情報
今汐 VA
中国語: CV:Jiang Yue
日本語: CV:青山吉能
韓国語: CV:Park Ha Jin
英語: CV:Anna Devlin
今汐 のフォルテ調査報告
共鳴力
冬尽きて、春息吹く
共鳴評価報告
測定材料:【周波数スペクトル報告RA2100-G】
共鳴時間の特定に失敗。幼少期に「角」と共感できるという能力の兆しが判明した。
音痕は背中にあり、共鳴発生後、身体に一部の変異が見られる。共鳴能力使用時、頭頂に龍の角のような結晶が出現する。
淡い色の光を操ることが可能。その光は、歳主の力に近い性質を示した。
被検体の共鳴能力は、希少な成長性があり、いずれ時間を戻すことも可能と推測。
共鳴スペクトル特定結果:記録にある歳主の周波数に近い。テストで強い共振反応を示した。歳主の特殊性が故、共鳴源の完全特定は不可。
ラベル曲線に収束がなく、明らかな周期性の特徴を示す。検査結果から先天性の共鳴者と判断する。
オーバークロック診断報告
波形は楕円状、時間領域表示は安定。異常波形なし。
診断結果:オーバークロック域は極めて広く、安定性も極めて高い。オーバークロックの可能性がほとんどないと判断。オーバークロック歴はなし。
定期検診推奨。メンタルケアの必要なし。
今汐 の大切なアイテム&好物
小龍包
表面に銀木犀の粉と砂糖をまぶされた、今汐の手作り小龍包。
カスタード、ハスの実ペースト、あずき……味の種類も様々である。
「もう少しで会える。漂泊者の口に合うといいな」
やることリスト
令尹は忙しい毎日を送っている。夜帰の配置、天工の事務、巡尉の巡回……どれも彼女の指示なくしては回らない。
辺庭の机はいつも書類に埋もれている。しかし、書類上のやり取りだけでなく、今汐は現場に臨み、市民の訴求を直接聞くことを好む。
そのため、華胥研究院に頼んでデジタル版のやることリストを作成してもらった。これがあれば外にいる時でも書類の処理ができる。
龍の鱗
幼い頃、今汐は魘されることが多かった。
夢で海に溺れたことがある。彼女は波に巻かれ、海の底へ沈んでいく。その時、浮木が彼女のそばに漂流してきた。彼女はそれを必死に掴み、遡る潮と一緒に岸辺に戻ったのだった。
目が覚めた後、彼女の手にあったのは木ではなく、一枚の鱗。よく見ると、歳主のそれと似ている鱗……
今汐 のストーリー
令尹の名を以て
今州城は辺境の街である。辺境といえば、山々に囲まれた不毛の地。
ある今州を訪れたことのない旅商人が今州へ行く注文を受け、「あんな辺境にいくほど丈夫な体ではない」と辞退しようとしていた。
しかし、先輩はただ「騙されたと思って、行ってみればわかる」と笑った。
旅商人はしぶしぶ今州への旅路につく。二人は不毛の荒野も、靄の森もくぐり抜けて、ある山紫水明の地にたどり着いた。
森を出ると、高く聳える城門が目に映る。検問の兵士は文書を確認して丁重に二人を街に入れてくれた。
賑やかで秩序正しく動作しているこの街に、「どこが辺境だ」と、旅商人は驚いた。美しい街並みも、充実した施設も、内陸の都会に遜色がない。特に印象深かったのは、六羨茶屋の工夫茶、攀花食堂の魚料理、今州劇場のヒーローショーだった。今州市民の情熱に感染したのか、旅の疲れもあっという間に一掃された。
「今州ってこんなにも豊かで住みやすい街だったっけ?こんな場所でこれほどの街づくり、なかなか大変じゃない?」
「そういえば大変だったな。でも令尹がいつも言うように、環境とか『残像』云々とかで気が病むより、とにかく自分の思い描いた通りの幸せを目指すこと。制御できない不幸はあっても、幸せは自分の両手で作れるもんだ」
「簡単そうに聞こえるけど、一城揃って楽観的でいられるなんて、なかなか大したもんじゃないか」
「いや。それほど難しくはないぞ。令尹の指示に従うだけでいいんだ」
「大口を叩くだけではなく、ちゃんと行動に移して形にしてくれるなんて、なかなかの古参か?あんたとこの令尹」
「古参?いや、全然、まだ10代の少女なんだ!」
「な、なんだと!?」
ある今州を訪れたことのない旅商人が今州へ行く注文を受け、「あんな辺境にいくほど丈夫な体ではない」と辞退しようとしていた。
しかし、先輩はただ「騙されたと思って、行ってみればわかる」と笑った。
旅商人はしぶしぶ今州への旅路につく。二人は不毛の荒野も、靄の森もくぐり抜けて、ある山紫水明の地にたどり着いた。
森を出ると、高く聳える城門が目に映る。検問の兵士は文書を確認して丁重に二人を街に入れてくれた。
