情報
秧秧 VA
中国語: CV:Jen Zhang
日本語: CV:石川由依
韓国語: CV:Lee Yoo Ri
英語: CV:Rebecca Yeo
秧秧 のフォルテ調査報告
共鳴力
風の囁き
共鳴評価報告
測定材料:【周波数スペクトル報告RA1011-G】
共鳴時間・共鳴原因は不明。幼少期、常人には感知できないものに対し微かな反応を示す。
音痕は額中部にある。共鳴後すぐは物理的変化がなかったが、
周波数エナジーの影響で髪の毛の末端が羽状に変化した。
また、付近の気流と同調することが可能。それにより、「風」に含まれる情報を読み、「風」を一点に集める。
周波数スペクトルは「気流」、「ヒバリ科ヒバリ属」とも20%以上の類似を示した。
また、共振現象は強いが多数の既知周波数スペクトルと5%ほどの類似を示しており、
複数共鳴源あるいは共鳴源自身が発散性を持つため、共鳴源の完全特定には至っていない。
ラベル曲線が全体的に緩やかに上昇し、現在は安定した状態を示す。自然型共鳴者と認定する。
オーバークロック診断報告
波形は楕円形、時間領域表示は安定。異常波形なし。
診断結果:オーバークロック域が狭いが安定性は高い、オーバークロックリスクなし。
オーバークロック歴あり。最高レベル:低。
長期で不安定な「感知」能力暴走により限界以上の情報接収と備蓄を繰り返しオーバークロックに陥った。
人員損失がなく事件として収録されていないが、対象に何度も強烈な眩暈の症状が発生した。
原因は心的ストレスが溜まり周波数が異常変動し、そのため能力の大幅強化とエナジー逆流が発生した。
後遺症として、髪の末端が羽に変化した。変化の範囲と位置は一定に留まり、それ以上の拡大は確認されていない。
能力を制御可能となった現在、状態は安定に至り再発の傾向もないため、定期検診を推奨する。
秧秧 の大切なアイテム&好物
風の模様のリボン
精巧にできているリボン。いつもある青色の帽子と一緒に付けており、秧秧のシンボルとなっている。
これは故郷を立つ前に、お母さんからもらったプレゼントである。秧秧にとって、お母さんの祝福であり、旅の始まりでもある。初めてこのリボンを付けた時の決意は、いつまでも胸に灯している。
音記録装置
流れ息は常に発生し、常に消滅する。そういう風の囁きをいつも聞いている秧秧に、それを「記録する」考えが芽生えた。
白芷が音記録装置を改造し、最新のエナジー変換技術をそれに搭載させた。この装置のおかげで、秧秧が感じた流れ息を見える、感じられる情報スペクトルに保存できるようになった。
雪が山に落ちる音、知られていない物語、人を泣かせる感動の瞬間……自分の感じた真実を、秧秧はこうして記録している。
万物の声
秧秧が子供の頃から手を加えてきた風鈴、そのピックは水晶を鳥の形に磨いたものである。
ピックは最初数個しかなかったが、秧秧が一つの地域を旅した都度、自分で集めたり、その地域の知り合いから贈られたりして、今では数十個になっている。長さと複雑さも当初より何倍になっている。
限りのある基盤が続いていく間、無限の可能性を持つようになった。新しいピックが追加されるたび、秧秧はデザインとピックの位置を調整し続けてきた。この風鈴はこれからどんな曲を奏でるかは、持ち主である秧秧にもわからない。しかし、初心を忘れずに自分を磨いていけば、いつかは成就できる。これが家族に教わった「一生一器」ということだ。
秧秧 のストーリー
優勝の方法
きっとこんな人を一人か二人くらい知っているかもしれない。経験のないことでも、何でもこなす人。
まさに秧秧はそんな人物である。
「彼女は何でもできる」。この言葉は、その経歴が何よりの証明となるだろう。
幼年の頃から成績優秀。作法、音楽、書法、数学、武術……いずれも上位。新しい知識や難点に怯えることもない。
年に一度の表彰式でも、壇上に立つのはいつも彼女。
しかし、その壇上に立つまで、彼女が緊張を緩めることはない。というより、常に十分な自信を持っているわけではないのである。
勉強には少しくらいの才能があるが、本物の天才とは比べようもない。人並みに失敗もあった。
初めての剣の稽古では、技を出すところか、力を抑え切れずに転びそうになる始末。
それからの二ヶ月、彼女は毎日百回の稽古を繰り返し、先輩たちに助言を請い、体に覚えさせた。
そして、二か月後の剣術テストで、彼女は一位を取ったのだった。
時に、その苦労っぷりを見て、彼女を諭す人もいる。「人生に完全などない。これだけ褒められて、賞を取ったのならもういいじゃないか。別にそこまで自分を追い詰めなくても……」
しかし、彼女はそれを聞いて、ただ笑いながら頭を横に軽く振った。
それではダメだ。人に褒められるために、地位を得るために努力をするわけではない。彼女にとっての努力は自分との戦いだから。
全力を尽くしたか?最善を尽くしたか?悔いのない答えを示したか?
