や、人々が傷だらけで帰ってくる姿を、エンジェルは目の当たりにした。そして、力について議論を交わす人々の声を耳にし……やがて彼女は、心の中で小さな誓いを立てた。
それ以来、エンジェルは狂ったように鍛錬を重ねた。大人に武芸を教わろうと求め、森をパトロールする小隊に同行して狩りを学び、出会った相手に決闘を挑むこともあった。まるで水に渇いた獣のように、この世のすべての泉を飲み干す勢いで――すべてはセブン・ヒルズの「若手養成選抜試合」のためだった。その試合に勝てば、プロのグラディエーター から直接指導を受けられ、より早く狩人として成長できるのだ。
やがて、努力は実を結んだ。試合場でエンジェルは数十人もの相手を倒し、当時のシード選手であるアキリアとの決勝戦を迎えた。相手は野外にて一人で黒潮の造物 を撃退した人物であり、生と死の狭間を歩き渡ってきたその覚悟は、エンジェルを圧倒した。このチャンスを逃すわけにはいかない……最終的に、エンジェルは自身の共鳴力を使うことを決意した。
光は炎のようにほとばしり、それは高温でありながらも相手を傷つけず、輝きは相手の目を刺さなかった。しかし、その一撃で状況は逆転し、勝負が決した。エンジェルは前に出て相手を慰めようとするが、悔しさのあまり相手が口にした言葉が、心に刺さった――「なんであんたは、生まれつきあんなに強い力を持ってるの?」と。
そう、これは幼い頃から常に彼女が抱いていた疑問だった……なんで、自分にはこんな力があるのか?
自分より努力家で優秀な人もいるのに、なぜその人たちは恵まれなかったのか?
もしみんなが自分と同じ力を持っていたら、傷つかずに済むのだろうか?
そして、もし自分がこの力を使いこなせたら、みんなの役に立てるのだろうか……?
その思考を遮るように、空からグリフェックスの鳴き声が響いた。グリフェックスたちは一斉に台地へと飛び立つ――すべての狩猟の始まりの地へ。
そう、少なくとも彼女は証明したのだ。自分はもうこの力をコントロールできると。やがて、彼女もグリフェックスにまたがり、狩場を飛び回りながら、その力を駆使して邪悪なる造物を討ち、より多くの人々を守る……それが、彼女の立てた誓いだった。彼女の「狩猟」は、間もなく始まる。
そのはずだった、そうあるべきだった。しかし、運命は彼女に対し、その憎らしい素顔を容赦なく見せつける……笑えない冗談のように、あるいは、最初からそうするつもりだったのかもしれない。贈られたものはすべて回収され、善を行おうとする者には悪を行わせ、恐れ知らずには、二度と立ち上がれぬよう膝をつかせ、打ちのめすのだ。
ただ、彼女は一度もテトラゴン真殿に行ったこともなく、運命を理解していなければ、しようともしない。彼女の中にあるのは、ただ一つの信条のみ——自分の顔に拳を向けた者には、迷わず倍にして返す――それは相手が人間だろうと、神だろうと、運命だろうと……
エンジェルの両親の共鳴能力はさほどずば抜けてはいなかった。もし彼女が
子どもにとって、あまりにも早い段階で強い共鳴力を持つことは、必ずしも幸運であるとは限らない。それは往々にして、力を制御できないリスクを伴うからだ。幼い頃のエンジェルは、両親の教えに従い、躍動する火花で人を傷つけぬよう、常に自身の感情を抑えていた。最もはしゃいでいい年頃になっても、彼女だけは他の子どもたちと違っていた。それゆえ、子どもたちから「冷たい女の子」と呼ばれ、誰とも親しくしようとしない様を、傲慢だと受け取られる事もあった。肝の小さい子どもは次第に彼女を避けるようになり、勇ましい子どもは彼女を挑発し、倒すべきライバルだと見なした。もちろん、悪意に駆られてそうしたわけではない。ただ、子どもたちにとって彼女は——性格も才能も身分も——何もかもがあまりに異なりすぎていたのだ。まるで異物のように。
かつての彼女の両親は、ラグーナからの流れ者で、各地を転々としていた。やがてたどり着いたある地で、化け物が害をなしていると聞いた父親は、その駆除に貢献した。そして母親もまた、道端で乞食に出会えば、たとえ自分がどれだけ貧しくても、食べ物を分け与えていた。二つの町の間に偏見がまだ根強く残る時代においても、二人のそのような振る舞いが評価され、町に受け入れられ、やがてそこに住み着くこととなった。
母親はよく聖典の箴言を引用し、彼女に人を愛し、慈しみ、寛容であるよう教えていた。そしてエンジェルもまた、母の言葉をしっかりと心に留めていた。だがセブン・ヒルズでは、耐えてばかりいても尊重は得られない。二つの文化の間で育ったエンジェルは、自らの信条を掲げていた。人と仲良く接し、厄介事は起こさない……しかし、誰かが自分に拳を向けるのなら、彼女は迷わず倍にして返す、と。
幸いにも、セブン・ヒルズでは、子どもに何かしらの「傷跡」があることは珍しくなかった。むしろない方がおかしいくらいだ。ただ、エンジェルは両親を心配させまいと、次第に一人でいることが多くなっていた。人混みの中で「静けさ」を求め、よく父の親友であるフェロおじさんの鍛冶屋を訪れていた。滅多に子どもが来ないこと、そして生まれながら炎に親しいこともあって、彼女は燃え盛る窯炉や飛び散る火花、さらにはハンマーで鉄を打つカーンという音が好きだった。ほどなくして、そこで赤髪の女の子と知り合う。まっすぐな性格のその子のおかげで、友達も徐々に増え、笑うことも多くなってきたエンジェル。幼少期の彼女は、もはや一人ぼっちではなくなっていた。二人は窯炉のそばでお喋りをし、互いの迷いを語り合った。そのオーガスタという名の女の子は、武器の一本一本に秘められた物語に関心を寄せ、エンジェルは「焼き入れ」という神秘的な儀式に好奇心を抱いていた。フェロおじさんはいつもこう説明していた。「刀の材料がどれだけ良くても、焼きを入れなければ、いい武器にはならない」と。
エンジェルには、まだまだ知らないことがたくさんあった。なぜセブン・ヒルズの風は、いつも鉄錆の匂いを帯びているのかも、そのうちの一つだった。あの時はただ、窯炉とふいごの吐息のせいだと思っていた。しかし、時間が経つにつれ、彼女は次第に理解していく――その風は、狩猟台地より吹いてくるものだと。地に落ちた矛先から、折れた剣から……そして戦士たちの熱い血から、吹いてきたのだと理解した。
16年前、台地に
それ以来、エンジェルは狂ったように鍛錬を重ねた。大人に武芸を教わろうと求め、森をパトロールする小隊に同行して狩りを学び、出会った相手に決闘を挑むこともあった。まるで水に渇いた獣のように、この世のすべての泉を飲み干す勢いで――すべてはセブン・ヒルズの「若手養成選抜試合」のためだった。その試合に勝てば、プロの
やがて、努力は実を結んだ。試合場でエンジェルは数十人もの相手を倒し、当時のシード選手であるアキリアとの決勝戦を迎えた。相手は野外にて一人で
光は炎のようにほとばしり、それは高温でありながらも相手を傷つけず、輝きは相手の目を刺さなかった。しかし、その一撃で状況は逆転し、勝負が決した。エンジェルは前に出て相手を慰めようとするが、悔しさのあまり相手が口にした言葉が、心に刺さった――「なんであんたは、生まれつきあんなに強い力を持ってるの?」と。
そう、これは幼い頃から常に彼女が抱いていた疑問だった……なんで、自分にはこんな力があるのか?
