情報
吟霖 VA
中国語: CV:Mickey
日本語: CV:小清水亜美
韓国語: CV:Kang Sae Bom
英語: CV:Naomi McDonald
吟霖 のフォルテ調査報告
共鳴力
懲悪傀儡
共鳴評価報告
測定材料:【周波数スペクトル報告RA2917-G】
音痕は左太腿の外側にある。共鳴後、身体における物理的な変化はないが、
皮膚表面に微量の電流を確認した。
電流を糸状に収束させ操縦する、極めて高度な異能力制御を行うことができる。
共鳴周波数スペクトルは電導周波帯に類似。テストでは強い共振反応を観測した。
ラベル曲線は安定な波形と、明確な周期性特徴を示したため、先天型共鳴者と認定する。
追記:病歴を確認したところ、拍動異常の経験あり。共鳴能力との関係不明。能力が制限される場合、心房細動が起きる可能性あり。留意すべし。
オーバークロック診断報告
【オーバークロック診断報告】
波形はジグザグ状、時間領域表示不安定。波高値が高く、危険域に近い経験あり。波形に一部もやが観測され、異常波形あり。
診断結果:オーバークロック域が狭く安定性は低い。オーバークロックリスクあり。
オーバークロック歴なし。
身体機能は優秀だが長期間オーバークロックを誘発できる要素と接触した可能性あり、更なる観察が必要。
体に響く仕事をやめ、不規則なスケジュールを直す必要あり。
吟霖 の大切なアイテム&好物
人形「ケンシ」
最初はどこにでも買える機巧人形であり、どこにでも見かけそうな人形作家の練習作だったが、吟霖の共鳴能力を最大限に発揮できるように戦闘用人形に改造された。無数の戦いで使い込まれたから古びてはいるが、手入れ具合から吟霖が降り注いだ愛情が見られる。ただ、本人は決してそのようなことを口にしない。
瑝瓏ドレスルックブック
表向きは吟霖愛読のルックブックだが、実は他の捜査官との連絡に使う動的暗号化された情報冊子である。定期に変更される暗号化された記号と画像を通じて情報交換の機能を果たしているが、その使いこなしが難しく、手練れの捜査官さえ苦労する。
なぜ吟霖が瑝瓏ドレスを愛用するかというと、デバイスや武器を目立たずにたくさん収納できて、案外動きやすいからだけではなく、重要なのは……他人に注目されやすいからだ。
拡大鏡
治安署が新人巡尉に支給する捜査用の拡大鏡。肉眼では発見できない手掛かりを発見できる。収納されやすいようにデザインされている。
潜入捜査官として、これを使う機会はめったにないが、印としていつも持っている。両親の記念と、自分の本当の身分を思い出させるための印である。
吟霖 のストーリー
影に隠れる赤
制服を着て街を巡回し、人々の困難を解決してくれる巡尉。今州で彼らを知らない人はいない。
それは、城内の治安、そして民の生命と財産を守る存在だ。
しかし、制服を着ることもなく身分を明かさない巡尉もいる。
「潜入調査員」。犯罪証拠の入手や犯罪の抑止を目的とし、正体を隠し犯罪組織に潜り込む人間。
窃盗犯といった軽犯罪者とは比べようのない力を持つ犯罪者を共に行動する彼ら。まさに命懸け。正体を知られれば任務失敗、常に死と隣合せ……。
「さすがにバカばっかりの巡尉でも、こんな仕事をする連中はいないんじゃないか?なあ?」
無骨な追放者リーダーがそう言って手に持ったナイフを机に突き刺すと、暗いボロ倉庫の陰から軋んだ笑い声がした。
「ここに巡尉はいないか?いたら真っ先に教えてくれ。打ち上げの出費を一人でも省きたいんだ」
飛び交う笑い声の中に、疑う視線が混じり始める。
「今夜は、今州から輸送隊が出るって知らせがあった。それも、『上物』をたくさん積んでるって話らしい。あの旦那、まんまとそそのかされ、ブブ物流を雇わなかったみてえだ」
隣にいる背が高く瘦せた男の肩をリーダーが叩いた。
「蛇明、よくやった。上出来だ!」
「へへっ、大したことしてねぇって。だが、代わりに、共鳴者を雇っているらしい」
「心配ないさ。そん時はあんたの出番だな。新入りちゃん」
その声に応えるように綺麗な赤髪の女が陰から身を現し、少し笑顔を見せた。
「ボス……正直前から思ってたんだが……こいつ俺より弱そうだぞ。本当に連れてくつもりか?万が一負けたら……」
下品な笑いより早く、男が手を伸ばし女の腕を掴もうとしたが……透き通った白い肌に触れる直前、何故か動きが止まった。
「こ……これは!?お前……何をした!?」
リーダーが手を振って参った顔をした。この場で蛇明の体にまとわりつく雷電の糸に気づいたのはどうやら、彼だけのようだ。
「新入りちゃん、ここは俺に免じて彼を許してやれ。こいつ、口だけはよく動くんだ。作戦前の内輪揉めは俺とて見逃せない」
無言の女が髪を揺らすと男を縛った糸が消えた。
「よし、時間だ……いくぞ。一発かましてやれぃ!」
全身痺れて倒れていた蛇明は目標の輸送隊が目の前をのこのこと通り過ぎていくのを見た。ふと、数時間前の出来事を思い出す。
(この痺れ方……あの女か!あいつがクロだ!!)