賑やかで秩序正しく動作しているこの街に、「どこが辺境だ」と、旅商人は驚いた。美しい街並みも、充実した施設も、内陸の都会に遜色がない。特に印象深かったのは、六羨茶屋の工夫茶、攀花食堂の魚料理、今州劇場のヒーローショーだった。今州市民の情熱に感染したのか、旅の疲れもあっという間に一掃された。
「今州ってこんなにも豊かで住みやすい街だったっけ?こんな場所でこれほどの街づくり、なかなか大変じゃない?」
「そういえば大変だったな。でも令尹がいつも言うように、環境とか『残像』云々とかで気が病むより、とにかく自分の思い描いた通りの幸せを目指すこと。制御できない不幸はあっても、幸せは自分の両手で作れるもんだ」
「簡単そうに聞こえるけど、一城揃って楽観的でいられるなんて、なかなか大したもんじゃないか」
「いや。それほど難しくはないぞ。令尹の指示に従うだけでいいんだ」
「大口を叩くだけではなく、ちゃんと行動に移して形にしてくれるなんて、なかなかの古参か?あんたとこの令尹」
「古参?いや、全然、まだ10代の少女なんだ!」
「な、なんだと!?」
願い事をする風習
最初は、自分自身の人柄より、歳主の共鳴者、歳主に選ばれた身として、今汐は人々に信頼されていた。
これほど不利な局面において、どのように今州をよりよい未来へ導くのか。この課題は令尹の腕が試される。うまく自分の力でやり遂げれば、市民から信頼が得られるだろう。
しかし、市民の目に閃く不信感より、彼らの憔悴した顔の方が気になる。それは先の見えない生活苦に苛まれ続け、やがて希望をも失った疲労だ。
今州の未来は、今州の民が為す。故に最も大事なのは、市民を無気力な状態から抜き出し、彼らの未来への希望を取り戻すこと。
希望にはそれを託す器が必要だ。それが自分であるかどうかは構わない。
その器を作るべく、ある村の再建において、令尹の少女は民に「歳主」による「奇跡」を見せた。その村では、残像潮は退いたものの、周波数の乱れが異常気象を起こし、暗雲が垂れ込める空と対照的なのは、何日も融けない雪だった。
「願いを述べるがよい」。少女は言った。最初は誰も返事しなかった。静寂を破ったのは、一人の子供のくしゃみと「暖かくなってほしい」という小さな願い。
それを聞くと、村民に囲まれた今汐は、龍鱗を手に捧げ持ち、「その願い、歳主に届ける」と目を閉じて頷く。
急に、少女の頭頂に龍の角が出現した。それと同時に、歳主の形をする雷が暗雲を切り裂いて、一瞬で積もった雪を溶かす。春の息吹が村に吹き込まれた。
「さい、歳主が……降臨した!」と村人が騒いた。その龍の形をする雷は、人々の目に希望を再び灯した。
歳主に願い事をするという風習は、あっという間に今州に広まった。
辺庭に集った願いは令尹が聞き届ける。
彼女は願いの欠片をかき集め、その本質を抽出し、実現可能な形にした。
「残像の侵入が心配」——桃祈を天工の防事科事務長に任命し、城壁の改修にも力を入れる。
「戦争が終わって、パパがやはくおうちに帰ればいいな」——対残像用黒石武器と保護材の材料工学の研究を並行し、軍隊に最新の矛と盾を武装させた。
「野盗が城内に紛れ込んで怖いよ」——巡寧所を増設し、巡尉の採用も増やす。「内には巡尉、外には夜帰」というシステムを構築する。
三年も経たず、城壁の改修が完成、新型武器も実装、残像潮が遠くまで退いて、今州城は徐々に軌道に乗りつつあった。
「歳主の願い」は、単なる令尹の少女による芝居にすぎないだと、人々が徐々に気付いた。
問題の現場には、いつもその解決に奔走する令尹の姿がいるからだ。
休日の深夜まで灯されている辺庭の事務室の明かりの下には皆の願いの実現に思慮を巡らす指導者がいるからだ。
令尹は龍鱗を持ていなくとも、氷を穿つ雷を操り、止まった時間を動かして春を呼び込む力を使えるからだ。
……
気付いたとしても、人々はそれを口にせず、令尹との黙約として守っている。
「令尹にもたまには息を抜いてほしい。例えば皆と一緒に芝居を観るとか」これが今年で最後の願いだ。
今汐はその願いに微笑んだ。彼女はファイルを閉じて窓辺に身をまかせる。窓の外、今州劇場の方から伝わる「龍女と願い事」婉曲で伸びやかな歌声に目を閉じて耳を傾ける。
これほど不利な局面において、どのように今州をよりよい未来へ導くのか。この課題は令尹の腕が試される。うまく自分の力でやり遂げれば、市民から信頼が得られるだろう。