自分より努力家で優秀な人もいるのに、なぜその人たちは恵まれなかったのか?
もしみんなが自分と同じ力を持っていたら、傷つかずに済むのだろうか?
そして、もし自分がこの力を使いこなせたら、みんなの役に立てるのだろうか……?
その思考を遮るように、空からグリフェックスの鳴き声が響いた。グリフェックスたちは一斉に台地へと飛び立つ――すべての狩猟の始まりの地へ。
そう、少なくとも彼女は証明したのだ。自分はもうこの力をコントロールできると。やがて、彼女もグリフェックスにまたがり、狩場を飛び回りながら、その力を駆使して邪悪なる造物を討ち、より多くの人々を守る……それが、彼女の立てた誓いだった。彼女の「狩猟」は、間もなく始まる。
そのはずだった、そうあるべきだった。しかし、運命は彼女に対し、その憎らしい素顔を容赦なく見せつける……笑えない冗談のように、あるいは、最初からそうするつもりだったのかもしれない。贈られたものはすべて回収され、善を行おうとする者には悪を行わせ、恐れ知らずには、二度と立ち上がれぬよう膝をつかせ、打ちのめすのだ。
ただ、彼女は一度もテトラゴン真殿に行ったこともなく、運命を理解していなければ、しようともしない。彼女の中にあるのは、ただ一つの信条のみ——自分の顔に拳を向けた者には、迷わず倍にして返す――それは相手が人間だろうと、神だろうと、運命だろうと……
エンジェルの燃えさし
初めて残像 を「喰らった」時、体が起こした「拒絶反応」を彼女は今も覚えている。内臓を焼かれるような痛み、自分の魂が燃やし尽くされるかのような感覚……だがそれ以上に苦しかったのは、己の弱さだった。
二度目の命がどこから来たのかも知っており、かつて立てた誓いのこともよく覚えている。しかし、いざ本物の「邪悪なる存在」と対峙したとき、自分がああも無力だったとは思わなかった。
そこで彼女は自ら周波数を差し出し、体内に棲む悪魔と「契約を結び」、二度と後戻りのできない道を歩み始めた。
彼女はずっと、これこそが自分の始めるべき「狩猟」だと信じてきた。かつて参加できなかった狩猟開始の式典――諭しの女 が灯すはずだった聖火を、今は自らの「ガルブレーナ」の業火で灯していた。
そうやって、少女は炎を纏い歩き続けた。文明と荒野を渡り歩き、噂と伝説から情報を探り、死体と骸骨がはびこる鄙びた地へ赴いては、人々のさまざまな感情から生まれたおぞましい造物を狩っていた。
かつて彼女は、険しい断崖で敵と殺し合い、共に崖の下へ落ちていた――たとえまだ飛べる術を身につけていなかったとしても。
また、敵が水底を恐れることを知り、深い湖の底で戦ったこともあった――たとえ泳げなかったとしても。
彼女は多くの怪物を屠ってきた同時に、何度も怪物に殺されかけた。
もともとキメラ は、二度目の命を得た者が、命の重みを実感し、生き延びることだけを考え、次第に意志が弱まったところで自らの罠にはめることを企んでいた。しかし、少女の意志の強さは次第にそれを圧倒していった……彼女が幾度となく自分より遥かに強い相手に挑み、命を対価としてキメラを抑え込む檻に変えるとは、キメラ自身も思いもよらなかったのだ。
せっかく手に入った二度目の命だ。生き延びるだけでは、あまりにも虚しく、長すぎる人生になってしまう。彼女にとってその命は、体内に棲む「悪魔」を手懐けるためだけのものではなく、運命からより多くの力を取り戻すためのものでもあった。
キメラの言葉は戯れ言ばかりではなかった。力なき善良ほど悲しいものはない。人を救いたければ、「悪を成す力」を手に入れなければならない。かつて母親の言葉を思い出す——「木々の根は地獄まで根ざすことができなければ、その葉が天国に届くこともない」と。だが、彼女は天国に入ろうとは思っていない。その反面、もし地獄へ堕ちることができるなら、悪魔もろともその奥底へ引きずり下ろし、燃え上がる業火で屈服させ、永遠に沈めようと考えている。たとえ己の身が焼かれようとも。
時々、彼女は自分に問いかけることがある。もうほとんど悪魔と化したこの体は、果たして「人」と呼べるのだろうか。本当に、闇の力に呑み込まれることなく、人々を助けるためだけに使えるのだろうか。
自分の善意を包み隠さず人々に示し続けてきたが……悪魔のような所業も、自ら行ってきたのだ。
かつて、彼女は南の地にある辺境の町に、「ネームレスシャドウ」を狩りに行ったことがある。噂によれば、その悪魔の影響で、現地の人々はある「周波数の変換」の技術に魅了されてしまったらしい。
町の者たちは、通りすがりの人の周波数を刈り取り、それを己の寿命へと変えていた。しかし、悪魔が死に、技術を支えていた機械も壊れると、朽ちぬ者たちは一瞬にして老い、正気を失った。命が完全に消えるその寸前においても、彼らの頭には、人の命を奪い己のものとすることしかなかった。
やがて彼女は理解した。その狂気は悪魔によるものではなく、人ならざる欲望そのものが、あの悪魔を「召喚」したのだと。そして彼女は火を放ち、既に「地獄」と化した町を灰にした……その業を、自らの手で断ち切るために。
そうして、この世界では、悪魔であるのは残像だけでないこと、そして悪魔が一体どこから生まれるのかということを彼女は知った。
自分がそう考えていられるのも、まだ人として存在できている証拠なのかもしれない――もしかしたら、この世界は既に、自分の問いに答えを示していたのかもしれない。
人々がほんの僅かな利益のために奪い合うのを目にし、またほんの僅かな希望のために死も厭わず身を捧げるのも見届けた。人々の私欲のせいで滅んだ町を目にし、そして泥沼の廃墟から真っ白な花が咲き誇るのも見た……人の本性はいつも、そのように魅力的でありながらも儚く脆い。善と悪、卑劣と偉大は、常に同時に存在する。この世界は真っ黒でも真っ白でもない。あの「灰色」の部分も未来永劫、存在し続ける――そここそが正しく、彼女に相応しい居場所なのだ。