せめてこの情報を伝えようと全力で体勢を変えてみる。しかし、頭を回した途端、人形の顔と鉢合わせた。
「ぎぃああああ!!」
この悲鳴も数秒の後、激しい雷光の内に消えてしまった。
それは、城内の治安、そして民の生命と財産を守る存在だ。
しかし、制服を着ることもなく身分を明かさない巡尉もいる。
「潜入調査員」。犯罪証拠の入手や犯罪の抑止を目的とし、正体を隠し犯罪組織に潜り込む人間。
窃盗犯といった軽犯罪者とは比べようのない力を持つ犯罪者を共に行動する彼ら。まさに命懸け。正体を知られれば任務失敗、常に死と隣合せ……。
「さすがにバカばっかりの巡尉でも、こんな仕事をする連中はいないんじゃないか?なあ?」
無骨な追放者リーダーがそう言って手に持ったナイフを机に突き刺すと、暗いボロ倉庫の陰から軋んだ笑い声がした。
「ここに巡尉はいないか?いたら真っ先に教えてくれ。打ち上げの出費を一人でも省きたいんだ」
飛び交う笑い声の中に、疑う視線が混じり始める。
「今夜は、今州から輸送隊が出るって知らせがあった。それも、『上物』をたくさん積んでるって話らしい。あの旦那、まんまとそそのかされ、ブブ物流を雇わなかったみてえだ」
隣にいる背が高く瘦せた男の肩をリーダーが叩いた。
「蛇明、よくやった。上出来だ!」
「へへっ、大したことしてねぇって。だが、代わりに、共鳴者を雇っているらしい」
「心配ないさ。そん時はあんたの出番だな。新入りちゃん」
その声に応えるように綺麗な赤髪の女が陰から身を現し、少し笑顔を見せた。
「ボス……正直前から思ってたんだが……こいつ俺より弱そうだぞ。本当に連れてくつもりか?万が一負けたら……」
下品な笑いより早く、男が手を伸ばし女の腕を掴もうとしたが……透き通った白い肌に触れる直前、何故か動きが止まった。
「こ……これは!?お前……何をした!?」
リーダーが手を振って参った顔をした。この場で蛇明の体にまとわりつく雷電の糸に気づいたのはどうやら、彼だけのようだ。
「新入りちゃん、ここは俺に免じて彼を許してやれ。こいつ、口だけはよく動くんだ。作戦前の内輪揉めは俺とて見逃せない」
無言の女が髪を揺らすと男を縛った糸が消えた。
「よし、時間だ……いくぞ。一発かましてやれぃ!」
全身痺れて倒れていた蛇明は目標の輸送隊が目の前をのこのこと通り過ぎていくのを見た。ふと、数時間前の出来事を思い出す。
(この痺れ方……あの女か!あいつがクロだ!!)