しかし、市民の目に閃く不信感より、彼らの憔悴した顔の方が気になる。それは先の見えない生活苦に苛まれ続け、やがて希望をも失った疲労だ。
今州の未来は、今州の民が為す。故に最も大事なのは、市民を無気力な状態から抜き出し、彼らの未来への希望を取り戻すこと。
希望にはそれを託す器が必要だ。それが自分であるかどうかは構わない。
その器を作るべく、ある村の再建において、令尹の少女は民に「歳主」による「奇跡」を見せた。その村では、残像潮は退いたものの、周波数の乱れが異常気象を起こし、暗雲が垂れ込める空と対照的なのは、何日も融けない雪だった。
「願いを述べるがよい」。少女は言った。最初は誰も返事しなかった。静寂を破ったのは、一人の子供のくしゃみと「暖かくなってほしい」という小さな願い。
それを聞くと、村民に囲まれた今汐は、龍鱗を手に捧げ持ち、「その願い、歳主に届ける」と目を閉じて頷く。
急に、少女の頭頂に龍の角が出現した。それと同時に、歳主の形をする雷が暗雲を切り裂いて、一瞬で積もった雪を溶かす。春の息吹が村に吹き込まれた。
「さい、歳主が……降臨した!」と村人が騒いた。その龍の形をする雷は、人々の目に希望を再び灯した。
歳主に願い事をするという風習は、あっという間に今州に広まった。
辺庭に集った願いは令尹が聞き届ける。
彼女は願いの欠片をかき集め、その本質を抽出し、実現可能な形にした。
「残像の侵入が心配」——桃祈を天工の防事科事務長に任命し、城壁の改修にも力を入れる。
「戦争が終わって、パパがやはくおうちに帰ればいいな」——対残像用黒石武器と保護材の材料工学の研究を並行し、軍隊に最新の矛と盾を武装させた。
「野盗が城内に紛れ込んで怖いよ」——巡寧所を増設し、巡尉の採用も増やす。「内には巡尉、外には夜帰」というシステムを構築する。
三年も経たず、城壁の改修が完成、新型武器も実装、残像潮が遠くまで退いて、今州城は徐々に軌道に乗りつつあった。
「歳主の願い」は、単なる令尹の少女による芝居にすぎないだと、人々が徐々に気付いた。
問題の現場には、いつもその解決に奔走する令尹の姿がいるからだ。
休日の深夜まで灯されている辺庭の事務室の明かりの下には皆の願いの実現に思慮を巡らす指導者がいるからだ。
令尹は龍鱗を持ていなくとも、氷を穿つ雷を操り、止まった時間を動かして春を呼び込む力を使えるからだ。
……
気付いたとしても、人々はそれを口にせず、令尹との黙約として守っている。
「令尹にもたまには息を抜いてほしい。例えば皆と一緒に芝居を観るとか」これが今年で最後の願いだ。
今汐はその願いに微笑んだ。彼女はファイルを閉じて窓辺に身をまかせる。窓の外、今州劇場の方から伝わる「龍女と願い事」婉曲で伸びやかな歌声に目を閉じて耳を傾ける。
民のために掲げる灯火
「内憂外患に悩むこの時局こそ、余の策にて導こう」と、いつも穏やかに笑う今令尹。
かの時、残像潮が大地を荒らし、それを食い止めるべく、兵士たちは前線へと赴いた。その家族は皆心配していた。前線へ赴いた身内の未帰還を。
民の苦痛をこれ以上増やしたくはない。皆の絶望を目にした令尹の少女はそう考えた。
人々を動揺させないため、令尹たるものは決して辛い顔を人前で見せてはいけない。
今州の民の苦痛と不安を一身に引き受けると、少女は決めた。
実績のない笑顔は、単なる偽善か、民の苦痛を知らない身分の高い者の印に過ぎない。だが、今汐の笑顔には、いつも民への思慮と献身が裏付けられている。
前方の戦場にいる夜帰の戦士たちは、熾烈な戦いを繰り返している。城内にもそれに見劣りしない戦争が起きている。
無音区には電波が届かない。前線にいる家族と連絡がつかなくて不安な市民のため、令尹は天工とブブ物流を連携して戦線への配送体制を強化させた。軍人への手紙ならブブ物流は配送料無料で届けてくれるし、天工の方も前線を連絡する仮設道路を舗装した。これにより、軍人との連絡ができた家族の不安が大幅に低下した。
戦死した兵士の家族の心には癒えぬ傷跡が残された。弔慰金だけでは決してそれを補うことができない。令尹は軍策府と天工の支持を得て、戦没者遺族へのせめてもの慰めとして、生活に支障をきたさない程に弔慰金の額を上げ、戦没者にも相応の誉れを追認する。兵士たちは誉れだけで戦場へ赴いたわけではないが、尊き命を捧げた以上、彼らの名は歴史に残るべきである。城壁の改修が終わり次第、令尹は早速鐘鳴広場の建設に取り掛かった。石碑は虎口採掘場産の最上級鉱石で作られて、雨風を浴びても1000年は保つ頑丈さを誇る。鐘鳴広場の落成の伴い、人々のやり場のない悲しみはやがて安置の場を得た。