「さすが秧秧さん。あんたに任せて正解だった!」
踏白になり、残像の問題を解決した後、またこうして褒められた。
今回は確かに無事片付いた。でも今度は……まだまだ努力しなければ、学ばなければ。やはり先輩たちに改善点を聞いてみようか?
信頼に値する人になる。それは血の滲む努力の結果。
でも、これは彼女が一度決めた事。きっとどんなに苦しくてもやり遂げるのだろう。
まさに秧秧はそんな人物である。
「彼女は何でもできる」。この言葉は、その経歴が何よりの証明となるだろう。
幼年の頃から成績優秀。作法、音楽、書法、数学、武術……いずれも上位。新しい知識や難点に怯えることもない。
年に一度の表彰式でも、壇上に立つのはいつも彼女。
しかし、その壇上に立つまで、彼女が緊張を緩めることはない。というより、常に十分な自信を持っているわけではないのである。
勉強には少しくらいの才能があるが、本物の天才とは比べようもない。人並みに失敗もあった。
初めての剣の稽古では、技を出すところか、力を抑え切れずに転びそうになる始末。
それからの二ヶ月、彼女は毎日百回の稽古を繰り返し、先輩たちに助言を請い、体に覚えさせた。
そして、二か月後の剣術テストで、彼女は一位を取ったのだった。
時に、その苦労っぷりを見て、彼女を諭す人もいる。「人生に完全などない。これだけ褒められて、賞を取ったのならもういいじゃないか。別にそこまで自分を追い詰めなくても……」
しかし、彼女はそれを聞いて、ただ笑いながら頭を横に軽く振った。
それではダメだ。人に褒められるために、地位を得るために努力をするわけではない。彼女にとっての努力は自分との戦いだから。
全力を尽くしたか?最善を尽くしたか?悔いのない答えを示したか?
「さすが秧秧さん。あんたに任せて正解だった!」
踏白になり、残像の問題を解決した後、またこうして褒められた。
今回は確かに無事片付いた。でも今度は……まだまだ努力しなければ、学ばなければ。やはり先輩たちに改善点を聞いてみようか?
信頼に値する人になる。それは血の滲む努力の結果。
でも、これは彼女が一度決めた事。きっとどんなに苦しくてもやり遂げるのだろう。
聞くの方法
秧秧が絶対音感を持っていることを、知らない人は多い。
進んで人前で歌おうとしない、必要でない場合はいつもステージを他人に譲り、歌手でなく観客として聞くことに徹していることが多いからだろう。
だから、彼女が一回しか聞いていない旋律を正確に口ずさんだ時、驚きのあまりに熾霞は目を丸くした。「は、はやい……!しかも綺麗!」
それもそのはず。彼女は声楽家系のお嬢様。音楽に詳しく、歌えるのは当たり前。
その事実は彼女に向けられる様々な困惑を晴らしてくれる。人と接する時の完璧な礼儀は、厳しい教育のお陰なのだ。
しかし、そんなお嬢様がお気楽な生活を捨て、単身で辺境まで赴いた理由とは一体何なのだとうか?