せめてこの情報を伝えようと全力で体勢を変えてみる。しかし、頭を回した途端、人形の顔と鉢合わせた。
「ぎぃああああ!!」
この悲鳴も数秒の後、激しい雷光の内に消えてしまった。
人形劇
人混みの市場の中。フードの付いたマントで身を包んだ背の高い男が、男の子を一人連れて人気のない道を歩いている。誰の目から見ても、休日を過ごす親子だ……男の子の顔に浮かぶ、隠しきれない恐怖を除けば。
「ああ、大事な人質はもう確保した。城外に無事逃げ切れば、誰も見つけられない」
連絡を取りながらも、男は表情と視線で子供に圧を掛ける。
「こいつがいる限り、じいさんどころか今州の巡尉も簡単には手を出せないはず……ああ、また後で」
城門は目の前。警備も特に変化なし。あの老いぼれは誘拐の事を巡尉に言わない……いや、言えないのが正しいのだろう。てめぇの方も裏商売をやっていたわけだしな。
この道を抜けようとした。しかし、予想外の出来事に足を取られた。
華麗な服装に、長い赤い髪の女が狭い道の真ん中で人形劇をやっている。大勢の子供と親が揃いも揃って見ているようだ。人形捌きは確かにいいもので、子供たちの目が全部釘付けになった……勿論、手を握ったこいつの目も。
人が多い。無理やり通るには目立ちすぎる。だが、見た感じもうすぐ芝居が終わる。それなら、急ぐ必要もないか。
予想通りに人形劇はすぐに終わった。拍手の中、赤い髪の女は人形と一緒に礼をしている。
今だ。この機に人混みを抜ける……と男は、男の子に目つきで示した。
「次は、誰かと一緒にやってみたいな。興味ある方は?」
端正な顔に笑みを浮かべ、赤い髪の人形使いは子供たちに問いかけた。対して殆どの子供は手を挙げる。
「よ~し。じゃあ、そこの男の子。はい、父さんの手を引いているあなた!」
一瞬で視線が集まってきた。人形使いの手が指したのは間違いなく、マントの男が連れた男の子であった。
「僕?僕が?」
歓喜と恐怖を混じった顔で男の子は視線をマントの裏に向けた。しかし、男は一瞬の思慮の後、子供の手を握りながら人混みを分け、人形使いの前に進んだ。
「すまない……急いでいるもので……」
「ええ。すぐ終わるから……お父さんも、一緒にどう?」
「俺?俺はいい……おい!」無意識に拒んだ男は、子供が手を離して壇上に上がった事に気づき声を荒げた。
手を伸ばして引き戻そうとする。しかし、その先には何故かあの変な人形がいた。電流で貫かれた彼の意識は、そこで途切れた。
「親っさん!親っさん大変だ!」
広い部屋の中、どう見てもチンピラの男が急いで入った。
「馬鹿者!まだ何があるというんだ!」
中央に座っているのは、威厳のある老人。孫が誘拐され焦燥している彼は、手に取った茶杯を相手の前に全力で投げた。
「あの女、赤い髪の女が帰った……若を連れて!」
「なんだとっ?」
老人の話が終わるや否や、話に出た赤い髪の女が男の子一人を連れて庭に来た。何と、街で人形劇をやってた、あの人形使いだ。
「じっちゃん!」
「おお、わしのいい子……!怪我はないか?どうやって戻った?」
頭を横に振り無事を伝えた後、男の子が赤い髪の女に指差した。
「この姉さんが僕を連れ出してくれたよ!」
「お前さん……巡尉の差し金でこんな真似は一体……」
赤い髪の女は少し手を振って、人形に捕まったマントの男を見せた。
「私の『今の』狙いはあくまであんたたちの商売敵であるこいつら……だから、あなたたちを少し利用させてもらった。善人とは言えない連中だけど……若に罪はないから」
庭に集まってきたチンピラたちを一瞥し、女は微笑んだ。
「まさか……これだけの人数で、この憎き裏切り者を退治できるとでも?」
目を閉じてため息の後、老人は視線で全員に武器を下ろすよう配った。
「もう行くがよい。二度と顔を見せるな」
お辞儀して去った女の背中を見て、老人は長くため息を漏らした。
「ここを自由に出入りするやつ……うちが無事なのは『今』だけ、というわけか……」