民の心情に関わることなら、令尹はいつも第一線を走る。彼女の温かみのある笑顔を見ると、より良い未来への期待も高まる。
彼女はまさしく戦禍に苛まれる人々を慰める春風、戦という真冬を照らす灯火。
かの時、残像潮が大地を荒らし、それを食い止めるべく、兵士たちは前線へと赴いた。その家族は皆心配していた。前線へ赴いた身内の未帰還を。
民の苦痛をこれ以上増やしたくはない。皆の絶望を目にした令尹の少女はそう考えた。
人々を動揺させないため、令尹たるものは決して辛い顔を人前で見せてはいけない。
今州の民の苦痛と不安を一身に引き受けると、少女は決めた。
実績のない笑顔は、単なる偽善か、民の苦痛を知らない身分の高い者の印に過ぎない。だが、今汐の笑顔には、いつも民への思慮と献身が裏付けられている。
前方の戦場にいる夜帰の戦士たちは、熾烈な戦いを繰り返している。城内にもそれに見劣りしない戦争が起きている。
無音区には電波が届かない。前線にいる家族と連絡がつかなくて不安な市民のため、令尹は天工とブブ物流を連携して戦線への配送体制を強化させた。軍人への手紙ならブブ物流は配送料無料で届けてくれるし、天工の方も前線を連絡する仮設道路を舗装した。これにより、軍人との連絡ができた家族の不安が大幅に低下した。
戦死した兵士の家族の心には癒えぬ傷跡が残された。弔慰金だけでは決してそれを補うことができない。令尹は軍策府と天工の支持を得て、戦没者遺族へのせめてもの慰めとして、生活に支障をきたさない程に弔慰金の額を上げ、戦没者にも相応の誉れを追認する。兵士たちは誉れだけで戦場へ赴いたわけではないが、尊き命を捧げた以上、彼らの名は歴史に残るべきである。城壁の改修が終わり次第、令尹は早速鐘鳴広場の建設に取り掛かった。石碑は虎口採掘場産の最上級鉱石で作られて、雨風を浴びても1000年は保つ頑丈さを誇る。鐘鳴広場の落成の伴い、人々のやり場のない悲しみはやがて安置の場を得た。
民の心情に関わることなら、令尹はいつも第一線を走る。彼女の温かみのある笑顔を見ると、より良い未来への期待も高まる。
彼女はまさしく戦禍に苛まれる人々を慰める春風、戦という真冬を照らす灯火。
稀に表す怒り
今令尹はとにかく気立てが良い。何があってもいつも 笑顔のままで居られる。怒ったところを見られたことがない。
「そういえば、令尹って怒らないじゃない?いつも余裕のある表情をしてるし」
「それもそうだけど。でも逆に気になるよな。あんな優しい人って、怒ったらどうなるのだろう……」
「一度、見たことがある」いつも寡黙な採掘作業員、阿実が口を開いた。
あれは、異常に寒い冬のこと。採掘場の作業で工事代金をもらったところで、その大部分が悪徳業者に「設備補充・修繕のための費用」として請求された。
北落野原の戦事が終わった時期で、令尹が着任したばかりということもあり、街を建設するため、鉱石の需要が高まっていた。天工もやむを得ず民間企業の採掘機械をレンタルした。入札時の丁重な物腰に反して、あの業者が金を請求された時のあの図々しさはなかなかの見物だった。さらにあの業者は商工会会長の身分を利用し、採掘機械の市場を寡占していたため、政府も手を出せなかった。
給料をもらって、いい年を過ごすという阿実の素朴な願いは泡になった。同僚の德彪が言った「おとなしくいてもしょうがない。やるならやり尽くすんだ」いっそのこと、このあかぎれまみれの手で、自分の金を奪え返すと決めた。
月夜に紛れて、阿実は他の同僚と業者の屋敷に忍び込んだ。彼は勇気を振り絞り、扉に耳を近づけて中の音を聞く。時機を見計らって押し入ろうとしていた。
「朱社長、簡単にお知らせしておきます」あれは、少女の声だった。甘いくて穏やかだが、なぜかゾッとするような寒さを感じる。「あなたは商工会から除名されました。また、会社を経営する権利も剥奪されました。つまり、今後、今州での経営活動はもう一切できません」
「ほう?ちゃんと法律に則ってやったのか?令尹ちゃんよ。商工会会長の除名は少なくとも2週間はかかる。ましてや経営権を剥奪するなど、実質的証拠がないとそもそも成立しない。口だけで決めることではないぞ」
「法律、ですね。『今州商業法』第180条、商工会会長の除名は過半数の商工会構成員が署名した同意書が必要、さらに天工商務部部長、天工事務長2名および令尹の署名も必要ですが、令尹による直々の口詔も同様の効力を有します。それが余がここにいる理由です」