若きデビルハンターは、やがて人々の態度や狭間での生活に慣れていった。幼いころの自分は、成長する炎の羽根に馴染めずひどい目に遭った。しかし今では、その羽根で空高く飛べるようになっている。
白日の下、彼女は鷹のように獲物を追い、狭間をさまよいながら世界を見守る。闇夜には、人のいない木の枝に止まり、星々を守りつつ、星々に守られながら羽を休める。
かつて立てた誓いを彼女は今も覚えている。「影や力」などに恐れを感じていた自分も、今やその恐怖を利用し、自ら「恐怖そのもの」になることを選んだ……そして、それは悪魔ですら恐れる存在となる。
二度目の命がどこから来たのかも知っており、かつて立てた誓いのこともよく覚えている。しかし、いざ本物の「邪悪なる存在」と対峙したとき、自分がああも無力だったとは思わなかった。
そこで彼女は自ら周波数を差し出し、体内に棲む悪魔と「契約を結び」、二度と後戻りのできない道を歩み始めた。
彼女はずっと、これこそが自分の始めるべき「狩猟」だと信じてきた。かつて参加できなかった狩猟開始の式典――
そうやって、少女は炎を纏い歩き続けた。文明と荒野を渡り歩き、噂と伝説から情報を探り、死体と骸骨がはびこる鄙びた地へ赴いては、人々のさまざまな感情から生まれたおぞましい造物を狩っていた。
かつて彼女は、険しい断崖で敵と殺し合い、共に崖の下へ落ちていた――たとえまだ飛べる術を身につけていなかったとしても。
また、敵が水底を恐れることを知り、深い湖の底で戦ったこともあった――たとえ泳げなかったとしても。
彼女は多くの怪物を屠ってきた同時に、何度も怪物に殺されかけた。
もともと
せっかく手に入った二度目の命だ。生き延びるだけでは、あまりにも虚しく、長すぎる人生になってしまう。彼女にとってその命は、体内に棲む「悪魔」を手懐けるためだけのものではなく、運命からより多くの力を取り戻すためのものでもあった。
キメラの言葉は戯れ言ばかりではなかった。力なき善良ほど悲しいものはない。人を救いたければ、「悪を成す力」を手に入れなければならない。かつて母親の言葉を思い出す——「木々の根は地獄まで根ざすことができなければ、その葉が天国に届くこともない」と。だが、彼女は天国に入ろうとは思っていない。その反面、もし地獄へ堕ちることができるなら、悪魔もろともその奥底へ引きずり下ろし、燃え上がる業火で屈服させ、永遠に沈めようと考えている。たとえ己の身が焼かれようとも。
時々、彼女は自分に問いかけることがある。もうほとんど悪魔と化したこの体は、果たして「人」と呼べるのだろうか。本当に、闇の力に呑み込まれることなく、人々を助けるためだけに使えるのだろうか。
自分の善意を包み隠さず人々に示し続けてきたが……悪魔のような所業も、自ら行ってきたのだ。
かつて、彼女は南の地にある辺境の町に、「ネームレスシャドウ」を狩りに行ったことがある。噂によれば、その悪魔の影響で、現地の人々はある「周波数の変換」の技術に魅了されてしまったらしい。
町の者たちは、通りすがりの人の周波数を刈り取り、それを己の寿命へと変えていた。しかし、悪魔が死に、技術を支えていた機械も壊れると、朽ちぬ者たちは一瞬にして老い、正気を失った。命が完全に消えるその寸前においても、彼らの頭には、人の命を奪い己のものとすることしかなかった。
やがて彼女は理解した。その狂気は悪魔によるものではなく、人ならざる欲望そのものが、あの悪魔を「召喚」したのだと。そして彼女は火を放ち、既に「地獄」と化した町を灰にした……その業を、自らの手で断ち切るために。
そうして、この世界では、悪魔であるのは残像だけでないこと、そして悪魔が一体どこから生まれるのかということを彼女は知った。
自分がそう考えていられるのも、まだ人として存在できている証拠なのかもしれない――もしかしたら、この世界は既に、自分の問いに答えを示していたのかもしれない。
人々がほんの僅かな利益のために奪い合うのを目にし、またほんの僅かな希望のために死も厭わず身を捧げるのも見届けた。人々の私欲のせいで滅んだ町を目にし、そして泥沼の廃墟から真っ白な花が咲き誇るのも見た……人の本性はいつも、そのように魅力的でありながらも儚く脆い。善と悪、卑劣と偉大は、常に同時に存在する。この世界は真っ黒でも真っ白でもない。あの「灰色」の部分も未来永劫、存在し続ける――そここそが正しく、彼女に相応しい居場所なのだ。
若きデビルハンターは、やがて人々の態度や狭間での生活に慣れていった。幼いころの自分は、成長する炎の羽根に馴染めずひどい目に遭った。しかし今では、その羽根で空高く飛べるようになっている。
白日の下、彼女は鷹のように獲物を追い、狭間をさまよいながら世界を見守る。闇夜には、人のいない木の枝に止まり、星々を守りつつ、星々に守られながら羽を休める。
かつて立てた誓いを彼女は今も覚えている。「影や力」などに恐れを感じていた自分も、今やその恐怖を利用し、自ら「恐怖そのもの」になることを選んだ……そして、それは悪魔ですら恐れる存在となる。
心の中の空
落日、黄砂、硝煙――今回の狩場は、いつもほど残酷ではなかった。
かつての少女は、今や冷酷な大人へと成長した。その体は傷にまみれ、服はボロボロであったが、そこから零れ出る殺気だけでも、無数の残像 を怯えさせてきた。
だがそんな彼女であっても、あの鋼鉄の体の前では、いまだ小さな存在にすぎなかった。デュラハン――この地を征服する首無しの騎士。奴は、何の前触れもなく現れた。
一度刃を交えた後、ガルブレーナはあることに気づく。自分の「黒潮感知」の力が通用しないことと、その理由に。奴の周波数はあまりにも強大であり、それは黒潮 ですら憚るほどであった。
彼女はとっくにキメラ の枷を外し、本能のまま殺し合いを楽しんでいたが……それでもデュラハンの戦馬を押さえ込むだけで精一杯だった。