孫の顔を見ながら、老人はただ黙り込んだままであった。
「ああ、大事な人質はもう確保した。城外に無事逃げ切れば、誰も見つけられない」
連絡を取りながらも、男は表情と視線で子供に圧を掛ける。
「こいつがいる限り、じいさんどころか今州の巡尉も簡単には手を出せないはず……ああ、また後で」
城門は目の前。警備も特に変化なし。あの老いぼれは誘拐の事を巡尉に言わない……いや、言えないのが正しいのだろう。てめぇの方も裏商売をやっていたわけだしな。
この道を抜けようとした。しかし、予想外の出来事に足を取られた。
華麗な服装に、長い赤い髪の女が狭い道の真ん中で人形劇をやっている。大勢の子供と親が揃いも揃って見ているようだ。人形捌きは確かにいいもので、子供たちの目が全部釘付けになった……勿論、手を握ったこいつの目も。
人が多い。無理やり通るには目立ちすぎる。だが、見た感じもうすぐ芝居が終わる。それなら、急ぐ必要もないか。
予想通りに人形劇はすぐに終わった。拍手の中、赤い髪の女は人形と一緒に礼をしている。
今だ。この機に人混みを抜ける……と男は、男の子に目つきで示した。
「次は、誰かと一緒にやってみたいな。興味ある方は?」
端正な顔に笑みを浮かべ、赤い髪の人形使いは子供たちに問いかけた。対して殆どの子供は手を挙げる。
「よ~し。じゃあ、そこの男の子。はい、父さんの手を引いているあなた!」
一瞬で視線が集まってきた。人形使いの手が指したのは間違いなく、マントの男が連れた男の子であった。
「僕?僕が?」
歓喜と恐怖を混じった顔で男の子は視線をマントの裏に向けた。しかし、男は一瞬の思慮の後、子供の手を握りながら人混みを分け、人形使いの前に進んだ。
「すまない……急いでいるもので……」
「ええ。すぐ終わるから……お父さんも、一緒にどう?」
「俺?俺はいい……おい!」無意識に拒んだ男は、子供が手を離して壇上に上がった事に気づき声を荒げた。
手を伸ばして引き戻そうとする。しかし、その先には何故かあの変な人形がいた。電流で貫かれた彼の意識は、そこで途切れた。
「親っさん!親っさん大変だ!」
広い部屋の中、どう見てもチンピラの男が急いで入った。
「馬鹿者!まだ何があるというんだ!」
中央に座っているのは、威厳のある老人。孫が誘拐され焦燥している彼は、手に取った茶杯を相手の前に全力で投げた。
「あの女、赤い髪の女が帰った……若を連れて!」
「なんだとっ?」
老人の話が終わるや否や、話に出た赤い髪の女が男の子一人を連れて庭に来た。何と、街で人形劇をやってた、あの人形使いだ。
「じっちゃん!」
「おお、わしのいい子……!怪我はないか?どうやって戻った?」
頭を横に振り無事を伝えた後、男の子が赤い髪の女に指差した。
「この姉さんが僕を連れ出してくれたよ!」
「お前さん……巡尉の差し金でこんな真似は一体……」
赤い髪の女は少し手を振って、人形に捕まったマントの男を見せた。
「私の『今の』狙いはあくまであんたたちの商売敵であるこいつら……だから、あなたたちを少し利用させてもらった。善人とは言えない連中だけど……若に罪はないから」
庭に集まってきたチンピラたちを一瞥し、女は微笑んだ。
「まさか……これだけの人数で、この憎き裏切り者を退治できるとでも?」
目を閉じてため息の後、老人は視線で全員に武器を下ろすよう配った。
「もう行くがよい。二度と顔を見せるな」
お辞儀して去った女の背中を見て、老人は長くため息を漏らした。
「ここを自由に出入りするやつ……うちが無事なのは『今』だけ、というわけか……」
孫の顔を見ながら、老人はただ黙り込んだままであった。
燃やされた名前
「残念だ。スズメとカナリアは殉職……尻尾を掴まれ、消された」
「バカな!お二人がそんな簡単に……」
机の上の哺乳瓶が倒れる。驚いた揺り籠の中で眠った赤ちゃんは泣き始めた。
青年は慌ただしく赤ちゃんを抱いてなだめる。