その答えを秧秧が一度も口にすることはなかった。
というより、彼女は人の話を聞くことの方が圧倒的に多いのである。
話をしたがる者というのは、ただその感情を何処かにぶつけたがっているだけ。それを心得ている秧秧は話の腰を折る事なく淡々と聞き、時にヒントを小声で示す。大事なのは、平常心を持って先入観を持たずに、相手の感情を理解しようとする事だ。
もちろん、意見を求める人には彼女も惜しみなく教えるが……当事者の意志を尊重するのが第一。
しかし、いくら彼女の気質を説いたところで、お喋り好きな熾霞の口が止まるわけではない。「いつ歌ってくれるんだ?」興味を持った人の冗談めいた言葉。
秧秧はそれに対し、恥ずかしそうに手を振った。「こ、今度……ちゃんと用意しますから、ね?」
その顔を見れば、建前や言い訳ではないと難なく読み取れる。しかし、今度とはいつなのだろうか?話したがる者がいなくなる時だろうか?
人の音楽を聞き、意見できるのはもちろん、音楽がわかる人。
しかし、わかったとしても、別に歌うことに執着する必要はないと、少女は考えた。聞くだけでも楽しいですからね。そうして、今日も彼女は、必要とする人にステージを譲っている。
進んで人前で歌おうとしない、必要でない場合はいつもステージを他人に譲り、歌手でなく観客として聞くことに徹していることが多いからだろう。
だから、彼女が一回しか聞いていない旋律を正確に口ずさんだ時、驚きのあまりに熾霞は目を丸くした。「は、はやい……!しかも綺麗!」
それもそのはず。彼女は声楽家系のお嬢様。音楽に詳しく、歌えるのは当たり前。
その事実は彼女に向けられる様々な困惑を晴らしてくれる。人と接する時の完璧な礼儀は、厳しい教育のお陰なのだ。
しかし、そんなお嬢様がお気楽な生活を捨て、単身で辺境まで赴いた理由とは一体何なのだとうか?
その答えを秧秧が一度も口にすることはなかった。
というより、彼女は人の話を聞くことの方が圧倒的に多いのである。
話をしたがる者というのは、ただその感情を何処かにぶつけたがっているだけ。それを心得ている秧秧は話の腰を折る事なく淡々と聞き、時にヒントを小声で示す。大事なのは、平常心を持って先入観を持たずに、相手の感情を理解しようとする事だ。
もちろん、意見を求める人には彼女も惜しみなく教えるが……当事者の意志を尊重するのが第一。
しかし、いくら彼女の気質を説いたところで、お喋り好きな熾霞の口が止まるわけではない。「いつ歌ってくれるんだ?」興味を持った人の冗談めいた言葉。
秧秧はそれに対し、恥ずかしそうに手を振った。「こ、今度……ちゃんと用意しますから、ね?」
その顔を見れば、建前や言い訳ではないと難なく読み取れる。しかし、今度とはいつなのだろうか?話したがる者がいなくなる時だろうか?
人の音楽を聞き、意見できるのはもちろん、音楽がわかる人。
しかし、わかったとしても、別に歌うことに執着する必要はないと、少女は考えた。聞くだけでも楽しいですからね。そうして、今日も彼女は、必要とする人にステージを譲っている。
信じる方法
世界に同じ夢を抱き続ける。童話を、人の善意を、奇跡を信じる。秧秧はいずれ全てが報われると信じている。
だから、十六歳の彼女も、六歳の彼女も変わらない。
人は言う。こんな性格は、苦難を味わっていないが故の未熟さによるものだと。
それも確かだ。恵まれた家庭、親切な家族。言わば勝ち組の幼年を送り、何不自由なく過ごせる……
はずだった。
十一歳の時、過酷な現実が雨となり、彼女の世界に降り始めた。
追放者が輸送隊を襲ったのだ。秧秧は死や人が持つ残忍を理解しきれないまま逃げた。そして、たどり着いた名前も知らない村。そこにはやせ細った人たちがいた。襲い掛かって来る凶暴な賊と重なるその姿。彼女は恐怖を感じた。また、華麗で場に合わない服装に身を包んだ一人の少女を目にした村民も、疑いの視線を投げた。
しかし、最終的に彼女は見たことない食べ物を、悴んだ手から受け取ったのだった。
乏しい土地でも、人の善意は変わらない。その信頼に報いたいと思ったが、自分の知識はこんな野外では役立たないし、自分の剣術は本当の敵を前にすればまだ幼い。自分が周りに溶け込めないのは当たり前だけど、その当たり前は何より辛くて耐えられないものだ。
「おばさん。あなたたちはずっと……こういう生活をしてきたのですか?」充分とは程遠い量の物資を整理しながら、秧秧は唐突に聞いた。