「証拠なら、既に巡寧所が収集完了し、律令院に提出済みです」
「それに、あなたご自慢の採掘機械ですが、採掘作業が始まった日、天工にその生産を促しておきました。今日が初期ロットが始動する日ですよ。あなたのものはただレンタル品にすぎないですもの」
その後の話は、急に声が荒くなったせいで、阿実はうまく聞けなかったが、どうやら詭弁で場を凌ぎたい人がいたような気がする。でも、万全の準備の前では、無駄なあがきにすぎない。
間もなくして、阿実たちの口座に入金があった。それはピッタリと、彼らの給料だ。これでいい年が過ごせる。
あれ以降は、採掘場で似たようなことはなくなった。令尹が公布した新しい法律により、寡占行為が禁止され、工事代金の決済方式も変更された。今だと、業者に送金する前には、先に作業員の給料の支払いが義務付けられている。
これからも、毎年いい年を過ごせそうだ。
「阿実、はやく言えよ!令尹の怒ったって、一体どういうこと?」
「そうだな……怖くはない、むしろ逆に……安心させてくれたというか」
「なによそれ?!」
「そういえば、令尹って怒らないじゃない?いつも余裕のある表情をしてるし」
「それもそうだけど。でも逆に気になるよな。あんな優しい人って、怒ったらどうなるのだろう……」
「一度、見たことがある」いつも寡黙な採掘作業員、阿実が口を開いた。
あれは、異常に寒い冬のこと。採掘場の作業で工事代金をもらったところで、その大部分が悪徳業者に「設備補充・修繕のための費用」として請求された。
北落野原の戦事が終わった時期で、令尹が着任したばかりということもあり、街を建設するため、鉱石の需要が高まっていた。天工もやむを得ず民間企業の採掘機械をレンタルした。入札時の丁重な物腰に反して、あの業者が金を請求された時のあの図々しさはなかなかの見物だった。さらにあの業者は商工会会長の身分を利用し、採掘機械の市場を寡占していたため、政府も手を出せなかった。
給料をもらって、いい年を過ごすという阿実の素朴な願いは泡になった。同僚の德彪が言った「おとなしくいてもしょうがない。やるならやり尽くすんだ」いっそのこと、このあかぎれまみれの手で、自分の金を奪え返すと決めた。
月夜に紛れて、阿実は他の同僚と業者の屋敷に忍び込んだ。彼は勇気を振り絞り、扉に耳を近づけて中の音を聞く。時機を見計らって押し入ろうとしていた。
「朱社長、簡単にお知らせしておきます」あれは、少女の声だった。甘いくて穏やかだが、なぜかゾッとするような寒さを感じる。「あなたは商工会から除名されました。また、会社を経営する権利も剥奪されました。つまり、今後、今州での経営活動はもう一切できません」
「ほう?ちゃんと法律に則ってやったのか?令尹ちゃんよ。商工会会長の除名は少なくとも2週間はかかる。ましてや経営権を剥奪するなど、実質的証拠がないとそもそも成立しない。口だけで決めることではないぞ」
「法律、ですね。『今州商業法』第180条、商工会会長の除名は過半数の商工会構成員が署名した同意書が必要、さらに天工商務部部長、天工事務長2名および令尹の署名も必要ですが、令尹による直々の口詔も同様の効力を有します。それが余がここにいる理由です」
「証拠なら、既に巡寧所が収集完了し、律令院に提出済みです」
「それに、あなたご自慢の採掘機械ですが、採掘作業が始まった日、天工にその生産を促しておきました。今日が初期ロットが始動する日ですよ。あなたのものはただレンタル品にすぎないですもの」
その後の話は、急に声が荒くなったせいで、阿実はうまく聞けなかったが、どうやら詭弁で場を凌ぎたい人がいたような気がする。でも、万全の準備の前では、無駄なあがきにすぎない。
間もなくして、阿実たちの口座に入金があった。それはピッタリと、彼らの給料だ。これでいい年が過ごせる。
あれ以降は、採掘場で似たようなことはなくなった。令尹が公布した新しい法律により、寡占行為が禁止され、工事代金の決済方式も変更された。今だと、業者に送金する前には、先に作業員の給料の支払いが義務付けられている。
これからも、毎年いい年を過ごせそうだ。
「阿実、はやく言えよ!令尹の怒ったって、一体どういうこと?」
「そうだな……怖くはない、むしろ逆に……安心させてくれたというか」
「なによそれ?!」
気になる「客人」