「そういえば子供が一人いたね。よりによって共鳴者か……これからはあなたが面倒見る事になる。ちょうど停職処分にされた身であれば、適任だろうからね」
「そいつはどうも。俺はちゃんと面倒見るから心配はいらない」
「そうだ。あなたの師匠、前に何らかの調査を行っていたようだ。何か知らないか?」
「知らない……」
治安署に内通者がいるという話だ。目の前のこいつもクロの可能性があって……教えられない。
「明日、調査員をここに向かわせる。その時は協力、よろしくね。」
赤ん坊一人連れて、阻止する術がないのも向こうの思うつぼだ。
「明日か……分かった。今夜は荷物まとめて、明日に引っ越す。それでいいな?」
「勿論。この機に新しい人生でも始めようか。ふふっ……」
荷物をまとめる素振りをした青年は、その巡尉の目に潜んだ一縷の殺意を見逃さなかった。
かつての家が火に飲まれても、赤ちゃんは一切泣かなかった。まるでただ往来の人を見ているかのようだ。
こっちに来ている人を確認し、青年はフードを深く被り、赤ちゃんを服の中に隠した。
あの人が何者かに報告している。
「はい……確認済みです。二人まとめて」
やはりあいつは裏切り者の手下か。狙いは俺とこの子の命、そして、お二人が調査しまとめた資料。
(連中は明日も待たずに実行するとは……)
この状況を見越して、共鳴能力で自分と赤ちゃんの人形を作ったのは正解だった。返事もできない人形だけど、熟睡中の二人に思わせるには充分だ。
お陰で敵を欺いて、資料を持ち出して隠し通路で逃げることができた。プロフィール上の死者が一番安全だから。
今日、俺もこの子も昔の身分を捨てた。だから、新しい名前と、新しい自分が必要だ。
醜いマスクを顔に被り、青年は赤ちゃんの目を手で隠し、振り向かずに暗闇の中に溶けた。
「今日から俺は『偃師』。そして君は『吟霖』……お二人が決めた名前だ」
「バカな!お二人がそんな簡単に……」
机の上の哺乳瓶が倒れる。驚いた揺り籠の中で眠った赤ちゃんは泣き始めた。
青年は慌ただしく赤ちゃんを抱いてなだめる。
「そういえば子供が一人いたね。よりによって共鳴者か……これからはあなたが面倒見る事になる。ちょうど停職処分にされた身であれば、適任だろうからね」
「そいつはどうも。俺はちゃんと面倒見るから心配はいらない」
「そうだ。あなたの師匠、前に何らかの調査を行っていたようだ。何か知らないか?」
「知らない……」
治安署に内通者がいるという話だ。目の前のこいつもクロの可能性があって……教えられない。
「明日、調査員をここに向かわせる。その時は協力、よろしくね。」
赤ん坊一人連れて、阻止する術がないのも向こうの思うつぼだ。
「明日か……分かった。今夜は荷物まとめて、明日に引っ越す。それでいいな?」
「勿論。この機に新しい人生でも始めようか。ふふっ……」
荷物をまとめる素振りをした青年は、その巡尉の目に潜んだ一縷の殺意を見逃さなかった。
かつての家が火に飲まれても、赤ちゃんは一切泣かなかった。まるでただ往来の人を見ているかのようだ。
こっちに来ている人を確認し、青年はフードを深く被り、赤ちゃんを服の中に隠した。
あの人が何者かに報告している。
「はい……確認済みです。二人まとめて」
やはりあいつは裏切り者の手下か。狙いは俺とこの子の命、そして、お二人が調査しまとめた資料。
(連中は明日も待たずに実行するとは……)
この状況を見越して、共鳴能力で自分と赤ちゃんの人形を作ったのは正解だった。返事もできない人形だけど、熟睡中の二人に思わせるには充分だ。
お陰で敵を欺いて、資料を持ち出して隠し通路で逃げることができた。プロフィール上の死者が一番安全だから。
今日、俺もこの子も昔の身分を捨てた。だから、新しい名前と、新しい自分が必要だ。
醜いマスクを顔に被り、青年は赤ちゃんの目を手で隠し、振り向かずに暗闇の中に溶けた。