「なんだい、城内の小娘。怖気着いたのかい?安心しな。もう少しの辛抱だ」
「もう少しとは、どのくらいですか?本当にそんな時があるのですか?」
「もちろんだ。自分がそれを信じないでどうする?あん時も、あんたが悪者でない保証はなかったじゃないか。人はな……何かを信じてから始まるんだ。知ってから信じてどうする!」
「しかし、どのくらいと来たか……まぁ、あんたが大人になった頃だな」
今までの人生で、彼女が味わった苦難は確かに足りないかもしれない。しかし、「信じる」のは経験による決断ではなく、本性にある選択。
どんな苦しい生活をしても、期待に近い信頼を与える人がいつだっている。その選択が、新しい信頼を生み出せる。
だから、秧秧も知らない人とことには、まず信じるようになった。
勿論、その信頼も無条件ではない。裏切られた場合は、そよ風も激しい刃となる。
それでも、信じる心が全ての始まり。夢を抱えて、そして叶えるために働く。それは世界を変える無数の方法の中で、彼女が選んだやり方だ。
だから、十六歳の彼女も、六歳の彼女も変わらない。
人は言う。こんな性格は、苦難を味わっていないが故の未熟さによるものだと。
それも確かだ。恵まれた家庭、親切な家族。言わば勝ち組の幼年を送り、何不自由なく過ごせる……
はずだった。
十一歳の時、過酷な現実が雨となり、彼女の世界に降り始めた。
追放者が輸送隊を襲ったのだ。秧秧は死や人が持つ残忍を理解しきれないまま逃げた。そして、たどり着いた名前も知らない村。そこにはやせ細った人たちがいた。襲い掛かって来る凶暴な賊と重なるその姿。彼女は恐怖を感じた。また、華麗で場に合わない服装に身を包んだ一人の少女を目にした村民も、疑いの視線を投げた。
しかし、最終的に彼女は見たことない食べ物を、悴んだ手から受け取ったのだった。
乏しい土地でも、人の善意は変わらない。その信頼に報いたいと思ったが、自分の知識はこんな野外では役立たないし、自分の剣術は本当の敵を前にすればまだ幼い。自分が周りに溶け込めないのは当たり前だけど、その当たり前は何より辛くて耐えられないものだ。
「おばさん。あなたたちはずっと……こういう生活をしてきたのですか?」充分とは程遠い量の物資を整理しながら、秧秧は唐突に聞いた。
「なんだい、城内の小娘。怖気着いたのかい?安心しな。もう少しの辛抱だ」
「もう少しとは、どのくらいですか?本当にそんな時があるのですか?」
「もちろんだ。自分がそれを信じないでどうする?あん時も、あんたが悪者でない保証はなかったじゃないか。人はな……何かを信じてから始まるんだ。知ってから信じてどうする!」
「しかし、どのくらいと来たか……まぁ、あんたが大人になった頃だな」
今までの人生で、彼女が味わった苦難は確かに足りないかもしれない。しかし、「信じる」のは経験による決断ではなく、本性にある選択。
どんな苦しい生活をしても、期待に近い信頼を与える人がいつだっている。その選択が、新しい信頼を生み出せる。
だから、秧秧も知らない人とことには、まず信じるようになった。
勿論、その信頼も無条件ではない。裏切られた場合は、そよ風も激しい刃となる。
それでも、信じる心が全ての始まり。夢を抱えて、そして叶えるために働く。それは世界を変える無数の方法の中で、彼女が選んだやり方だ。
風の教え
三回。それは秧秧が風から墜ちた回数。
一回目は、母親の手から。
生まれたばかりの頃、母が小さな秧秧を腕の中で揺らしていると、誰一人として気づいてはいなかったが、彼女はその腕の中でわずかに浮かんでいた。
そのわずかな墜落は、雨の到来を示すもの。彼女は人の言葉を知る前から、風の囁きを聞くことができたのだ。
誰もがわんわんと泣きはじめた秧秧に驚いた。少し遅れて急に降り始めた雨との関係を全く知らずに。
二回目は、オーバークロックに伴う失神。
年齢を重ねるにつれ、かつては微かにしか掴めなかった感覚をはっきり掴めるようになった。彼女が「流れ息」と呼ぶ形のない気流。彼女はそれを読み取り、エナジーの変動や異常の兆し、人の服装や動き、ひいては少しの沈黙でも、風に残る全てを見逃さない。
しかし、そこで秧秧は間違えた。せっかくの能力だ、使わなければ意味がない。そして、あまりに膨大な情報に押しつぶされた。