今令尹の知略に敵う人はない。彼女に知らないことはないし、できることもないと皆が言う。
着任早々、城内外の状況を把握した上で、民の暮らしを好転させた施策。それは、まるで冬の雪を融かす春の雷のように、民に安住を与えた。
今州に起こることをすべて把握するのは今令尹たる者の基本である。大小を問わず、民の営みに関わる問題全般、令尹の役目の内である。それは今汐の自分に対する要求だ。
最近、彼女が正体を把握しきれない客人が訪れることを知った。しかもそれは、今州にとって掛けがえのない人である。だからこそ、その人のことがやけに気になってきた。
今州の類書にも記載されている。生身で残像を吸収できる英雄がいた。その英雄は今州、ひいては瑝瓏の歴史に自分のことを深く刻んだ。
あの客人は……どうもその英雄に深い関係を持つようだ。
あの客人は姿を現す次第、台風の目にいる。無事に迎え入れるため、彼女は色んな手を打ってある。宛のない全域映像は差別なく今州に訪れる者への挨拶であり、3つの「印」は客を見つける手段を兼ねて、客人に不逞な企みがある邪魔者を釣り出すための餌でもある。
客人の身を守るため、護衛をつけた。裏で糸を引いて客人を先の見えない迷宮から答えに導いた。3日の約束を果たすべく、数多の困難を乗り越えてきた。
乗霄山は俗世と隔離された理想郷だったが、今や歳主が危険に晒される事態に加え、謎の機巧と白い雪で蠢く赤ずくめの連中……局面は波乱を迎えつつある。令尹は独りで打開策を探りながら、歳主の情報を集めていくしかなかった。彼女ほどの強者でも、図れ知れぬ迷宮を前にしては、満足に行動できなくなる。彼女が落ち込むたびに、あの客人の姿が目の前に浮かんでくる。彼女を待っている。目覚めてから、客人は現状と過去を把握しつつあり、彼女の決断を待っている。二人は、きっと今州を勝利へと導けると信じている。
辺庭のバルコニーで、修羅場を潜り抜けて帰還を果たした令尹の少女は、優しくて嬉しい目つきで客人を見つめている。彼女は軽く頷いて、自然に何度も心の中で添削した初対面の挨拶を穏やかに述べる。
「3日の約束」
「お互い守ることが出来たようですね」
「改めて自己紹介を……今汐と申します。ようやく会えましたね、漂泊者」
着任早々、城内外の状況を把握した上で、民の暮らしを好転させた施策。それは、まるで冬の雪を融かす春の雷のように、民に安住を与えた。
今州に起こることをすべて把握するのは今令尹たる者の基本である。大小を問わず、民の営みに関わる問題全般、令尹の役目の内である。それは今汐の自分に対する要求だ。
最近、彼女が正体を把握しきれない客人が訪れることを知った。しかもそれは、今州にとって掛けがえのない人である。だからこそ、その人のことがやけに気になってきた。
今州の類書にも記載されている。生身で残像を吸収できる英雄がいた。その英雄は今州、ひいては瑝瓏の歴史に自分のことを深く刻んだ。
あの客人は……どうもその英雄に深い関係を持つようだ。
あの客人は姿を現す次第、台風の目にいる。無事に迎え入れるため、彼女は色んな手を打ってある。宛のない全域映像は差別なく今州に訪れる者への挨拶であり、3つの「印」は客を見つける手段を兼ねて、客人に不逞な企みがある邪魔者を釣り出すための餌でもある。
客人の身を守るため、護衛をつけた。裏で糸を引いて客人を先の見えない迷宮から答えに導いた。3日の約束を果たすべく、数多の困難を乗り越えてきた。
乗霄山は俗世と隔離された理想郷だったが、今や歳主が危険に晒される事態に加え、謎の機巧と白い雪で蠢く赤ずくめの連中……局面は波乱を迎えつつある。令尹は独りで打開策を探りながら、歳主の情報を集めていくしかなかった。彼女ほどの強者でも、図れ知れぬ迷宮を前にしては、満足に行動できなくなる。彼女が落ち込むたびに、あの客人の姿が目の前に浮かんでくる。彼女を待っている。目覚めてから、客人は現状と過去を把握しつつあり、彼女の決断を待っている。二人は、きっと今州を勝利へと導けると信じている。
辺庭のバルコニーで、修羅場を潜り抜けて帰還を果たした令尹の少女は、優しくて嬉しい目つきで客人を見つめている。彼女は軽く頷いて、自然に何度も心の中で添削した初対面の挨拶を穏やかに述べる。
「3日の約束」
「お互い守ることが出来たようですね」
「改めて自己紹介を……今汐と申します。ようやく会えましたね、漂泊者」
今汐 のボイスライン
心の声・その一