「今日から俺は『偃師』。そして君は『吟霖』……お二人が決めた名前だ」
振り向かずに
「偃師さん。私、治安署の試験に挑戦してみたいです」
その話を聞いて、偃師はさほど反応を示さなかった。代わりに彼の傍に立つ、老年の女性が口を開く。
「吟霖さん……ばあは、あなたを自分の娘のように育てた。本当は、そんな危ない所に行かせたくない。治安署になんて、ろくなもんはいないんだから……」
「安心して、館ばあ。私の正体を知る人はいない。治安署にとって私はただの外来者。何より偃師さんが用意した身分もあるから」
「しかし……家族を失うのはもうごりごりだ。館ばあの話を聞いて、どこにもいかないでくれないか……」
偃師は手に取ったノートを閉じ、手ぶりで館ばあの話を遮った。
「行くがいい。私の研究もじきに次の段階に入り、治安署との衝突を避けられなくなる。ならば、内通者がいた方がやりやすいだろう」
「いいえ。私は、潜入調査員になりたいんです。両親と同じ……私なりのやり方でその信念を貫きたい」
偃師のマスクの下にある表情は読めない。何せ、物心がついた時からそれは一度も取れたことはない。
それでも、その目に潜んだ複雑な感情は隠せなかった。長い沈黙の後、彼は頷いた。
「人形でお二人を復活させるまで、君は好きなだけ動いて構わん。私の実験が成功したら……治安署に復讐する。お二人を陥ったゴミどもを、一人残らず消す!」
まだ何か言い出そうとする吟霖に、偃師は二度と目を上げる事なく人形作りに没頭した。
その背中に少し頷き、彼女も離れた。この瞬間から、二人の目標は違った事を気付きながら。
その話を聞いて、偃師はさほど反応を示さなかった。代わりに彼の傍に立つ、老年の女性が口を開く。
「吟霖さん……ばあは、あなたを自分の娘のように育てた。本当は、そんな危ない所に行かせたくない。治安署になんて、ろくなもんはいないんだから……」
「安心して、館ばあ。私の正体を知る人はいない。治安署にとって私はただの外来者。何より偃師さんが用意した身分もあるから」
「しかし……家族を失うのはもうごりごりだ。館ばあの話を聞いて、どこにもいかないでくれないか……」
偃師は手に取ったノートを閉じ、手ぶりで館ばあの話を遮った。
「行くがいい。私の研究もじきに次の段階に入り、治安署との衝突を避けられなくなる。ならば、内通者がいた方がやりやすいだろう」
「いいえ。私は、潜入調査員になりたいんです。両親と同じ……私なりのやり方でその信念を貫きたい」
偃師のマスクの下にある表情は読めない。何せ、物心がついた時からそれは一度も取れたことはない。
それでも、その目に潜んだ複雑な感情は隠せなかった。長い沈黙の後、彼は頷いた。
「人形でお二人を復活させるまで、君は好きなだけ動いて構わん。私の実験が成功したら……治安署に復讐する。お二人を陥ったゴミどもを、一人残らず消す!」
まだ何か言い出そうとする吟霖に、偃師は二度と目を上げる事なく人形作りに没頭した。
その背中に少し頷き、彼女も離れた。この瞬間から、二人の目標は違った事を気付きながら。
闇の一角
側腹部の痛みに耐え、吟霖は机にもたれかかった。
一人の男が軽い足取りで近づいてくる。人形の鋭い両手を自分の肉体から抜き出し、地面に叩きつけた。
「そんな危険を犯してまで組織に入り込むだなんてなあ。お前が死んだ巡尉二人の情報を掴みたい理由は知らねぇが……どうやら俺の勝ちだ!」
彼女は雷電の鞭を振ろうとするが、激痛のため照準を合わせられずに男の数メートル先を打った。
「俺の共鳴能力は生物の拍動を乱し、ショックを引き起す。人間である以上、勝てる訳がない」
男の腕にある音痕はもう一度輝いた。すると吟霖は立つ力も失い、地面に倒れ込んだ。
「うちにあんたほどの共鳴者はいないはずだ。巡尉にも内通者が何人かいるのだが……」
何かに気づいたのか、男は笑った。