それからの事を「墜落」と呼ぶのは少し不適切かもしれない。その基準は高さではなく、時間の長さだから。
オーバークロックによる混迷は数か月に及んだ。まるで、どこまでも落ちていく、風に吹かれる羽。彼女はようやく気づいた。「全てを掴めるほど、私は器用ではありません。今できるのは……本当に大事なものを掴むことだけ」。そこで、彼女はようやく限界を知り混沌から脱したのだった。
三回目は、自ら風を受け入れた。だが、それは決して最後ではない。
オーバークロックで髪が変異を遂げた後、秧秧はようやくその影響を払拭できた。
流れ息は今でも不安定で乱雑だ。しかし、今の彼女はその中で使える情報を抜き出すことができる。
失踪地点での暴れた痕跡。城外の異常な気配。強くなるエナジー反応……これほど逼迫したが状況は初めてだ。踊る流れ息はやがて収束して線となり、示した先で残像に襲われている子供を発見した。
残像に迫られ崖から落ちる瞬間だった。それでも、秧秧はためらうことなく一気に飛び出し、子供に向け手を伸ばした。
羽が四散する中、風は軌跡を作りながら体に覆い、少女と子供を柔らかく受け止めてくれる。
この光景を見て、「お姉さん!鳥の仙人なの?」と歓喜の声を上げた子供に、
彼女は少しぼんやりした後、今まで風とのまつわりを思い出して笑った。そうかもしれないね。
一回目は、母親の手から。
生まれたばかりの頃、母が小さな秧秧を腕の中で揺らしていると、誰一人として気づいてはいなかったが、彼女はその腕の中でわずかに浮かんでいた。
そのわずかな墜落は、雨の到来を示すもの。彼女は人の言葉を知る前から、風の囁きを聞くことができたのだ。
誰もがわんわんと泣きはじめた秧秧に驚いた。少し遅れて急に降り始めた雨との関係を全く知らずに。
二回目は、オーバークロックに伴う失神。
年齢を重ねるにつれ、かつては微かにしか掴めなかった感覚をはっきり掴めるようになった。彼女が「流れ息」と呼ぶ形のない気流。彼女はそれを読み取り、エナジーの変動や異常の兆し、人の服装や動き、ひいては少しの沈黙でも、風に残る全てを見逃さない。
しかし、そこで秧秧は間違えた。せっかくの能力だ、使わなければ意味がない。そして、あまりに膨大な情報に押しつぶされた。
それからの事を「墜落」と呼ぶのは少し不適切かもしれない。その基準は高さではなく、時間の長さだから。
オーバークロックによる混迷は数か月に及んだ。まるで、どこまでも落ちていく、風に吹かれる羽。彼女はようやく気づいた。「全てを掴めるほど、私は器用ではありません。今できるのは……本当に大事なものを掴むことだけ」。そこで、彼女はようやく限界を知り混沌から脱したのだった。
三回目は、自ら風を受け入れた。だが、それは決して最後ではない。
オーバークロックで髪が変異を遂げた後、秧秧はようやくその影響を払拭できた。
流れ息は今でも不安定で乱雑だ。しかし、今の彼女はその中で使える情報を抜き出すことができる。
失踪地点での暴れた痕跡。城外の異常な気配。強くなるエナジー反応……これほど逼迫したが状況は初めてだ。踊る流れ息はやがて収束して線となり、示した先で残像に襲われている子供を発見した。
残像に迫られ崖から落ちる瞬間だった。それでも、秧秧はためらうことなく一気に飛び出し、子供に向け手を伸ばした。
羽が四散する中、風は軌跡を作りながら体に覆い、少女と子供を柔らかく受け止めてくれる。
この光景を見て、「お姉さん!鳥の仙人なの?」と歓喜の声を上げた子供に、
彼女は少しぼんやりした後、今まで風とのまつわりを思い出して笑った。そうかもしれないね。
風の答え
家を離れてから、秧秧は二種類の人を見た。
慌ただしく行き来しても、その理由がわからず道に迷ってしまう人。最初から明確な目標を持って、紆余曲折と行き止まりを恐れず進み、最終的に目的地まで辿り着く人。遠方の今州城を見て、自分は果たして後者と言えるのかと考え、彼女はまた家訓の「一生一器」を思い出した。
それは、とても大事な言葉である。本来は「何を学んでも構わないが、楽器一種を選んで生涯精進すべき」だが、後々「決めた事に生涯を捧げる」という意味になった。
母親の「器」は、曲を作る事。踊り手が母親の曲で踊る光景が今でも目に浮かぶ。姉さんも、商会で大きな仕事を仕切っている。
しかし、秧秧は簡単に決められなかった。どんな事が生涯を捧げるに値する?どんな人になればいい?