今州へようこそ。申し訳ございませんが、多忙極める故、急用であれば、辺庭を直接お訪ね下さい。
心の声・その二
ここは、無数の花々、積み重なるレンガ、そして住まう全ての人々からなる城です。
そしてここを訪ねる客は、一人一人自らの色で、この今州という場所を多彩に染め上げます。
その中でもあなたは、取り分け鮮やぐ存在です。
……歳主にそう言われたのか、ですって?いいえ、これは余の意見でもあります。
そしてここを訪ねる客は、一人一人自らの色で、この今州という場所を多彩に染め上げます。
その中でもあなたは、取り分け鮮やぐ存在です。
……歳主にそう言われたのか、ですって?いいえ、これは余の意見でもあります。
心の声・その三
「驚くべき才が現る時、それは海を沸かし山をも揺らす」という今州のことわざがあります。つまり、あなたを嵐を呼び寄せる存在、と決めつける者もいるのです……。しかし余は思います。そんな嵐こそが我々に必要なものなのではないかと……。暴風と豪雨によって、この地に根付く悪を洗い流す……そうすれば皆、より綺麗な空の下で生きていけるようになるのではないかと。
心の声・その四
余もはじめはあなたの出自が気になっていましたが……結局のところ、それはさほど重要ではないのかもしれません。大事なのは「過去」でなく「現在」。あなたが今州へもたらした恩恵は、余が誰よりも知っています。偶然に見える出来事が、全てつながりを持つように……あなたが今州で目覚めたということも、ある種の運命であるはずです。
心の声・その五
一人で急ぐことは簡単ですが、誰かと一緒であればより遠くまで行けます。
だからこれからは……皆と、あなたと共に、歩みを進めたい。
だからこれからは……皆と、あなたと共に、歩みを進めたい。
好きなこと
今州劇場に行ったことはありますか?演劇がハッピーエンドを迎える時……
誰もが笑顔になるその瞬間がとても好きです。
……皆の笑顔……それを守るために、余は死力を尽くします。
誰もが笑顔になるその瞬間がとても好きです。
……皆の笑顔……それを守るために、余は死力を尽くします。
悩み
ええと……悩みとは立ちはだかる困難を指すかと思うのですが、余はそれを成し遂げるべき「目標」だと考えています。なので、何かに悩むということは、もう長い間していません。
好きな食べ物
早朝の市場へ行ったことはありますか?ナツメが添えられた、作り立ての小龍包……鍋の上に置かれた蒸籠……立ち上る甘い湯気……。
嫌いな食べ物
悲鳴の後、今州では飢饉に苦しむ日々が続きました。それを経験した者であれば、食べ物のありがたみを理解できるはずです。しっかり味わうことは、農民と天への感謝……なので、特に嫌いな食べ物はありません。……嫌いな食べ物ではありませんが、金や注目を集めるために、食材を無駄にする方は許せません。
夢
歳主に頼るということは、決して軟弱な行いではありません。暗中を迷っていれば、人知の及ばぬものに頼りたがる、というのも至極当然のこと。だから、余はその暗がりを照らし、人類を未来へと導きたいのです。
伝えたいこと・その一
幼い頃、何度も夢を見ました。海の中の夢を……。
何かが余の四肢を縛り付け、徐々に体が底に沈みゆく……。
そうはならまいと藻掻いた末、現れた流木にしがみつき、波に流され陸地へとたどり着く……。
そんな夢から目覚めると、余の手の中は……この光溢れる、龍の鱗があったのです。
何かが余の四肢を縛り付け、徐々に体が底に沈みゆく……。
そうはならまいと藻掻いた末、現れた流木にしがみつき、波に流され陸地へとたどり着く……。
そんな夢から目覚めると、余の手の中は……この光溢れる、龍の鱗があったのです。
伝えたいこと・その二
乗霄山の雪を見たことはありますか?人気のない道を白く覆いつくす、静かな雪……。しかし、今州に降る雪は、それとは違います。地面に落ちるより先に人々の上に落ちる雪。今州に降る雪は肩から払われる薄い積雪や、人々が作る小さな雪だるまです。そんな何気ない雪景色を……余は守りたい。
長離について
長離先生の教えで、これまで多くの人を見てきましたが、先生の笑顔の奥にあるものだけは、どうしても見抜けませんでした。
散華について
多忙な時などには、つい食事を忘れてしまいます。ですが、仕事が片付くちょうどその瞬間、散華はいつもアツアツの小龍包を運んできてくれるのです。しかも、その小龍包には必ずその時余が食べたいと思っている食材が入っています。一体どうやって作っているのでしょう……?