逃げるべきか?彼女は何度もそう考えたが、同時に気づいてもいた。数百メートル後方には、必死に逃げる親子の姿があることを。自分が一秒でも敵を足止めできれば、二人の生存率が上がる。その先で彼女たちは、数キロ離れた部族にこの危機を伝え、避難を促すだろう。やがてはさらなる援助を呼び寄せ、この怪物の蹄を文明へ踏み入らせまいとするはずだ。自分がここに立っている限り、希望は皆に届く。もはや迷いなどなかった。これは勝てるかどうかの問題ではない。ここで立ち向かう以外に、道はないのだ。
彼女は死を恐れてはいなかった。ただ、ここで終わってしまうことが悔しかった。ハルピュイアの鋭い翼はすでに折れ、頼れるものは「ガルブレーナ」の僅かに残る業火だけ。誰もいない戦場で、彼女はもはやこれ以上の憎しみを吸収できなくなっていた。
「この炎を燃やす方法は知っているはずだよね」
幼い声が、ふと彼女の頭の中で響いた。
「ガルブレーナが、生まれながらに憎しみの炎を糧としているなら……」
「自分自身を憎め」
「その弱さを、その無力さを、その迷いを……」
「『炎魔』の炎が足りなければ……残りの炎で自身を燃やせ」
「『魔眼』が奴の体を貫けないと言っても……自分の『目』を信じろ」
声の主が分からずとも、その言葉は間違いなく彼女を導いていた。自分自身の判断を信じろ……今までそうしてきたように。
憎しみと炎が彼女の指先から同時に立ち上り、傷口に火が灯る。僅かであったが、自らの血と肉を燃やすには十分だった。
デュラハンの巨剣が再び襲いかかる。それを受け止める力はあったが、彼女は正面からの戦いを選ばなかった。そして首の穴から、空虚な鎧の内部へと飛び入った。
一瞬にして、中で燃え盛っていた炎に呑まれるも、彼女の予想は的中していた。こここそが奴の弱点――その内部の炎は脆弱で、ガルブレーナの炎には遠く及ばなかったのだ。
二つの炎が激しくぶつかり合い、巨体の中から轟音が轟く……やがて、すべてが静寂へとかえっていった。
どれだけの時間が経ったのかは分からない。ガルブレーナは、あの親子に抱きかかえられながら目を覚ました。
自分は助かったのかと、ガルブレーナは安堵する。彼女は指先に再び炎を起こし、自らを燃やそうとした――それは、同じ技をもう一度使えることに対する喜びだった。
だが幸いにも、親子に止められ、その指を下ろすことになる……あの首無しの騎士はすでに姿を消していたのだから。後から聞いた話では、援助が駆け付けた時、燃えるような金色の夜明けが空の彼方に現れ、ガルブレーナはただ一人、黄砂の上に倒れていたのだという。そして彼女自身も、人に指摘されてはじめて、自分の身に起きた変化を悟った。デュラハンの内部での戦いに彼女は勝利し、奴の周波数はすでに彼女の肉体と融合していたのだ。首無しの騎士の再生能力は彼女の死滅しかけた体を回復し、古き傷跡さえも癒やしていた。不死の炎魔――その名は、いまや名実ともに彼女のものとなった。しかし、彼女にはまだ生きているという実感はなかった。ただ、同じ技をこれから何度も使えるようになったことだけは知っていた。
ボロボロだった服もひどく焼かれてしまい、地に落ちた白い羽で新しい服を編もうとする者もいたが、彼女は自分の肩の黒い羽を見せながら、「このままでいい」と断った。
デュラハンも眩い黄金色が怖いのかと彼女は考えた。その金色の夜明けは誰がもたらしたのか、彼女には知る由もなかった。単なる天変地異だったのかもしれない。白い羽も通りすがりの鳥が落としたもので、自分とは到底関係のないもののはずだ。黒の装束こそ、自分に相応しい。
しばらくして、ガルブレーナが再び旅立つ頃、キメラもようやく目を覚ました。「あの声はいったいなんだったんだ」と、彼女はキメラに尋ねた。
「あれはお主の体に潜む、最も古き、最も強き悪魔だ」
「お前よりも前に、私の体の中に棲んでいたのか?」
「もちろんだ。奴はとっくにお主の肉体と心の中に存在している。さもなくば、我はとっくにお主を『喰らっている』……『ガルブレーナ』に勝てたのも、奴のおかげだろう」
「そんな残像を吸収した覚えはない」
「必ずしも残像とは限らんさ……お主、本当に奴の名を知らんのか?」
「知らないな」
「……その無知ぶりにはいつも呆れる。今日まで生き延びていることが不思議なくらいだ……」
「余計な話はいい、教えろ」
「……エンジェル。奴の名は、エンジェルだ」
かつての少女は、今や冷酷な大人へと成長した。その体は傷にまみれ、服はボロボロであったが、そこから零れ出る殺気だけでも、無数の
だがそんな彼女であっても、あの鋼鉄の体の前では、いまだ小さな存在にすぎなかった。デュラハン――この地を征服する首無しの騎士。奴は、何の前触れもなく現れた。
一度刃を交えた後、ガルブレーナはあることに気づく。自分の「黒潮感知」の力が通用しないことと、その理由に。奴の周波数はあまりにも強大であり、それは
彼女はとっくに
逃げるべきか?彼女は何度もそう考えたが、同時に気づいてもいた。数百メートル後方には、必死に逃げる親子の姿があることを。自分が一秒でも敵を足止めできれば、二人の生存率が上がる。その先で彼女たちは、数キロ離れた部族にこの危機を伝え、避難を促すだろう。やがてはさらなる援助を呼び寄せ、この怪物の蹄を文明へ踏み入らせまいとするはずだ。自分がここに立っている限り、希望は皆に届く。もはや迷いなどなかった。これは勝てるかどうかの問題ではない。ここで立ち向かう以外に、道はないのだ。
彼女は死を恐れてはいなかった。ただ、ここで終わってしまうことが悔しかった。ハルピュイアの鋭い翼はすでに折れ、頼れるものは「ガルブレーナ」の僅かに残る業火だけ。誰もいない戦場で、彼女はもはやこれ以上の憎しみを吸収できなくなっていた。
「この炎を燃やす方法は知っているはずだよね」
幼い声が、ふと彼女の頭の中で響いた。
「ガルブレーナが、生まれながらに憎しみの炎を糧としているなら……」
「自分自身を憎め」
「その弱さを、その無力さを、その迷いを……」