そこで母親に答えを求めた。「私はどうすればいいのでしょうか?私に何をしてほしいのですか?人生は可能性に満ちていますが、結局一つ選ばないといけないのですか?」
「だからこそです。だからこそ、私に聞くのではなくて、あなたの本心に聞いて欲しいのです。とはいえ、難しい問題です。焦って答えを求めるものではありませんよ」と、母親は慈愛に満ちた目をして答えた。
この問題は心の中に長い間秘められていた。
しかし、彼女は「村」から戻り、墜落から戻り、家族のもとにいるのではなく、昔見た人たちのように、世界の全てを感じたいと思うようになった。もう薄い羽のままではいられない。もっと大きくなりたい。真実をこの身で感じたい、と。
野外の襲撃で、戦線が被害を受けた。悲しみ、怒り、絶望……人々の感情が滾る。皆が焚き火の前で、誰からでもなく一緒に泣き始めた。そんな心の打たれた咽び泣きも、次の日にはもう聞こえなくなった。哀しさは失う度に薄れる。しかし、秧秧はその泣き顔のために涙を流した。
大勢の涙と、助けた子供の笑顔が目の前を過ぎ、全てが重なり合う……そして、彼女は自分のやるべき事を決めた。それは人を守る事。かつて自分が守られたように、皆の涙も人々の生活を守る事である。
踏白になったその夜、秧秧は今州城の壁に登り、空を見上げ、そこに住む人々を見た。そこで、この大事な街を守れる力を手に入れる事はできるだろうか、と自分に問いかける。
流れ息は少女の、最後の問に答えた。
今州城は声楽家系の令嬢秧秧の終着点。しかし、踏白秧秧の発着点ですぎない、と。
慌ただしく行き来しても、その理由がわからず道に迷ってしまう人。最初から明確な目標を持って、紆余曲折と行き止まりを恐れず進み、最終的に目的地まで辿り着く人。遠方の今州城を見て、自分は果たして後者と言えるのかと考え、彼女はまた家訓の「一生一器」を思い出した。
それは、とても大事な言葉である。本来は「何を学んでも構わないが、楽器一種を選んで生涯精進すべき」だが、後々「決めた事に生涯を捧げる」という意味になった。
母親の「器」は、曲を作る事。踊り手が母親の曲で踊る光景が今でも目に浮かぶ。姉さんも、商会で大きな仕事を仕切っている。
しかし、秧秧は簡単に決められなかった。どんな事が生涯を捧げるに値する?どんな人になればいい?