桃祈について
あくびをしながら、神の如き速度で仕事を次々と片付ける……正直、羨ましい限りです。
忌炎について
「青龍の旗を掲げれば、どんな残像も怯えて逃げる」……ですか。童謡になるのも頷けますね。忌炎がいる限り、この今州が破れる事などあり得ません。
漂泊者について
薄々と感じていました。あなたも、守りたい物がありますね。それこそ一歩たりとも引けない、死力を尽せるほどの何かが……
誕生日祝い
あなたの誕生日を知ってから、毎日少しづつ龍灯を作り続けてきました。どうしても、既製品ではなく手作りの物を渡したかったので……。幸い、何とか間に合いました。時間のある時に、辺庭で一緒に龍灯を灯しましょう。今州では龍灯を放つと歳主が願いを叶えてくれる、と言われていますので。
余暇・その一
台詞なし
余暇・その二
台詞なし
余暇・その三
祈りですか?……余が必ずや応えましょう。
自己紹介
今令尹、今汐と申します。令尹とは、絶対的な権力と責任を意味します。今州の民が憂いの無い日々を過ごせるよう、力を尽くしましょう。
最初の音
「歳主」の予言通り……あなたに、会いに来ました。
チームに編入・その一
一緒に参りましょう。
チームに編入・その二
見聞を広めるのも大事なことです。
チームに編入・その三
余がお手本を見せましょう。
突破・その一
「生まれながら」などありません。今令尹とて、鍛錬は不可欠です。
突破・その二
令尹の位に即いたばかりの頃、自分の力では皆を守り切れないと気に病む事もありました……ですが、悩む暇があるのなら、稽古に徹した方がいいですよね。
力とはコツコツ蓄えるものですから。
力とはコツコツ蓄えるものですから。
突破・その三
ご指導ありがとうございます。最近は武のみでなく、仕事の方も一段と捗るようになりました。まさか鍛錬以外にも、渡世の術まで教えていただけるなんて……
突破・その四
この体は特別です。だから、こんなにも他の力と調和できるのは初めてで……もしかしたら、あなたも歳主と何らかの縁があるかもしれません。それが本当なら、とても素晴らしいことだと思います。あなたを、より近くに感じられるのですから……。
突破・その五
あなたを知れば知るほど、あなたとの共通点が見えてきます。似たような周波数に似たような力……さらには、背負っている使命すらも似ている……。今州を守るのは余の責務ですが、あなたも今州との深い関係を持っているようですね。これまで、余は自分の力を信じ抗ってきたつもりでした。でも、これからはこうしてあなたと出会えたこの「運命」を信じてみたいと思います。
重撃・1
春の兆し。
重撃・2
彩霞絢爛。
重撃・3
時は来たり。
重撃・4
龍魂招来。
空中攻撃・1
流星の如く。
空中攻撃・2
閃光。
共鳴スキル・1
煌光一閃。
共鳴スキル・2
春陽融雪。
共鳴スキル・3
万象変遷。
共鳴スキル・4
虹に身を寄せ。
共鳴スキル・5
影と舞い踊る。
共鳴スキル・6
天象異動!
共鳴スキル・7
潜游自在!
共鳴スキル・8
舞い上がれ!
共鳴スキル・9
龍鱗の力で!
共鳴スキル・10
流転の先へ!
共鳴スキル・11
無に帰れ!
共鳴スキル・12
数多なる光よ!
共鳴解放・1
余の光にひれ伏せ!
共鳴解放・2
邪を取り祓え!
共鳴解放・3
太平を……迎えるために!
ダメージ・1
無礼者……
ダメージ・2
しくじった……
重傷・1
これしき……
重傷・2
余に構うな。
戦闘不能・1
運命は……閉ざされたか……
戦闘不能・2
ここで倒れたら……
音骸スキル・召喚
出でよ!
音骸スキル・変身
この姿で……
変奏スキル・1
携手。
変奏スキル・2
同心!
敵に遭遇
余に任せよ。
滑空・1
一目瞭然。
滑空・2
心地いい風……
鉤縄
神速果敢。
スキャン
ふふ、祥瑞ですね。
ダッシュ
進みましょう。
壁走り・1
近道ですね。
壁走り・2
ここからなら……
飛び越え
失礼。
補給獲得・1
使える物はありませんか?
補給獲得・2
今州は豊かな土地、いいものがたくさんありますよ。
補給獲得・3
これぐらい、いくらでも用意させますよ?