「『炎魔』の炎が足りなければ……残りの炎で自身を燃やせ」
「『魔眼』が奴の体を貫けないと言っても……自分の『目』を信じろ」
声の主が分からずとも、その言葉は間違いなく彼女を導いていた。自分自身の判断を信じろ……今までそうしてきたように。
憎しみと炎が彼女の指先から同時に立ち上り、傷口に火が灯る。僅かであったが、自らの血と肉を燃やすには十分だった。
デュラハンの巨剣が再び襲いかかる。それを受け止める力はあったが、彼女は正面からの戦いを選ばなかった。そして首の穴から、空虚な鎧の内部へと飛び入った。
一瞬にして、中で燃え盛っていた炎に呑まれるも、彼女の予想は的中していた。こここそが奴の弱点――その内部の炎は脆弱で、ガルブレーナの炎には遠く及ばなかったのだ。
二つの炎が激しくぶつかり合い、巨体の中から轟音が轟く……やがて、すべてが静寂へとかえっていった。
どれだけの時間が経ったのかは分からない。ガルブレーナは、あの親子に抱きかかえられながら目を覚ました。
自分は助かったのかと、ガルブレーナは安堵する。彼女は指先に再び炎を起こし、自らを燃やそうとした――それは、同じ技をもう一度使えることに対する喜びだった。
だが幸いにも、親子に止められ、その指を下ろすことになる……あの首無しの騎士はすでに姿を消していたのだから。後から聞いた話では、援助が駆け付けた時、燃えるような金色の夜明けが空の彼方に現れ、ガルブレーナはただ一人、黄砂の上に倒れていたのだという。そして彼女自身も、人に指摘されてはじめて、自分の身に起きた変化を悟った。デュラハンの内部での戦いに彼女は勝利し、奴の周波数はすでに彼女の肉体と融合していたのだ。首無しの騎士の再生能力は彼女の死滅しかけた体を回復し、古き傷跡さえも癒やしていた。不死の炎魔――その名は、いまや名実ともに彼女のものとなった。しかし、彼女にはまだ生きているという実感はなかった。ただ、同じ技をこれから何度も使えるようになったことだけは知っていた。
ボロボロだった服もひどく焼かれてしまい、地に落ちた白い羽で新しい服を編もうとする者もいたが、彼女は自分の肩の黒い羽を見せながら、「このままでいい」と断った。
デュラハンも眩い黄金色が怖いのかと彼女は考えた。その金色の夜明けは誰がもたらしたのか、彼女には知る由もなかった。単なる天変地異だったのかもしれない。白い羽も通りすがりの鳥が落としたもので、自分とは到底関係のないもののはずだ。黒の装束こそ、自分に相応しい。
しばらくして、ガルブレーナが再び旅立つ頃、キメラもようやく目を覚ました。「あの声はいったいなんだったんだ」と、彼女はキメラに尋ねた。
「あれはお主の体に潜む、最も古き、最も強き悪魔だ」
「お前よりも前に、私の体の中に棲んでいたのか?」
「もちろんだ。奴はとっくにお主の肉体と心の中に存在している。さもなくば、我はとっくにお主を『喰らっている』……『ガルブレーナ』に勝てたのも、奴のおかげだろう」
「そんな残像を吸収した覚えはない」
「必ずしも残像とは限らんさ……お主、本当に奴の名を知らんのか?」
「知らないな」
「……その無知ぶりにはいつも呆れる。今日まで生き延びていることが不思議なくらいだ……」
「余計な話はいい、教えろ」
「……エンジェル。奴の名は、エンジェルだ」
長い長い帰還
かつて彼女は、自分に銃口を向けたことがある。しかしそれは、彼女の見る夢の中ではない。
この果てしない暗闇の中で、無数の黒潮の造物を斬り倒した彼女は、疲れ果て、黒い潮水の上に重く倒れた――またしても、運命が編み出した網に落ち、己を見失っていたのだ。
「ここで倒れるわけにはいかない……まだまだやるべきことがある。あの人と約束したのだ……決してこんなところで……」
再び目を開けると、ファビアヌム の光景が彼女の目の前に浮かんできた……彼女のライバルが、仲間が、そして家族が……暖かく微笑みながらゆっくりと近づいてくる。
また鳴式 が創り出した幻なのか?レビヤタンは、自分が「幸せになる」ことを恐れているとでも?それとも、「自分に見合わない幸福」を恐れていると思っているのか?これほどに暗い力を持つ人間が、どのようにして他人から注目され、受け入れられ、愛されるというのだ……
昔であれば、この問いに思いを巡らせていたかもしれない。しかし今の彼女には、もう答えなど必要なかった……その銃口の先が何であるのか、それさえ知っていれば十分だった。
彼女は身を起こし、弾丸を装填し、銃口を目の前にいる「かつての者たち」へと向けた……
「はははっ!小娘、どうやら、己の刃を鋭く研げたようだな」
夢にしては、フェロおじさんの笑い声はあまりにも生々しかった……しかし、人々の体に残る黒潮の痕跡を見た途端、彼女は理解した。自分を救うためにほとんどすべての周波数を捧げてくれた人たち、そして本来ならレビヤタンの眷属となるはずだった魂たちは、十数年もの間、侵蝕に抵抗し続けていた。彼らは今なおレビヤタンの「贈り物」を受け取っておらず、黒潮の最奥へ放逐され、最も深い苦しみと苛みを耐え続けてきた。
彼女は言葉が出なかった。ここまでの道のりで、気を緩めたことも、戸惑ったこともあった。もっと頑張っていれば、より早く力を得て、ここへと戻り、もっと多くの人を救えたはずだ……
「狩人よ、もう充分よくやった」
「胸を張って、自由に、誇り高く生きていくのよ。それが、私たちの願い」
「あなたはいつまでも私たちの誇りよ」
誰もが笑顔で彼女に応えた。そして母親の言葉で、彼女は答えを得た、ずっと聞きたかったけど、聞けなかった質問の答えを。
「でもねエンジェル、あなたは知ってるはず。ここは私たちの家ではないの」
「そろそろ旅立つ時よ、あなたを待っている人がいるのでしょう?」
「僕を殴ったあの時と同じみたいに、レビヤタンの奴をぶん殴ってやれ!僕たちの分まで、さらっと復讐を果たしてこい!」
「さようなら、エンジェル。今度こそ、本当のお別れだね」