そこで母親に答えを求めた。「私はどうすればいいのでしょうか?私に何をしてほしいのですか?人生は可能性に満ちていますが、結局一つ選ばないといけないのですか?」
「だからこそです。だからこそ、私に聞くのではなくて、あなたの本心に聞いて欲しいのです。とはいえ、難しい問題です。焦って答えを求めるものではありませんよ」と、母親は慈愛に満ちた目をして答えた。
この問題は心の中に長い間秘められていた。
しかし、彼女は「村」から戻り、墜落から戻り、家族のもとにいるのではなく、昔見た人たちのように、世界の全てを感じたいと思うようになった。もう薄い羽のままではいられない。もっと大きくなりたい。真実をこの身で感じたい、と。
野外の襲撃で、戦線が被害を受けた。悲しみ、怒り、絶望……人々の感情が滾る。皆が焚き火の前で、誰からでもなく一緒に泣き始めた。そんな心の打たれた咽び泣きも、次の日にはもう聞こえなくなった。哀しさは失う度に薄れる。しかし、秧秧はその泣き顔のために涙を流した。
大勢の涙と、助けた子供の笑顔が目の前を過ぎ、全てが重なり合う……そして、彼女は自分のやるべき事を決めた。それは人を守る事。かつて自分が守られたように、皆の涙も人々の生活を守る事である。
踏白になったその夜、秧秧は今州城の壁に登り、空を見上げ、そこに住む人々を見た。そこで、この大事な街を守れる力を手に入れる事はできるだろうか、と自分に問いかける。
流れ息は少女の、最後の問に答えた。
今州城は声楽家系の令嬢秧秧の終着点。しかし、踏白秧秧の発着点ですぎない、と。
秧秧 のボイスライン
心の声・その一
漂泊者さん、今州でなにかわからないことや不慣れなことがあれば、いつでも私に相談してください。お客さんだからそう言っているのではなくて、ただ…記憶を失って一人でいる漂泊者さんなら、私の助けが必要とする時がいつかくると思います。
心の声・その二
踏白になって以来、野外でたくさんの人と出会いました。慌ただしく行き来しても、その理由がわからず道に迷ってしまう人。最初から明確な目標を持って、紆余曲折と行き止まりを恐れず進み、最終的に目的地まで辿り着く人。私は後者の方でいるつもりです。故郷を離れ、今州に来たことこそ、その最初の一歩です。
心の声・その三
物心がついた頃から、私は風の言葉、「流れ息」を聞くことが出来ます。これは誰かの話し声でも、振動による音でもありません。落ち着いて目に見えない気流に触れると、風の場に記された情報を読み取れます。たった今、耳元を過ぎ去った風が、一つ面白い物語を届けてくれました。ふふっ、聞いてみますか?
心の声・その四
漂泊者さんの近くを通る流れ息には、変わった性質があるようです。漂泊者さんに近づくと、知らず知らずのうちにあなたという存在に惹かれ、本来の軌道から離れます。私にはそれが何を意味しているのかまだわかりませんが、一つだけ確信したことがあります。それは私は傍観者でいるのが嫌だということです。できれば、あなたと一緒に来たるべき時を迎えたい。
心の声・その五
用がある時は、私の名前を呼んでください。荒れ果てた地から命が芽吹く場所、起点から終局まで…例えどんなものがその最果てに待ち構えようとも、漂泊者さんがどんな嵐を呼び起こそうとも、あなたが望むことなら、私は一緒にすべてを見届けます。
好きなこと
歌声は、心の奥から放つ共鳴です。無垢で偽りのない気持ちを伝えてくれます。
悩み
いつもみんなのために、もっと自分の力を発揮したいのですが、限界を超えてしまうと…かえってみんなに迷惑をかけてしまいます…よね?
好きな食べ物
潮パイは瑝瓏では定番とされていますが、各地でその作り方が異なります。今州の潮パイも美味しいと思いますが、やっぱりお母さんの手料理には敵いません…機会があれば、お母さんにその腕前を漂泊者さんにも披露していただきましょうか。
嫌いな食べ物
食べ物は大切に扱うべきでしょう?え?「闇の料理」といわれるほどの謎料理なら…
夢
人は美しいところに目が行きがちですが、世の中には醜い側面もたくさん存在しています。私はただ…何も考えず気楽に過ごせる環境に、他人からの無償の庇護に身を委ねたくありません…不完全なこの世の真実に真っ向から立ち向かって、他の誰かを守る、他の誰かに身を捧げられる人になりたいです。
伝えたいこと・その一
このリボンが気になりますか?これは家を出た時にお母さんから頂いたプレゼントです。私にとって、これは旅の始まりの象徴であり、新しい人生の始まりの印でもあります。きっとこれからも、私が貫くべき初心を思い出せてくれる大事なリボンです。
伝えたいこと・その二
鋭い感性を持つことは私にとって苦痛でした。騒がしい無秩序、猛烈な情報の高波が押し寄せていたのです。私はその嵐の中に漂うただ一枚の羽根。でも、それももう過去のことです。気にしなくて大丈夫……嵐の中でも前に進み続ける方法を見つけました。そして、漂泊者さん、その歩みの先であなたに出会いました。