「ははっ、さては潜入調査員か。バカだな。こんな事のために命を掛けるとは。真実なんて知って何になる。世界を変えられるのか?」
彼女の呼吸は一段と弱くなる。これが最後だと男は確信した。
「そろそろトドメか。残念だったな。よりにもよって、残星組織と敵に回すような真似を……」
ナイフが吟霖の喉に触れた瞬間、激しい雷電が手から全身を貫き、男は体の制御を完全に失った。
「な……ぜ……」
気絶する前に、彼はその心臓の位置で明滅した雷光を見た。彼女は停止した心臓を電撃で刺激し、心拍を取り戻したのだ。
吟霖は雷電の糸を操って、動けそうにない体に代わって「ケンシ」で男の懐を探り、資料を一式取り出した。
「残星組織……やはりか。この隠された闇を……私が暴いてみせる」
一人の男が軽い足取りで近づいてくる。人形の鋭い両手を自分の肉体から抜き出し、地面に叩きつけた。
「そんな危険を犯してまで組織に入り込むだなんてなあ。お前が死んだ巡尉二人の情報を掴みたい理由は知らねぇが……どうやら俺の勝ちだ!」
彼女は雷電の鞭を振ろうとするが、激痛のため照準を合わせられずに男の数メートル先を打った。
「俺の共鳴能力は生物の拍動を乱し、ショックを引き起す。人間である以上、勝てる訳がない」
男の腕にある音痕はもう一度輝いた。すると吟霖は立つ力も失い、地面に倒れ込んだ。
「うちにあんたほどの共鳴者はいないはずだ。巡尉にも内通者が何人かいるのだが……」
何かに気づいたのか、男は笑った。
「ははっ、さては潜入調査員か。バカだな。こんな事のために命を掛けるとは。真実なんて知って何になる。世界を変えられるのか?」
彼女の呼吸は一段と弱くなる。これが最後だと男は確信した。
「そろそろトドメか。残念だったな。よりにもよって、残星組織と敵に回すような真似を……」
ナイフが吟霖の喉に触れた瞬間、激しい雷電が手から全身を貫き、男は体の制御を完全に失った。
「な……ぜ……」
気絶する前に、彼はその心臓の位置で明滅した雷光を見た。彼女は停止した心臓を電撃で刺激し、心拍を取り戻したのだ。
吟霖は雷電の糸を操って、動けそうにない体に代わって「ケンシ」で男の懐を探り、資料を一式取り出した。
「残星組織……やはりか。この隠された闇を……私が暴いてみせる」
吟霖 のボイスライン
心の声・その一
自分では気づいてないみたいだが、あんたの周りには幸か不幸か、変なヤツらがやたら集まってくる。……まあ、少なくとも私は助かってるよ。私が探しているのは、そういうおかしなヤツばかりだからね。
心の声・その二
あんたの認識とは矛盾するかもしれないが、世間の犯罪のほとんどは、愛と責任から生じている……まったく滑稽だよ……。愛と責任は社会の基盤であるはずなのに、それらは人を偏執的な盲目者に変え……そして、過ちを繰り返させる。
心の声・その三
あんたの実力はよく理解している。正々堂々のやり合いで倒されることはまずない……でも、世の中には私以外にも、理屈の通じないヤツがたくさんいる。……くれぐれも、くだらないイカサマなんかにやられないようにね。
心の声・その四
残星組織(フラクトシデス)は知っているわよね?いつ出来たのか、目的すらもわからない組織。私の経験上、そういう得体の知れないヤツほど危険なものは無い。きっとあんたもまたヤツらと出会うことがあると思う。決して油断しないで。
心の声・その五
巡尉の潜入捜査員として、私はいくつも顔を持つ必要がある。いざとなれば、この「私」も捨て、また別の「私」として生きていく……。でも、あんたにとっての私は単なる「吟霖」で……たった一人の「吟霖」……。ふふっ、そうやってあんたの記憶に残っていくのも、悪くない。
好きなこと
瑝瓏の伝統的な人形芝居が好き。でも、今の今州じゃあまり流行っていないようね……。私はかつて人形をよりうまく操るために、偃師からこの芸を学んだことがある。でも本当に任務で重要なのは、街中に自然な形で溶け込む技術。どう、あんたもやってみない?