「どうか忘れないで、私たちはいつまでもあなたと共にいるから」
最後の最後で、彼女は父親が大げさにブイサインをしてくれたのを見た。
このバカ父――彼女は心の中でそう呟いた。父がそうした意味を、彼女は分かっていた。抱き合うな、振り返るな、と。それは慰めでもあり、別れでもある。
魂たちは次第に薄れていき、やがて光の粒となり、一瞬だけ彼女に方向を示してくれた……これが魂たちが現れた理由だ。これ以上彼女に贈れる力はない。それでも、もう一度彼女を救おうとしたのだ。
これがレビヤタンの企みなのか?何とも滑稽な――黒潮 の力で彼女を永遠の暗闇に引きずり下ろそうとしたが、結果として、かつてできなかった別れを補う形となっていた。
ファビアヌム は彼女の目の前から遠ざかり、瓦解し、消えていく……もう彼女はあの女の子ではなくなっている。かつての幸せに、彼女はもう溺れたりしない。心の中にまだ柔い部分があるのかもしれないが、今以上に自分の刃を鋭く研がなければならない。
だから、もう迷うことなく、彼女は暗闇へ向かって歩き出した。
再び、キメラ が彼女の前に立ちふさがった。
もとより、気性の荒い残像が人間性を理解できるなど、彼女は期待したことがなかった。ましてや、平等で友好的な関係を築けるなど……ただ願うのは、自分の目標が明確な時には、厄介事を起こさず、無用に挑発して回らないでほしい、ということだけ。そのために、彼女がなすべきことはただひとつ。それは、残象を手なずけることだった。
決死の戦いに備えていた彼女だったが……奇妙なことに、今回のキメラは驚くほどおとなしかった。何も言わず、ただ炎の中に身をおいていた――それはエンジェルの炎であり、彼女自身の炎でもあった。
過去の多くの謎が、今、ようやく解かれる。
「こんな炎ぐらいでもうダメなのか?」
「戯れ言を。お主こそ死ぬなよ。我らの狩猟はここで終わるわけにはいかんからな」
「似たような危険は、何度も乗り越えてきたじゃないか?」
この世に狩れない悪魔は存在しない。鳴式とて、そのうちの最も強い一つでしかない……それに、彼女はもう一人で戦っているわけではない。
キメラはこれ以上何も言わず、道を開けた。そしてその後ろにあるのは、彼女が今まで呑み込んできた、無数の残像の姿だった。
かつて彼女は彼らと生死を賭けた戦いを繰り広げ、無数の夢の中で何度も戦った。それはただ、彼らから力を借りるためだけに……だが今は……
彼女は残像たちの存在を無視し、そのまま通り過ぎていった。どこまでも続いていく炎の道が、彼女の足元で広がっていく。そしてその輝かしい炎の道の両側には、かつて数多の命を脅かした造物たちが膝をつき、まるで主の遠征を見送るかのように振る舞っていた。
奴等は自分よりも遥かに強い悪魔に恐れをなしているのか、それとも……何か別の、恐ろしい存在に怯えているのか。
どちらでも構いやしない――彼女の力はとうに奴等を凌駕している。誰にも認められる必要もなく、ただ従えばいいだけのこと。
そして彼女は、その悪しき力を使って、さらに多くの悪魔を狩り続けるだろう――幼き日に立てた、あどけない誓いのように。それは死に至るまで変わることはない。
自分自身のために、そして、もう帰らぬ人々のために。ファビアヌムの悲劇を二度と繰り返さないように。そして自らの苦難を、再び背負うことのないように……
彼女の狩りは、死ぬまで終わりを迎えることはない。
この果てしない暗闇の中で、無数の黒潮の造物を斬り倒した彼女は、疲れ果て、黒い潮水の上に重く倒れた――またしても、運命が編み出した網に落ち、己を見失っていたのだ。
「ここで倒れるわけにはいかない……まだまだやるべきことがある。あの人と約束したのだ……決してこんなところで……」
再び目を開けると、
また
昔であれば、この問いに思いを巡らせていたかもしれない。しかし今の彼女には、もう答えなど必要なかった……その銃口の先が何であるのか、それさえ知っていれば十分だった。
彼女は身を起こし、弾丸を装填し、銃口を目の前にいる「かつての者たち」へと向けた……
「はははっ!小娘、どうやら、己の刃を鋭く研げたようだな」
夢にしては、フェロおじさんの笑い声はあまりにも生々しかった……しかし、人々の体に残る黒潮の痕跡を見た途端、彼女は理解した。自分を救うためにほとんどすべての周波数を捧げてくれた人たち、そして本来ならレビヤタンの眷属となるはずだった魂たちは、十数年もの間、侵蝕に抵抗し続けていた。彼らは今なおレビヤタンの「贈り物」を受け取っておらず、黒潮の最奥へ放逐され、最も深い苦しみと苛みを耐え続けてきた。
彼女は言葉が出なかった。ここまでの道のりで、気を緩めたことも、戸惑ったこともあった。もっと頑張っていれば、より早く力を得て、ここへと戻り、もっと多くの人を救えたはずだ……
「狩人よ、もう充分よくやった」
「胸を張って、自由に、誇り高く生きていくのよ。それが、私たちの願い」
「あなたはいつまでも私たちの誇りよ」
誰もが笑顔で彼女に応えた。そして母親の言葉で、彼女は答えを得た、ずっと聞きたかったけど、聞けなかった質問の答えを。
「でもねエンジェル、あなたは知ってるはず。ここは私たちの家ではないの」
「そろそろ旅立つ時よ、あなたを待っている人がいるのでしょう?」
「僕を殴ったあの時と同じみたいに、レビヤタンの奴をぶん殴ってやれ!僕たちの分まで、さらっと復讐を果たしてこい!」
「さようなら、エンジェル。今度こそ、本当のお別れだね」
「どうか忘れないで、私たちはいつまでもあなたと共にいるから」
最後の最後で、彼女は父親が大げさにブイサインをしてくれたのを見た。
このバカ父――彼女は心の中でそう呟いた。父がそうした意味を、彼女は分かっていた。抱き合うな、振り返るな、と。それは慰めでもあり、別れでもある。