忌炎について
彼は錆の臭いと喪失で充満した前線で、みんなの前に立って決断を下しています。夜帰全員の頼りになって、旗を高く掲げる青龍として、彼が背負うものの重さは、私たちの理解には及ばないものなのでしょう。
熾霞について
「問題があれば、正義の味方熾霞に任せて」というのは決して与太話ではありません。漲る情熱、卓越した戦闘技術、なによりその底なしの体力…彼女はヒーローに欠かせない要素を全て持ち合わせています。
白芷について
白芷さんは世界に対して、自分なりの見解を持っています。加えて、彼女なりの厳格な言動を貫いていますが、決して他人に厳しいわけではありません。彼女に近づいて助けを求めると、ほんの一瞬だけ怪訝そうな表情を見せますが、絶対に拒むことはありません。
丹瑾について
野外勤務の時、何度も顔を合わせたことがあります。彼女からは任侠の気性が感じられます。いつ剣を抜くのか、何のために剣を振るうのかをよく心得ていますね。まだ年が若いけれど、彼女に満ち溢れる清らかさと正義で、この世を満たしてくれるでしょう。
桃祈について
桃祈さんからはいつも、どんな難しいことでも容易に紐解いてしまうようなオーラが読み取れます。どんな緊急事態でも、たっぷり余裕を持っていくつか策を提案してくれて、「慌てないで~ほらこれで一件落着でしょう」とあっという間に解決してくれます。彼女がだらしなく見えてしまうのは、きっと私たちの見えないところで十二分に努力しているからでしょう。
誕生日祝い
今日は特別な日、漂泊者さんの記念日ですから…ゴホン…
「Happy Birthday to you
Happy Birthday to you
Happy Birthday dear 漂泊者さん
Happy Birthday to you」…次の誕生日も、次の次の誕生日も、漂泊者さんにこの歌を歌ってあげたいと思います。
「Happy Birthday to you
Happy Birthday to you
Happy Birthday dear 漂泊者さん
Happy Birthday to you」…次の誕生日も、次の次の誕生日も、漂泊者さんにこの歌を歌ってあげたいと思います。
余暇・その一
ひらりと、ふんわりと…どこへ漂って行くのでしょうか?
余暇・その二
台詞なし
余暇・その三
すべての出会いに別れの時はいつか来ます。でも心配はいりませんよ。
自己紹介
秧秧、夜帰に所属する予備役の踏白です。異変に対する調査を担当しています。流れ息の導きで漂泊者さんと出会えました。長いご縁となる予感…これからよろしくお願いします。
最初の音
流れ息を頼りにここまで来ました。……これからの旅は、共に参りましょう。
チームに編入・その一
共に参りましょう。もっと遠くへ。
チームに編入・その二
雲雀の歌声が響く。
チームに編入・その三
できる限りみんなの助けになるよう頑張ります。
突破・その一
流れ息がより強烈になりました…果たして何を伝えたかったのでしょうか?
突破・その二
今までこのような体を満たす力を体感したことがありません…漂泊者さんのおかげなのでしょうか?いままで私のために尽くしてくれたこと、お礼申しあげます、漂泊者さん。
突破・その三
流れ息が四方から集って来ます。私はその中心で、風が舞い上がる時を待ちましょう。
突破・その四
雨風を乗り越え、素晴らしきものに讃歌を…これが、雲雀が最も空に近い時です。
突破・その五
ありがとうございます、漂泊者さん。あなたはもう十分、私に与えてくれました。これからは、私が精一杯、あなたに報いる番ですね。いつかあなたの全てを受け入れ……お互いに支え合う存在になりたいです。
空中攻撃
風花繚乱。
共鳴スキル・1
急襲。
共鳴スキル・2
解明。
共鳴スキル・3
蹤跡。
共鳴解放・1
我が剣の指す先に。
共鳴解放・2
高く舞い上がれ。
共鳴解放・3
風よおこれ!
ダメージ・1
台詞なし
ダメージ・2
っ…平気です。
ダメージ・3
大丈夫…です。
重傷・1
心配しないで。
重傷・2
まだ…いけます。
重傷・3
全力を…尽くします…
戦闘不能・1
風が…止んでいるみたい…
戦闘不能・2
ごめん、みんなを…
戦闘不能・3
ここまでなのですか…
音骸スキル・召喚
任せます。
音骸スキル・変身
物我同調。
変奏スキル
この身を刃に。
滑空
風の吹く方へ――
鉤縄
やっ。
スキャン
見に行きましょうか。
ダッシュ
加速します。
壁走り
空へ、一歩。
補給獲得・1
役に立ちそうなものはありますか?
補給獲得・2
努力の賜物です。
補給獲得・3
しばらくは凌げるでしょう。