悩み
ここ最近「ばったり」会う機会が増えた感じがしない?前にも言ったと思うけど、私の存在は内密にして。あんたみたいな「人気者」と接触してるところでも見られたら、私まで悪目立ちしちゃう……もう会わないなんて言ってないわ。でも、もう少し「慎重」に。
好きな食べ物
潜入捜査を行う上で、様々な高級料理を食べてきたわ。でも、その中で唯一印象に残ったのは、ただの黄金チャーハン。やっぱり料理において注目すべきは、使った食材ではなく、料理人が注ぎ込んだ魂だと思うの。
嫌いな食べ物
調査対象と一緒に食事をする場合、行くお店、頼む料理は相手の好みに合わせる必要がある。つまり、嫌いなものでも、さぞ好物を食べているかのように振舞わなければいけない……だから、嫌いな食べ物は何かという問いに対しての答えは、一緒に食事をしたくない人、ね。でも、あんたとであれば、何を食べても問題ないわよ。
夢
「邪悪が根絶された世界」……それが非現実的な幻想だなんてことはわかってる。だからこそ私たちのような「汚い裏切り者」がいる。人々の目に代わり、見えない闇を探り出すために。
伝えたいこと・その一
この人形は「懸糸(ケンシ)」。元々、人形作りの練習に使われていたありふれたモノだけど、私が戦闘用に改造したの。たしかに年季は入っているけれど、これ以上使いやすいものなんて後にも先にもきっと存在しないわ。
伝えたいこと・その二
反魂互助会の連中……偃師に操られていたというだけで、彼ら自身が大きな罪を犯したわけじゃない。それでも、彼らに罪はないのかと聞かれれば、そうとは言いきれない。彼らには……過去に縛られる人形にならず、苦しみに耐え、自力で前に進んでほしい。私はただ、そう願っている。
熾霞について
厳密に言えば、私の後輩になるのか……。熾霞は私よりもよっぽどこの仕事に向いている。十分な経験を積めば、きっと立派な巡尉になれるわ。
漂泊者について
優秀な巡尉が必ずしも優秀な潜入捜査員になれるとは限らない。でも、あんたはなかなか筋がいい。どう、あんたも目指してみる気はない?ふふっ、冗談よ。
誕生日祝い
誕生日おめでとう。……なに?その疑わしい顔。嘘なんてついてないわよ。安心して、今日はせっかくの誕生日。そんな日に偽りの言葉なんて使わないわ。どうせ予定なんてないでしょう?今日は一日、私に付き合ってちょうだい。
余暇・その一
ふふ……
余暇・その二
焦らないで。ゆっくり待てば、敵は自ずと現れる。
余暇・その三
フン……じろじろ見すぎ。
自己紹介
吟霖よ。私の正体は……どうか内密に。
最初の音
ホ……そんなに驚かないで頂戴。
チームに編入・その一
何か面倒事?
チームに編入・その二
チーム?まあ、いいわ、一人の方が慣れてるけど。
チームに編入・その三
私の出番かしら。
突破・その一
悪くない……強くなった気がするわ。何かお返しを考えないと。
突破・その二
潜入捜査員にとって、強さは任務を完遂するための基礎。その上で求められるのが強靭な精神。
突破・その三
ケンシの精度が上がった……あんたのおかげよ。
突破・その四
あらゆる場所に蔓延る悪と戦うため……この力、存分に使わせてもらうわ。もちろん、あんたと一緒にね。
突破・その五
あんたがくれたこの特別な力……これは私の実力への信頼の証?それとも、私自身への友好の証?……どちらでも嬉しく思うわ。そういう直接的な感情、嫌いじゃない。
重撃・1
切り裂く。
重撃・2
どいてもらおうか。
重撃・3
近づきすぎよ。
重撃・4
誰が近づいていいって?
重撃・5
逃げられると思うな。
重撃・6
フン……大人しくしろ。
空中攻撃
こっちだ!
共鳴スキル・1
ケンシ……出番よ
共鳴スキル・2
容赦しない。
共鳴スキル・3
痛みつけて欲しい?
共鳴スキル・4
……ヤツらを潰しなさい!
共鳴スキル・5
ご退場願おう。
共鳴スキル・6
目をそらしちゃダメよ。
共鳴解放・1
そろそろ終わりね。
共鳴解放・2
飽きたわ、さようなら。
共鳴解放・3
ケンシ、締めるわよ。
ダメージ・1
ちっ…いい度胸ね。
ダメージ・2
大したことないわ。
ダメージ・3
覚えてろよ……
重傷・1
借りは返す……
重傷・2
これで私が諦めるとでも……
重傷・3
くっ…まだ戦える……
戦闘不能・1
ただでは……死なない……
戦闘不能・2
油断した……
戦闘不能・3
服従は……弱者の証……
音骸スキル・召喚
私に従いなさい。
音骸スキル・変身
さあ、いくわよ。
変奏スキル
どこを見ている?
敵に遭遇
ケンシ、いくわよ。
滑空
目的地は?
鉤縄
台詞なし
スキャン
フ……見つけたわ。
ダッシュ
何事も素早く、いい心がけよ。
壁走り
台詞なし
補給獲得・1
中々いいんじゃない?
補給獲得・2
遠慮せずもらっておきなさい。
補給獲得・3
台詞なし