魂たちは次第に薄れていき、やがて光の粒となり、一瞬だけ彼女に方向を示してくれた……これが魂たちが現れた理由だ。これ以上彼女に贈れる力はない。それでも、もう一度彼女を救おうとしたのだ。
これがレビヤタンの企みなのか?何とも滑稽な――
だから、もう迷うことなく、彼女は暗闇へ向かって歩き出した。
再び、
もとより、気性の荒い残像が人間性を理解できるなど、彼女は期待したことがなかった。ましてや、平等で友好的な関係を築けるなど……ただ願うのは、自分の目標が明確な時には、厄介事を起こさず、無用に挑発して回らないでほしい、ということだけ。そのために、彼女がなすべきことはただひとつ。それは、残象を手なずけることだった。
決死の戦いに備えていた彼女だったが……奇妙なことに、今回のキメラは驚くほどおとなしかった。何も言わず、ただ炎の中に身をおいていた――それはエンジェルの炎であり、彼女自身の炎でもあった。
過去の多くの謎が、今、ようやく解かれる。
「こんな炎ぐらいでもうダメなのか?」
「戯れ言を。お主こそ死ぬなよ。我らの狩猟はここで終わるわけにはいかんからな」
「似たような危険は、何度も乗り越えてきたじゃないか?」
この世に狩れない悪魔は存在しない。鳴式とて、そのうちの最も強い一つでしかない……それに、彼女はもう一人で戦っているわけではない。
キメラはこれ以上何も言わず、道を開けた。そしてその後ろにあるのは、彼女が今まで呑み込んできた、無数の残像の姿だった。
かつて彼女は彼らと生死を賭けた戦いを繰り広げ、無数の夢の中で何度も戦った。それはただ、彼らから力を借りるためだけに……だが今は……
彼女は残像たちの存在を無視し、そのまま通り過ぎていった。どこまでも続いていく炎の道が、彼女の足元で広がっていく。そしてその輝かしい炎の道の両側には、かつて数多の命を脅かした造物たちが膝をつき、まるで主の遠征を見送るかのように振る舞っていた。
奴等は自分よりも遥かに強い悪魔に恐れをなしているのか、それとも……何か別の、恐ろしい存在に怯えているのか。
どちらでも構いやしない――彼女の力はとうに奴等を凌駕している。誰にも認められる必要もなく、ただ従えばいいだけのこと。
そして彼女は、その悪しき力を使って、さらに多くの悪魔を狩り続けるだろう――幼き日に立てた、あどけない誓いのように。それは死に至るまで変わることはない。
自分自身のために、そして、もう帰らぬ人々のために。ファビアヌムの悲劇を二度と繰り返さないように。そして自らの苦難を、再び背負うことのないように……
彼女の狩りは、死ぬまで終わりを迎えることはない。
ガルブレーナ のボイスライン
心の声・その一
この「魂」はキメラ に蝕まれている。だから残像 を狩り、周波数を摂り続けなければならない。たとえ「契約」を結んでいなかったところで、奴はあらゆる手段で私から全てを奪う。だが、そうならないように自らこの道を選んだ……炎に焼かれないようにする最も良い方法は、炎の中で生きること。そして今、「地獄」の炎を浴びた血肉は、それ以上に熱い炎と化している。キメラだけではない。他の偉そうにしていた残像も、炎の中の「生活」に慣れなくてはいけなくなった。
心の声・その二
私は黒潮 の力を駆使して「業火」を身に纏い、「悪魔」を食料にしている。この話を聞いて、お前は恐れをなしたか?それとも憎しみを抱いたか?私の力を古の呪いと呼び、先に待ち受けるのは闇だけだと言う人もいた。だが、私はこれを「誓い」だと思っている。この先も自分のやるべきことを理解しながら、進み続けるつもりだ。他人が何を言おうと、それは変わらない。
心の声・その三
多くの人に「ガルブレーナ」と呼ばれている。もう慣れてしまった。この名前を私は、「二度目の命」だと思っている。それに、都合良く「悪魔」になるのも悪くない。「エンジェル」の名前は……もちろん、一度も忘れたことはない。私の両親は、ラグーナからセブン・ヒルズに流れ着いた。それで、「天使」の名を私に授けたらしい。しかし、これまでの旅先で「悪魔」には見慣れているが、天使には会っていない。天使と悪魔は対の存在。つまり、人前に現れた場合、「面倒事」が生じているはずだ。天使の本当の姿は、人々が想像しているほど美しくないのかもしれない。威圧的な姿をしている可能性もある……脅威から遠ざけるために、あえて。まぁ、こう考えてみると、自分の本名を意味のないものだとは思えない。お前の目に映る私の姿は、果たしてどちらなのか。
心の声・その四
ここまでの道のりで、私は多くの災難を止めてきた。同時に多くの災難の訪れを見届けてきた……天災だけでなく、人災もあった。この世界は、常に素晴らしいものとは限らない。だからこそ、災難に見舞われた人々の真摯な感情は、輝いて見える。私は「帰らぬ人」のために弾丸を放つ……お前がそうしてきたように。私よりも先に、似た行動を取っていた人はいる。きっと、これからも誰かが続けるだろう。
心の声・その五
好きなこと
空の開けた視界は観察に最適だ。獲物が現れたら、不意を突き高速で狩りを開始する。そうやって……空から獲物を俯瞰する感覚が好きだ。それに、上空なら人々から距離を保てるだろう……私は必要な時にだけ、「必要な恐怖」をもたらすようにしている。
悩み
ガルブレーナ:私はキメラ の出現をコントロールできるが、少しでも気を緩めると、いつも思いがけないところから……
キメラ:今日は口数が多いな、こんな姿は初めて見るぞ。
ガルブレーナ:……出てきてしまう。ほら、こんな風に……息が合う人に出会えば、会話も増えるだろう。
キメラ:我と会話をすることも少なくないが、それは息が合うからか?
ガルブレーナ:それ以前に、お前は「人」ではない。
キメラ:認めろ――お主も孤独が怖いのだろう。
キメラ:今日は口数が多いな、こんな姿は初めて見るぞ。
ガルブレーナ:……出てきてしまう。ほら、こんな風に……息が合う人に出会えば、会話も増えるだろう。
キメラ:我と会話をすることも少なくないが、それは息が合うからか?
ガルブレーナ:それ以前に、お前は「人」ではない。
キメラ:認めろ――お主も孤独が怖いのだろう。
好きな食べ物
かき氷やアイス、ジェラートくらいだ。体の中で常に燃える「業火」を、冷たい物が抑えてくれる……それに、甘味も感じられるからな。
嫌いな食べ物
最初は生きるために残像 を「食べていた」。だが、今は強くなるために「食べている」……残像は食べ物じゃない、と?そうか、普通の人が食べる物に限れば、特に選り好みはしない。
夢
しっかり生きて、死ぬことだ。もし「死後の世界」が存在するのなら、私の願いはただひとつ……「あの人々」と再会する時、胸を張って言いたい。「私の人生は素晴らしかった。やりたいことをほとんど終え、悔いは残っていない」と。だからこそ、炎が燃え尽きるまで、何度でも死を乗り越える――そして、この烈火をもって、いずれ訪れる死に意地を見せてやろう。
伝えたいこと・その一
私はセブン・ヒルズで生まれた。そして、セブン・ヒルズで学んだ戦闘技術を頼りに、今も生きている。ただ、多くの武器が「黒潮 の力」に耐えきれず、蝕まれては砕け散っていった。それで長い間、私は素手で残像と殺し合いをしてきたのだ……この猟銃を手に入れるまでは。コイツは「黒潮の力」にも耐えられる。キメラ の口から「取り出す」時は、骨が折れたものだ――そう、この宝はキメラが隠し持っていたんだ。
伝えたいこと・その二
私の過去なら、黒潮の中で見たはず。あれ以外は、狩るか狩られるかの毎日。倒されようと、何度でも起き上がる……獲物を倒し切るまで。肩に落ちた灰を払い、次の狩りへ向かう途中で様々な人に出会ってきた……あぁ、忘れるところだった。そうだ……どこかでアイスも買っていたな。
オーガスタについて
オーガスタとは……幼馴染のようなものだ。あの頃の私は、いつも木の下で意味の分からないことばかり考えていた。彼女は彼女で、「英雄王になる」と叫びながら剣を振り、私に勝負を仕掛けてきていたな……そうやって、私たちはファビアヌム の川で勝負をして、疲れたら横になり、冷たい水を体で感じていたものだ……しかし、時の流れに応じて、多くのものが変化した。幸い、悪いことばかりではない。オーガスタはセブン・ヒルズ人が夢に描く理想の王となっているのだから。
カルテジアについて
「黒潮 の記憶」のおかげで、私はカルテジアの存在を知った。私は彼女が歳主の共鳴者なのか、それとも鳴式の共鳴者なのか探ってこなかったが、「狂気ながら揺るぎない返事」をしてくれた。正義の騎士は、高い塔に閉じ込められているべきではない。レビヤタンがもたらす悪夢は、あまりにも長すぎた……だが、リナシータ の闇が払われた今、彼女には自分の自由と夜明けを求めてもらいたいと思っている。
アールトについて
カカロについて
ネオユニオンで狩りをしていた時、カカロと同じ獲物に目をつけた記憶がある――彼らの目標は残像を倒すこと。だが、私は吸収さえできれば良かった。少々誤解もあったが、楽しい協力関係だったな。一度、傭兵団に誘われたことを覚えている。集団で行う狩りも、生き方のひとつだ、と言われた。でも私には……やはり、一人のほうが性に合っている。
誕生日祝い
誕生日おめでとう。今年も「時間」に命を奪われず、無事に生き延びたことを祝うよりも、「グッド・ハンティング」の一言を贈ろう。時間は有限だからな。そうだ、このネックレスをお前に渡しておく。護符とでも思っておいてほしい。ここには私の物語が込められている。この地味な金属バッジは、弾丸から心臓を守ってくれた。巻き貝は滅んだ文明の遺物だが、今も文明の共鳴音が聞こえてくる。そして、とある戦争ロボットの「涙」は、凍てついたガラスを陽の光に通して錬成したもの……ほかの物語も、気になるなら全部教えてやろう。来年は、もっと多くの飾りつけと一緒に。
余暇・その一
全弾装填完了、いつでも撃てる。
余暇・その二
台詞なし。
余暇・その三
ガルブレーナ:大人しくしていろ。
自己紹介
ガルブレーナ、デビルハンター、永炎の悪魔……好きに呼んでくれ。私にとって大切なことは、ただひとつ――獲物の居場所だけだ。
最初の音
次の獲物は誰だ?
チームに編入・その一
ガルブレーナだ、狩りなら任せてくれ。
チームに編入・その二
この銃声を響かせる。
チームに編入・その三
私ならここだ。
突破・その一
こんな力の上げ方もあったとは……感謝する。
突破・その二
……私の力を借りたいだけなら、余計な気を回す必要はない。
突破・その三
ふっ。それは、つまり……「悪魔」と契約を結ぶ気か?
突破・その四
私には、私の進むべき道がある……この長くて暗い危険な道に、誰かを巻き込む気はない。いつまでも一緒にいられるとは限らん。それに「悪魔」は、人の「魂」を代償として喰らう……そんな不公平な契約だとしても……お前は結ぶのか?
突破・その五
この血を手のひらに垂らせば……これで、「血の契約」は完了した。
通常攻撃・1
ガルブレーナ:悪には悪を。
キメラ :弱肉強食だ!
通常攻撃・2
ガルブレーナ:業火を燃やす。
キメラ :燃やし尽くせ!
通常攻撃・3
ガルブレーナ:起爆。
キメラ :地獄へ墜ちろ!
重撃・1
存分に喰らえ。
重撃・2
償いの時だ。
共鳴スキル・1
ロックオン。
共鳴スキル・2
捕食する。
共鳴スキル・3
刈り取ろう。
共鳴スキル・4
この身に煉獄を……
共鳴スキル・5
火を纏う……
共鳴スキル・6
燃え盛る業火よ……
共鳴解放・1
ガルブレーナ:私の手で、地獄の門を開く!
キメラ :浄化しろ!
共鳴解放・2
ガルブレーナ:そろそろ終わりの時間だ。
キメラ :食い尽くしてやる。
共鳴解放・3
ガルブレーナ:葬ってやろう。
キメラ :宴の始まりだ!
共鳴解放・4
ガルブレーナ:私が示そう……
キメラ :地獄の扉を!
変奏スキル・1
逃がしはしない。
変奏スキル・2
捉えた。
変奏スキル・3
悪魔の登場だ。
回避・1
隙を見せたな。
回避・2
チャンスは一度きり。
パリィ・1
倍にして返そう。
パリィ・2
大当たりだ。
パリィ・3
これで終わりか?
ダメージ・1
ガルブレーナ:……もっとだ。
キメラ :痛みで目を覚ませ。
ダメージ・2
狙いを定め直す。
重傷・1
ガルブレーナ:……この程度か。
キメラ :傷を舐める時間はないぞ。
重傷・2
ガルブレーナ:……やってくれたな。
キメラ :怒りが蠢いているぞ。
重傷・3
ガルブレーナ:……死ぬまで、休むつもりはない!
キメラ :狩猟は永遠だ!
戦闘不能・1
ガルブレーナ:死を越えて……
キメラ :いつか必ず、戻るのだ……
戦闘不能・2
ガルブレーナ:まだ、燃え尽きていない……
キメラ :我らは、決して逃げん……
戦闘不能・3
ガルブレーナ:狩猟は……
キメラ :いつまでも……
音骸スキル・召喚
行け。
音骸スキル・変身
カモフラージュだ。
敵に遭遇
ガルブレーナ:狩られに来たのか。
キメラ :我は飢えている。
滑空
意外と快適だ。
スキャン
隠れる場所などない。
ダッシュ
狩りの手は止まらない。
補給獲得・1
収穫の日だ。
補給獲得・2
狩人の報酬だ。
補給獲得・3
悪くない、もらっていこう。